第一章
第一話「転生と開国」
目を覚ますとそこは見慣れた場所だった。《王座の間》・・・最強と呼ばれた国ファウストの玉座で僕は目覚めた。
(なぜ?僕は病院で死んだはず)
そんなことをふと考える薫、改めプレイヤー名《ジン・ファウスト》
そこに…
「「「ご復活!おめでとうございます!」」」
そんな大勢の声を聞いて驚いて視線を上げると。ファウストの14の都市長と統括者。その部下や騎士団長など勢揃いだった。
そしてそう、声が聞こえたのだ。
《ONRY. WORLD》のNPCは表情はあっても声はなかったのだ
そのため声が聞こえたのに驚き「なんで・・・」と声を出してしまった。
それに反応して都市長統括者《アルトリア》が
「ファウスト様があちらの世界でお亡くなりになられた時、我が国でも問題が起きました。首都であり浮遊都市の《ヴァーテック》の座標が見知らぬ森に変わり、都市長並びに各部隊騎士団全てが《ヴァーテック》に集められました。一応、城を不可知化し周囲を《闇の影》に調べさせています」
一応理解したジンは話を聞きながら自分の容姿もゲームのアバターになっていることに気づいた。長い白髪を後ろの下の方で結った長身の青年でーーーちなみに種族的特徴として性別年齢は自由に変更できるーーー黒を基調とした服装をしている。
状況を理解するため命令を出す。
「闇の影が戻り次第《ONRY. WORLD》に同じ地域があるか調べてくれ。ない場合、ここは《ONRY. WORLD》とは違う世界の可能性が高い。その場合、《断罪ノ聖典》の第10から第8席次の3人に《闇の影》を率いて各地に散って情報を集める様に指令を出してくれ。そして状況理解のため、それから統括者アルトリアと首都防衛代表アーサーと話がしたい。この後、僕の部屋まで直属部隊も連れて来て欲しい」
「「ハッ!!!」」
「では行動を開始してくれ」
そして、全員が行動を開始した
彼はまだ気づいていない理解の追いつかない状況でなぜか自然と動けたことに
(ここが違う世界の可能性の方が高いか…まさか、俗に言う異世界転生が自分の身に起きるなんてな…いや、いい方に考えよう。今度は本当に自分の国を作れるんだ)
「面白いな…」
ジンが小声で言ったつもりの言葉は意外と部屋に響く
その言葉が聞こえた者たちが、やる気を漲らせ予定より早くことが進んだのは
また別のお話…
*
そして1時間後、自分の部屋で都市長統括者と首都防衛代表と話をした。
「じゃあ、入っていいよ」
「「失礼します」」
最初は都市長統括者のアルトリアとその直属部隊《断罪ノ聖典》。そして軍部代表のアーサーと騎士団《円卓》がやってきた。
「漆黒」アルトリア
黒髪を短く整えた美女で白い肌に黒いドレスを着ていてドレスの上からもその豊満な体がよくわかる。都市長の統括者だ。
「混沌の王」アーサー
男性らしい名前と喋り方だが腰まで伸びた長い金髪をまとめた黄金の瞳を持つ鎧を着た活発さの残る少女で。軍部代表で騎士団のまとめ役だ。
「まずはアルトリア、進捗はどうなってる」
「まず《闇の影》が調べによると、この森は《ONRY. WORLD》の地域には見られない様でしたのでご命令の通り《断罪ノ聖典》の3人と《闇の影》を使い、各地に散ってもらい調査させています」
「アーサーは?」
「僕は5つの騎士団をまとめ、城下と都市の各方面に防衛線を張らせて、斥候にはこの森に侵入する者がいないか監視させています!」
「わかった、それで都市長は全員いたの?」
「はい、いました。民などはいませんでしたが、ファウスト様の部下は全員いました」
「一応全員確認しておこう」
*
〜各都市長とその直属の部下〜
第一都市(首都)《ヴァーテック》
統括者「漆黒」アルトリア・《断罪ノ聖典》
軍部代表「混沌の王」アーサー・
漆黒騎士団
聖光騎士団
紅蓮騎士団
蒼穹騎士団
森羅騎士団
第二都市(聖都)《ツヴァイ》
都市長「全知全能」ゼウス・《七つの美徳》
第三都市(要塞都市)《ベルツォ》
都市長「不落」ガルガン・《四機神》
縛鎖巨神団8万人
第四都市(多種族都市)《フィール》
都市長「亜神」カエラ・《八魔》
「獣神」レイラ・《十傑》
第五都市(和都)《ザイ》
都市長「鬼神」ヤマト・《十刃》
第六都市(巨大樹都市)《シースト》
都市長「蟲神」ガルザム・《九式》
第七都市(魔都)《サーヴァ》
