第十六話「南の戦い・断罪ノ聖典第六席次『叛神呪縛』リヴェル」

神樹の森・南部


魔物の大軍後方に建てられたテント内


「連絡が途絶えましたか…」

「は…はい」


そこには、豪奢な椅子にもたれかかる者がいた。長いシルクハットに燕尾服と、上には黒のロングコートを着ている。


その者は人間ではなかった、浅葱色の肌に線の細い体、首と頭の境目がわからない、鋭い耳に、目の中には5つもの瞳が描かれている。 


上級悪魔・シーゼ


彼は自らガニングに忠誠を誓っている唯一の悪魔だ。


「このことをガニング様に報告を…」

「その必要はないぜ」


シーゼの部下である下級悪魔がガニングへ報告しようとしたその時。

そこに、聞き慣れない声が響いた。


「誰だ!」

下級悪魔が誰何する。


「俺か?俺はアルトリア様直属部隊、断罪ノ聖典第六席次『叛神呪縛』リヴェル。すぐに死ぬだろうけど、よろしくな!」


入ってきた男は活発な挨拶をした。


《断罪ノ聖典》

第六席次「叛神呪縛」リヴェル

右腕には蛇、左腕には鎖の、顔には蛇と鎖が交じり合った刺青が彫られていて、軽装ながらも様々な道具を携えている。


シーぜの部下である悪魔達はその挨拶に怒りを覚え襲いかかるが動いた瞬間体がバラバラになり崩れ落ちた。


その光景にはシーゼも驚き、口をひらく。


「お主、何者だ?」


「俺か?さっき言ったろ」

「そうだったな、リヴェルと言ったか」


「それで、あんたは?」


シーゼはようやく立ち上がり名乗る

「我はガニング様の配下が1人、上級悪魔・シーゼ」

「上級?」


「そうだ!我こそが悪魔の中でも恐れられる上級悪魔!この私にかかればお前など道端の蟻の様な物だ!」


と興奮気味に演説するシーゼを他所にリヴェルは暇そうに耳を掻いている。

その光景にはシーぜは苛立ちを覚えつつも強者として冷静を保とうとする。


「先程は驚かされたがお前の先程の技は硬質にさせた糸を使ったのだろう?」

「へぇよくわかったじゃん」


リヴェルの上からの物言いにまたしても苛立つが落ち着く。


「だが!この私が相手ならば関係ない」

と言いながらシーゼは細剣レイピアを抜いた。

そして、剣に魔素を送る。


「この剣は毒蛇の剣、毒性と酸性を併せ持つ!お前の糸など少し振れば溶かせるわ!」


と豪語すると、リヴェルが気怠そうに言った


「ギャーギャーうるせぇな、弱いやつ程よく吠えるってのがわからねぇのかよ」


その言葉にシーゼは遂に怒りをあらわにして手に持つ細剣レイピアで強力な突きをしようとするが…


「まぁもう死んでるのにそれだけ喋られるのは褒めてやるよ」

「は?」


すると突きを放とうとした体が動かない、よく見たら首が落ちて体は細切れにされていた。


「な…なに!」

と驚くが、まだシーゼの声に冷静さがあった


「だが!外には万を超える魔物がいるのだお前とて敵わまい!」

「誰がいつ1人って言った?」


その瞬間リヴェルの不可視の斬撃によってテントが壊れる。


目の前には魔物の死体の山いや大地が築かれていた。


「なんだと…」


その光景にはシーゼはすでに諦めていた。


「じゃあな」


その言葉のあと、シーゼの頭が真っ二つになる。


「化け物め…強すぎる…」

そうシーゼは言い残して消えていった。


「強い俺を呪うなよ。弱かったお前を呪え」


すると、魔物を倒し終えた騎士の1人がリヴェルに近づき跪く。


「こちらの掃討も終わりました」

「了解ーじゃあ戻るぞー」


そうして、リヴェル達はその場を後にした。

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