慌ただしくファミレスを出た俺たちは、最寄りの駅から電車に乗り込み、海へと旅立った。
慌ただしくファミレスを出た俺たちは、最寄りの駅から電車に乗り込み、海へと旅立った。
一言で海と言っても、行き先によってそれぞれ乗る電車が異なってくる。
だけど、和気藹々とどこに行くか相談するような雰囲気にはならなかった。少ない会話でかろうじて向かう方面だけ決めて、あとはお互いほとんど喋らずに列車に揺られていた。
受験生にとっては電車に乗る時間でさえも貴重な勉強のチャンスである。
俺は参考書やらで重くなった鞄を開け、英語の単語帳をとりあえず取り出してみた。高三に成り立てのときに買った、受験生必携と言われていた本だった。学校の休み時間などにもよく開いていたため、夏の終わりの時点ではもうだいぶ使い込まれた感があった。
さりとて、肝心の中身を覚えたかというと怪しかった。実際には眺めて安心するための書になっていた節がある。
このときもそんな気持ちから手に取ったのかもしれない。
だから、英単語なんて一つも頭に入ってこなかった。
それでも、ただ窓の外に流れていく景色の分だけページを捲り、何かに置いていかれないように手の中の羅列された言語を目で追っていた。
一方で、千歳は追試対策のために作成した手書きのノートを見ていた。これまでに躓いたポイントがまとめられていて、綺麗に色分けなんかもされているやつだった。
俺と同じで単に眺めていただけかもしれないが、格好としてはお互いに勉強をする高校生として、これから家へと帰るみたいに電車に乗っていた。
けれども、走る列車は帰る家からはどんどん遠ざかっていく。
その後、さらに途中の駅で乗り換えをしながら、俺たちは落ちていく太陽と競争するようにひたすら海を目指した。
そして、窓の外が完全にオレンジの夕焼け色に満ちてきた頃、俺と千歳の二人は一緒に最後の電車を降りた。
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