🏫 夕焼けの海の話

遠い夢を見ていたような夏祭りの一日も過ぎ去り、いろいろあった俺の高校三年生の夏休みもとうとう残りわずかとなった。

 遠い夢を見ていたような夏祭りの一日も過ぎ去り、いろいろあった俺の高校三年生の夏休みもとうとう残りわずかとなった。


 祭りの日以降、あと数回分だけ設定してあった千歳との勉強会はスケジュール通りに敢行され、相変わらず俺たちはファミレスやらカフェやらでうだうだ言いながら勉強に取り組んでいた。


 ともすれば、確かに感じたはずの寂しさも忘れてしまうほどだった。


 いや、そういう表現は正確ではなくて、実際のところはそれまでに経験した限りの「いつも通り」を演じていたのかもしれない。


 何かが終わった後にやってくる日常に少しずつ慣らしていくように。


 それが最適な手段かどうかなんてわからなかったけれど、それ以外のやり方というのを少なくとも俺のほうは知らなくて、とにかく余計なことは考えずに自分の受験勉強と千歳の追試対策をこなすことにした。


 それらは何よりも優先されるべき事項であると刷り込まれてきたから。


 正しいことをしているという安心感。


 その心強さといったら半端じゃなく、周りの空気が味方した日にはもう存在や行動のすべてを肯定された気分になる。


 では、逆にその正しさに反旗を翻すとしたら。


 あの日の千歳の無茶な提案について振り返るたび、裏に秘めていた彼女の心情がどのようなものだったのかを考えてしまう。


 それは追試本番二日前のことだった。


 俺たちは二人で夕焼けの海を見に行った。

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