都市長「魔神」ヴァルシア・
《十二宮の悪魔》
悪魔隊7000人
第八都市(豊穣の都)《アウファ》
都市長「太陽神」アポロン
第九都市(夜の都)《ノイン》
都市長「真祖」ティア・エリザベート・
《七つの大罪》
血紅騎士団500人
第十都市(灰の都)《イクス》
都市長「破壊神」ネメシス
第十一都市(無の都)《ブラハ》
都市長「影神」アイシャ・《闇の影》
第十二都市(絶対都市)《スヴェイス》
都市長「女帝」ルイン
第十三都市(善の都)《ゼアティム》
都市長「天主」ルーラ・《第六天守》
第十四都市(龍の都)《ゼクトパール》
都市長兼執事長「龍神」ガリシュ・
《六大龍王》
飛竜衆6000体
第十五都市(幻の都)《ベクティーム》
都市長「精霊女王」レアリス・
《魔導十二宮》
*
「全員が集まると圧巻だね」
「当然です。ファウスト様の力の結晶ですから」
「さすがですファウスト様!」
「2人ともありがとう、それじゃあこれからどうしようか?」
「今は動くべきではないでしょう、情報が不足しすぎています」
「そうだね迂闊に動いて失敗はしたくないからね、闇の影と断罪ノ聖典の報告を待とうか」
「ファウスト様!」
アーサーが慌てて名前を呼んできた
「何かあったの?アーサー?」
「ファウスト様この森に人間が集団で侵入してきました。武装しているものは少なく、上位者を守るようにして、この森に侵入し。何かから逃げている様な雰囲気だと斥候から連絡がありました」
(人間の集団か…)
「まず、円卓を5人ほど先行させて包囲してくれ、いつでも無力化できる様にね」
「了解しました。ファウスト様。では、その様に動かします」
そう言って後ろにいる円卓の騎士たち5人---全員が女性で25人しかいないが一人一人が一軍に匹敵する力があるし心配はない---に命令し動き出す。
「どうするのですかファウスト様?」
アルトリアが問いかけてくる。
「初めての現地人との接触だ。何かあるかわからない以上、慎重に動こう。円卓の騎士たち全員を向かわせて、接触を計ろう。先行させた5人は気配を消していつでも報告に来れる様にする。一応、この森を調査しに来た遠い国の騎士だと言え。アーサー頼むよ」
「わかりました」
そして、アーサーたち円卓の騎士が動いた。
「それと、アルトリアはアーサーたちが調査しに来た様に城の下に調査拠点の様なものを至急建ててくれ」
「承知しました」
こうして僕たちの初めての現地人との接触が決定したのだ。
*
(なぜ!なぜ!我が国がこんなことにならなければいけなかったの!)
憤慨の感情を抑えながら内心叫んでいるこの少女は、とある小国の王族であり、
敗戦国の王族でもある。
彼女の国はエンファと呼ばれる大国に攻められ滅ぼされた国トワイロスである。彼女の名は《ライラ・ファルドール・フィフス・エンダ=トワイロス》民にはライラ様と呼ばれた優しき王女だった。
そんな姫と唯一の弟《アンドレイ》を守るため国民と国王、王妃が数名の騎士を護衛につけ逃してくれたのだ。アンドレイは今も「母様…父上…」と泣いている。
(だめよライラ、私が頑張らなきゃアンドレイを悲しませないために)
そしてライラは騎士の1人に話しかける。
「大丈夫なのね、騎士団長エルド」
「安心してくだされ姫、このエルド並びに騎士団一同、かの有名な《闇の森》でもライラ様並びにアンドレイ様を守り切って見せます」
そう宣言したのはライラの国の騎士団長で約40年以上仕えてくれている騎士団長エルド。周辺諸国でも有名な騎士で、「老鬼」と恐れられた騎士だ。そのエルドの提案で追っ手を撒くため危険極まりない森で、入れば帰ってこれないとも言われる森《闇の森》に入っているのだ。最初は反対したが騎士達の覚悟と忠誠を信じるしかなかった。
そして、現在入って20分程度経過してから、エルドが異変に気付く。
「誰か!」
突然エルドが殺気混じりに叫んだ。
すぐさま、エルドと騎士たちは腰を落として剣に手を伸ばした。
「お待ちください。怪しい者ではございません」
すると、エルドたちが睨んでいた森の茂みから20人ほどの女騎士たちが現れた。
だが、その瞬間皆が惚ける。当然だ、目の前に現れた女騎士たちは全員が美しすぎたのだ
女である私でさえ見惚れてしまった。
