第四話「終わりの使者」
「闇の森まではまだなのか?」
そう言ったのは50代前半の男
彼は《五老公》の5人のうちの1人アードだ。五老公の中では若い方だが元老院の中での発言力は大きい、だが他の五老公よりはないためこの仕事を押し付けられたのだ。そのアードが疑問を投げつけたのは線の細い青年で何を考えているかわからない不思議な雰囲気を纏っている。
「あと1時間半ぐらいですよ」
彼は《無の足》序列一位のクウと呼ばれる青年だ。
本名かどうかは誰も知らない。
「そうか」
「ご安心ください。アード様は、この無の足が必ずお守りします」
「それはいいが潜入させる者は大丈夫なのか?」
「大丈夫です。序列二位と四位の2人が向かう手筈になっています」
「序列三位はどうした?」
「序列三位のスエルドフは別の任務についていて連絡が途絶えています。ですが2人でも問題はございません」
「それならいいのだが…今回は失敗が許されないからな」
そこにクウへ連絡が来る
「アード様。先触れがついたそうです代表のような女性とメイド、女騎士が森の前で出迎えてきた様です」
「全員が女?舐めてるのか?」
「それは女性に対して失礼ですよ」
「そうかもしれんな」
そう言いながら微笑が溢れる
共生国家は特に男尊女卑があるわけではないが一部の人間は男の方が優れているという考えを持っている。アードもその内の1人だ。
「まぁ楽しみにしようではないか」
「そうしましょう」
*
アード達の乗る馬車が速度を徐々に落とし止まる。
クウが先に降り護衛騎士、アード、文官が降りてくる。
「あれか」
その瞬間アードは驚きを隠せなくなる。そこにいた3人は美しすぎたのだ。メイドもそうだが代表のような女と女騎士が別格だった。
活発さが残るが可憐な美を持つ女騎士と豊満な体に綺麗な黒髪と大人の美を見せる代表のような女性。
驚きを隠せないのはアード以外にほとんどの男がそうだった。そんな彼らを現実に引き戻したのはそんな彼女の一声だった。
「ようこそおいでいただきました使者様」
「わたしはこの国の都市長統括をさせていただいていおります。アルトリアという者です。皆さんのわかりやすい地位で言えば宰相というところでしょうか」
「ご紹介感謝する。わたしは元老院議員の1人アードという。今回は私たちの失態のせいであなた達の主人を不快にさせてしまったので謝罪をさせていただきたたい」
「そうでしたか、ジン様に皆様方には礼を尽くせと言われておりますので」
「そうでしたか、それは嬉しい限りですな」
(部下に名前を呼ばせている?宰相と言っていたがジンという者の妻の可能性も高いのか?)
「では案内させていただきます」
そうしてアルトリア達と共にアード達は森へ歩を進めるのだった。
*
森の中心にそれはあった。
巨大な浮遊都市。下から見ても美しさと壮大さ、神々が作り出したと言われても納得するものが、そこにはあった。
森の中心は広場のように開けていて、立派な家がたくさん建っていた。綺麗な街並みが広がり、浮遊都市があるにもかかわらず太陽の光が差し込んでいた。
最初は小さな大したことのない村が広がっていて、それを自分たちの国と言う変わった奴らだと思っていた。それは皆も同じようだったが。
(なんなのだ、この城は!来る時はこのようなものは見えなかったぞ!)
アードはアルトリアに内心を抑えながら聞いた。
「聞きたいのだが、この城は先程まで見えなかったのだが魔術か何かかな?」
「はい、仰る通りです。この広場に結界が張られており、広場に入るまで見えないようになっております」
「この城は君たちの主人が創り出したのかな?」
アードの素直な疑問だった。
「えぇ私たちの主人であるジン様が創り出しました」
アードはこの者達の主人の危険度を数十段階引き上げる。今まで下に見過ぎたと知ったためだ。
「では、私の周りに集まってください。転移で城までお送りします」
何をするのかと全員疑問を持ちながらも全員集まる。
全員が彼女に集まると景色がガラッと変わる
(転移まで使えるのか、うちの最上位魔導士も使えるがこれほどの長距離できるのか?)
そこには巨大な扉があった。片方は天国のような彫刻が施されており、反対側はは地獄のような彫刻が施されていた。
共生国家の美を集結しても創り出すことのできないような美しいものがあった。扉の部屋も様々な騎士の像が置いてあり威圧感がある。
付いてきた部下たちもこの部屋の壮大さに見えない圧で押されているようで萎縮している。
クウと私も少し萎縮していたが冷静に状況を判断していた。
クウは部下が何かミスをしないか不安のようだ。
そして門が開く…
玉座には長い白髪を一つにまとめた仮面をつけたおそらく男が座っていた。
「皆さんこんにちは、仮面のままで申し訳ありませんが、私が始帝国ファウストの王ジン・ファウストです。」
「これはこれはご丁寧に。遅れまして私はエンファ多種族共生国家元老院議員の1人アードと申します。今回は私たちの貴国への越境行為を謝罪に参りました。これは賠償金などの金品の一覧と謝罪の書面です」
部下の1人が書面を差し出す
それを玉座の隣に並ぶ先程の女性と騎士を合わせた男女7人が並んでいる内の1人である
ツノの生えた男が受け取る。ちなみにメイドは門の部屋で待機している。
男が書面をもらい、ジンの元へ戻ると
「そうですか…それで謝罪はそれだけですか?」
「えっ?」
「それだけですか?と聞いたのですが?」
(なんのことだ?まさか無の足の侵入がバレたのか!?いやここで肯定してしまえば越境行為も加えてジンと言う奴の対応次第では戦争になりかねない!いや領土的野心がなければ大丈夫か?それでも最悪このままここで殺されることも考えられる!ここは否定し続けよう。何か吹っかけてるだけならこれで終わりだ)
「はい…これだけですが…」
「そうですか…」
(大丈夫か?)
