第十五話「西の戦い・断罪ノ聖典第七席次『私利私欲』アイニータ」


神樹の森・西部


魔物の大軍前方


「ガハハハハ!!!ようやく戦えるのだな!」


そこには筋骨隆々な銀髪をオールバックにして2つの角が生えた1人の悪魔がいた


中級悪魔・ダハル


毎度毎度ガニングと力比べをしたがる。

いわゆる脳筋だ。


「どんな奴が出て来ると思う!?」

「ダハル様落ち着いてください」


隣にいたのは副官の下級悪魔


「いいじゃないか!暇で暇で仕方がなかったのだ!!ん?」


ダハル達はゆっくり行軍していると、正面から妙な集団が歩いてきた。


先頭にいるのは、女の様な物だった。


それは、全身を黒の拘束具で拘束されているからである。顔から足の指先まで覆われている。当然手と足も拘束されて、唯一見えるのは格子状に作られている口の拘束具の隙間から口が見えるだけだ。拘束されているため、空中に浮遊して移動している。そして胸が大きいため、ダハルは女と判断した。


後ろには5人の同じ鎧を着用した騎士がいる。


(あれは、ハズレか…)


ダハルにとって筋肉が全てであり、筋肉がないものは皆自分より弱いと思っている。そのため、前から来る者達は自分より弱いと判断し早々に戦いを楽しめないと諦めていた。


そのため自分の出番ではないと、やる気なく部下に命令を出す。


「おい、お前らやっちまえ」


「「「「ガゥォオオオオ!!!!」」」


その言葉で、魔物達が一斉に前方にいる6人に襲いかかる。


だが、騎士の1人が拘束具の女の前に出て一閃

魔物達が灰となる。


その光景に驚いていると、拘束具の女が口を動かして暴れ出す。口の拘束具がガチャガチャと音を立てた。


それを見た騎士達が女の口の拘束具を外した


『ギィャャヤヤヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


と女が大声を上げた。すると、人型の魔物は耳から血を出し、多くの魔物がその声で絶命した。


残ったのは四分の一ほどだろうか。


ダハルはその光景に驚きと興奮を感じていた。強者との出会いに身震いしていた。

そして、ダハルは対抗する様に大声で名乗る


「我は!ガニング様の部下の1人!悪魔のダハルだ!!対戦願おう!!!」


そして、大声を上げた女が名乗る


「ハッハッ…私はぁぁああ!!断罪ノ聖典第七席次ぃぃいいい!!『私利私欲』のアイニータ!!!」


その声は何かに悶える様な耐える様な声色だった。


《断罪ノ聖典》

第七席次「私利私欲」アイニータ

前述の通り、頭から足先まで黒い拘束具で全身を拘束されている女性。唯一見えるのは格子状にできた口の拘束具から見える口だけであり、浮遊した状態で移動する。


「わたしはぁああ!!飢えているんだよ!!

承認欲求にぃぃいい!!食欲にぃいい!!睡眠欲にぃいい!!物欲にぃいいい!!お前いいなぁああ!!さぁ来いよぉおおお!!」


その言葉に、再び身震いをしたダハルは踏み込み自慢の筋肉を十全に活かした最高のパンチを繰り出した。


そう、これがダハルの必殺の技。シンプルかつ単純明快、最高のパワーを最速のスピードで繰り出したパンチには人間など衝撃で内臓が体の中から吹き飛ぶだろう。



相手がアイニータじゃなければの話だが



アイニータがしたのは口を動かしただけだ。


口を開いて、閉じただけ。


それだけでダハルは消えた、繰り出した腕だけ残して、消えた。


ダハルの腕が地面に落ちる。


アイニータは何かを噛んでいる、グチャグチャバキボキと、誰もが察した。ダハルはアイニータに食べられたのだと。


「まだぁ腹が膨れねぇなぁああ!!」

すると隣の騎士から提案される。


「まだまだ、アイニータ様の食事が残っている様ですよ」

「そうかぁあ…そうかぁあ…じゃあいただきまぁぁあああす!!」


その瞬間前方にいた悪魔の副官と魔物数十匹が消えた。全てを本能で察した魔物達は一目さんに逃げる。


「にげるなよぉお!食べ残しはダメなんだよぉおお!!!」


そして、一口。


その場に魔物は一匹たりともいなくなっていた。


「満足されましたかアイニータ様?」


騎士に聞かれて

アイニータは全てを飲み込んでから答える。


「あぁぁ…物欲以外はなぁこれでジン様に褒めてもらえる!そして満腹だ!あとは、ねるだけだぁ…」


そして、アイニータはスゥースゥーと眠りについた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る