アンドレイは恥ずかしくなったのか顔を赤くして私の後ろに隠れている。騎士たちも、気を抜いていたが。唯一エルドはすぐに精神を整え叫ぶ。
「誰か!」
「私はこの森を調査するために、とある国から来た騎士のアーサーです。後ろは私の部下ですね」
「エンファの者か!」
「エンファとは?申し訳ありません。遠方から来たためこの辺りの国や地域には詳しくないのです」
「それを信用できるか!」
「落ち着きなさいエルド!」
今にも切りかかりそうなエルドを制止する
エルドは荒れた息を整える
「申し訳ありません姫様。緊迫した状況が続いたため感情的になってしまいました」
「アーサー様、エルドが失礼をしました」
「いえいえ、そちらも訳ありの様ですし。この様な危険な場所ではなく私達が拠点にしている場所まで行きませんか?」
「お願いします」
「ではついて来てくださいね」
そして、私たちはアーサーの案内で拠点とされるところへと向かった。
*
「こちらです」
そこは、木がなく開けた場所となっていて幾つかの大きなテントが張られていた。
その中の一つに入ったライラはアーサーの案内で椅子に座った隣にはアンドレイが座り、
後ろにはエルドと騎士が4人立っている。
対面に座ったのはアーサーと副官とされる女性が1人座っていて、こちらも同じく5人の女騎士が後ろに立っている。
「では、私はこの森を調査するため国から来たアーサーと申します。隣は副官のランスロットです」
すると、紹介されたランスロットという女性が軽く頭を下げた。
「ではこちらの番ですね。私はライラと申します。彼は私の弟のアンドレイ。後ろの騎士達は私たちの護衛です。ある事情でこの闇の森に彷徨ってしまったのです」
「彷徨った?」
アーサーがライラの言葉に疑問符を飛ばす
「何か?」
「いえ、ライラ様達はどこかの国の王族で
何者かから逃げたのだと思っていたので」
「なぜそう思いに?」
そこから、アーサーの説明が始まった。
まず一つ、ライラとアンドレイの事を騎士が守っていた事。
そして、この森は魔物が蔓延る場所にも関わらず最初に出会った時にエルドが「誰か!」と人に対しての話し方をした事。
「エンファの者か!」と叫んだので、どこか組織に追われているのかという事。
最後に、エルドがライラの事を「姫様」と呼んだ事。
と理由を話され図星を突かれた思いだった。
エルドは自分の失態を悔やんでいる。なぜなら、彼女達が信用できるか判断する前にこの様な状態になってしまったからだ。ライラ達が緊迫した状態になっていると。
アーサーが優しく話しかけてきた。
「大丈夫ですよ、あなた達が何者であっても私達は危害を加えません。なので、話してくれませんか?」
アーサーは優しく微笑んでくれた、中性的な顔が女性の魅力溢れた笑顔に変わる。
その時、私は気を許してしまった。
(これだから、私は父上に優しすぎる、人を信用しすぎるな、と言われるのだわ。でも、信用するしか道がないの)
そして、ライラが口を開く。
「わかりました。私は王国トワイロスの王女ライラ・ファルドール・フィフス・エンダ=トワイロスです。横にいるのは第二王子アンドレイ。エルドは騎士団長です。私たちはエンファ多種族共生国家に祖国を奪われ、逃げて来ました」
「そうでしたか…」
アーサーが顎に手を当てて考えているのを見ると不安になってゆく、ふと隣を見るとアンドレイが泣きそうなのを我慢して私の服を摘んでた。
そうだ、こんな事で弱気になっていたらダメだ。アンドレイもエルドも騎士達も頑張っている。
「わかりました。そして、これからどうするのですか?」
ライラはずっと考えていた事を口に出す。
「私たちを匿ってもらえませんか?」
*
ジンの執務室では、魔法によってランスロットとの感覚を共有した宝珠でジンたちは話を聞いていた。
「どうされますか?ジン様」
「いいんじゃないかな、情報も欲しいからね。一応闇の影から何人かを監視としてつける様にアイシャに伝えといてね」
「承知しました」
アルトリアが僕の命令ですぐに行動に移した
僕はアーサーに匿っていいという許可を出す。これで一仕事終わりだと思っていると
匿って欲しいと言っていたライラ達が動揺していた。何があったのかと、気になって話を聞くと「後ろの物はなんですか?」と震えた声で聞いている。アーサーがなんのことかと聞くと「後ろの巨大な空中に浮いたお城のことです!」と言っていた。
は?