「では、この者達は知らないと」
その瞬間人のような虫が何かを、私たちと玉座との間に投げ捨てる
それは、無の足の序列二位と四位の2人の首だった。
クウは驚きを隠せていない。
2人がやられたこともそうだが、2人の苦悶の表情が何をされたかを物語っていた。おそらく驚き半分、恐怖半分というところじゃないだろうか。
「い…いえ知りませんな」
「そうですか…ですが使者の人数が来た時と城に入った時と2人減っているのはどのように説明するのですか?」
「そ…それはですね…」
「いやそれで十分です。これを敵対行為とみなし戦争しましょうか」
その言葉についにクウが動き出す。
「そっそれはいささか傲慢ではないで」
クウが我慢できず叫び出すがジンの指先から光線のようなものが出てクウの頭が吹き飛んだ
「……うわぁぁああああ!!!」
一瞬静寂が場を支配するが、すぐさま悲鳴が起こる。
「何を驚いているのかな?」
「なっ何をとは!アナタがこのクウを!!」
「それがどうした、彼がこの2人を送ってきたのでしょう」
「そ…それは…」
(なぜそれがわかる!?)
「ではこうしましょう、私はあなた方達が不当に占領した国トワイロスの奪還を目的としよう」
「なぜあなたがトワイロスの!」
「トワイロスの王女が我が国に亡命しているのですよ、彼女も母国を取り返せるなら我が国に従うと言ってくれているのでね」
「そ…そうですか…」
アードはジン達の勢力を国に引き込むために送られたのが大きい。
《無の足》序列上位がやられたが。
まだ冷静でいられたのは長き国の歴史からか
圧倒的戦力からか
戦争に勝つと思っているからか。
それとも、相手の本当の力を知らないからか。
アードはここまでジンの財力には驚いていたし、それなりに力があるとは思うが戦争にとって圧倒的数の暴力というのは恐ろしいものだ。玉座の間にいる者も少ないし、この城に数十万の兵は詰められないと思っている。
だから動く
「いやいや、部下の失態謝罪し切れませんな、それとジン殿の口ぶりは我が国との戦争をお望みのように聞こえるのですが?」
「それしかないでしょう」
「そうですか…あなたは頭が回る人だと思っていましたが、とっても残念だ…愚かとしかいえない」
「なんとでも言うといい」
「では、あなた達の意見をまとめて正式な文書を送ってください、謝罪のために持ってきた金品はご自由に…ではこれで失礼させていただきましょう」
そう言ってアードはメイドに連れられこの城を後にした。
*
「これでよかったのですか?」
「いいんだよアルトリア」
今回の共生国家からの使者は基本僕の読み通りに動いてくれた。
今回玉座の間に呼んだ都市長は7人アルトリアにアーサー。前回共生国家の部隊と戦ったレイヤ・ヤマト・ガルザム。そして今回の戦争に参加してほしいと思っている、「天主」ルーラ、「破壊神」ネメシス
「天主」ルーラ
足の膝くらいまであるのではないかと思われる長い金髪と黄金の瞳を持つ女神。聖職者の服装に周りは5本の杖が浮いている
「破壊神」ネメシス
金髪ショートで褐色肌、金の瞳は所謂ジト目で獣のようなギザギザした歯が見え隠れしている白い水着のような動きやすい服装をしている女性。
「レイヤ・ヤマト・ガルザムは今回の使者の当事者だからいてもらったがルーラとネメシスは違う。
今回2人には戦争に参加してもらう」
「ハハッ!戦争か!」
「そうだよネメシス」
「ですが、なぜ私たちなのでしょう?」
「いい質問だルーラ、2人には相手に天国と地獄の違いを教えてやってほしい」
「「あぁ」」
即座に2人は言葉の意味を理解する
「理解してくれたみたいだね」
「任せてくれ!」
「お任せください」
「当日は僕も参加だからよろしくね」
「「はい!」」
「じゃあ、ありがとう、みんな、下がっていいよ」
アルトリアとアーサー以外が部屋を出る
「ジン様騎士団は動かさないのですか?」
この国にも騎士団がある。その数は六つ。
アーサー直属の
そして、それぞれ得意属性で分かれた騎士団が五つ
闇属性の黒狼騎士団
光や聖属性の聖光騎士団
炎属性の紅蓮騎士団
水や氷属性の蒼穹騎士団
風や地属性の森羅騎士団
というふうに分かれている。そして今回は、
「そうだね…黒狼騎士団を…3万ぐらいかな?」
「ではそうさせていただきます。あとなぜ仮面をつけたのですか?」
「あぁ、あれは顔を見せないためだよ、この世界を僕自身で見てみたいし僕が動く時に性別年齢を変えられるとしても顔を見られて何かあってからでは遅いからね」
「そうでしたか…」
少し元気を失うアルトリアと黙ったままのアーサー
「大丈夫だよ、そんな危ないことはしないからさ」
「「はい」」
ジンは椅子の背にもたれかかる
「この世界にきて初めての戦争だ」
「あぁ…たのしみだ」
こうしてエンファ多種族共生国家との戦いが始まる。
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