🗻

星が見えない。

 星が見えない。


 現在、どうやら地表と宇宙との間には厚い雲が存在しているらしい。


 今いる場所も相当高いはずなのに、まだまだ届かないものがたくさんあるんだなと感じる。




 ――朝焼けを見たい。いつまでも人生の中で輝き続けるような。




 そう思って、俺は長い間ずっと準備をしてきた。


 もし仮にこのまま空が雲に覆われていたら、おそらく日の出を拝むことはできないだろう。


 でも、思っていたほど悲壮感はない。


 それはきっと、今この瞬間がものすごく楽しいからだと思う。


 状況だけ見ればこんなに寒くて苦しくてしんどいのに、頂上を目指して一生懸命登っているこの夜の時間が最高に嬉しくてたまらない。


 あなたはどうだろうか?


 道の途中で出会ってともに行動をしてきたわけだけど、少しは楽しいと思ってくれているだろうか。


 俺はあなたのことをよく知らない。


 もちろんそれはお互い様なんだと思うけど、こうして話まで聞いてもらっているのだからどうしたってあなたの感想は気になる。


 今すぐにじゃなくてもいいから、いつかこの出会いをどう思ったのか教えてほしい。


 まあ、機会があったらそのときはよろしく。




 それはそうと、高校時代の物語にもまだ続きがあるんだ。


 夏の終わりの夜に最強の敵と戦った後、俺と千歳がどうなったかっていうのを終章的な形でまとめてみようと思っている。


 そう多くは語れない。けれど、ラストシーンはもう決めてある。


 俺とあなたが同じ場所を目指して歩いているようにね。


 ほら、あの辺りを見て。ずっと続く光の流れが行き着く先。


 きっとあれが頂上だ。


 ゴールはもうすぐそこにあるんだ。


 だからさ、終わりまで話してもいいかな。


 あなたと一緒に歩いてこなければ生まれなかった物語だから、お礼の意味も込めてあなたに続きを語りたい。


 見えた光の、その先について。

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