この城が見えている?
なぜ?結界が張られていて余所者には見えないはず。
あ!
「あ!!!!」
僕はドンと机を叩いて立ち上がった。
「どうかされましたかジン様!」
「この城の存在がバレた」
「なっ!なぜ!」
「難民受け入れシステムだ。匿う事が難民を受け入れたと判断されたらしい。余所者なら見えないはずだが、受け入れたせいでこちら側だということになったんだ」
まさか、ゲームのシステムがこんなところで反映されるなんて。
「アーサーに彼らを落ち着ける様に連絡!
僕が行く。念のため各騎士団の師団長級を全員集めてくれ」
「わかりました!」
「さぁめんどくさくなるぞ」
*
それは突然だった。アーサー様が私たちを匿うと許可してくださった時、手元を影が覆った。何かと思い、顔を上げるとそこには巨大な城が浮かんでいた。全員が驚きで戸惑っている。
つい「後ろの物はなんですか?」と質問してしまった。アーサー様は「なんのことですか?」と言っていたが、こちらの動揺に少し不安そうだ。
だが、それどころではない。
「後ろの巨大な空中に浮いたお城のことです!」
と大声で叫んだ。
アーサー様はなんのことか気づいたのか、慌てている。となりの、ランスロット様も動揺しているが少し経つとアーサー様に何かを耳打ちしていた。
すると、アーサー様が落ち着いていく。
「皆様落ち着いてください。あれを黙っていたことは謝罪させてください。ですが、私たちが何か危害を加えるわけでわない事をご理解ください」
アーサー様が丁寧な口調でそう言ったが、こちらは半信半疑のままだ。
「今から私たちの主がお話にいらっしゃる様なので少々お待ちください」
その言葉に、不安になりつつも待っていると
50人近い騎士に守られながら1人の白髪の少年が黒髪の美女と共にこちらに向かってきた
「はじめまして、私はアーサー達の主である
ジン・ファウストと申します。あなたがライラ様ですね」
「は…はい」
優しげに微笑む少年は美しさの化身だった。
その顔に少し気が緩む。
「早速本題に入らせていただきます。私たちは、あの城を拠点にしていますがこの辺りについて詳しくありません。なので私たちはあなた方に安全を、あなた方は私たちに情報を、与えることにしませんか?信用できないのはわかりますが、どうでしょう?」
ジン達にも利益のある話でもある、そもそも私たちにはこれ以外の道がほとんどない。
だから…
「それでお願いします」
「姫様!」
エルドが驚きで叫ぶ
「わかりますエルドの気持ちは、ですが私達にはこの道しかありません」
「姫様…」
「いいのですね?」
「はい、ジン様。よろしくお願いします」
私は深々と頭を下げた
そして、ジン達ファウストとライラ達の協力体制が成立した。
*
そして、王女に仮住まいの家に住んでもらい、現状確認のため都市長やその部下達、騎士団を玉座の間に呼んだ。
「全員揃ったかな?」
「はい、ファウスト様。第二から第十五都市の都市長全員御前に馳せ参じました」
その報告を受けた僕は立ち上がる。
「今回の件は僕も確認をしたが、この世界は《ONRY. WORLD》とは違う世界のようだ、
この世界の住人とも出会い協力してもらっている……そのせいか僕は今とてもワクワクしているよ、僕は決めたんだ。僕の国、始帝国ファウストはこの世界での建国を宣言する!」
「「「ウォォォーーーー!!!」」」
皆の歓声が玉座の間に響く
「そして最後に一つ、折角みんなと話せるんだし、全員集まっているんだ、ファウスト様なんてよそよそしいじゃないか、特別に僕のことはジンと呼んでくれ」
その言葉の後部屋を一瞬の静寂が包む…そして
「「「ウォォォォォォーーーーーー!!!!!!!!」」」
「「「ジン様万歳!ジン様万歳!」」」
先ほど以上の歓声が起きる
「じゃあ、話し合いは以上」
それで話を締めくくり僕は自分の部屋へ向かった。
そして、始まりの国《ファウスト》の新たな歴史が始まった。
ジンが玉座の間から出た後も歓声は続き、都市長間で開国祭を開こうという案が出たのはまた別のお話…
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