雨上がりの午後、俺は高校のすぐ近くにあるファミレスにいた。
雨上がりの午後、俺は高校のすぐ近くにあるファミレスにいた。突然現れた理解不能な後輩女子とともに。
どうしてそうなったのかを論理的に説明するとなると難しいが、とにかくまずは一度ゆっくりお話を、というお互いの利害が一致したのである。昼飯がまだだったこともあり、俺たちは自己紹介がてら一緒に食事をすることになった。
俺をヒーローと認定した女の子。名前は『チトセサツキ』というらしかった。
らしかったっていうかそれが本名だったわけだが、最初に聞いたときはそれすらも半信半疑だった。
だって、俺のことをヒーローだと決めつけるくらいである。「チトセサツキはいくつもあるわたしの名前の一つ」みたいなことを言い出しても不思議じゃない。
とまあそれはさておき、彼女の名前を知ったところで俺も自らの名前を名乗った。
そういえば、あなたにもまだ教えてなかった。俺の名前は――。
いや、俺の本名については別にいいか。チトセサツキは基本俺のことを「先輩」と呼ぶようになるので、まずは彼女の名前さえ覚えておけば充分である。
その代わりというわけでもないが、このあとイメージしやすいように彼女の名前に使われている漢字も教えておくことにする。
『千歳皐月』
もしかしたら、あなたが想像した漢字とは違ったかもしれない。けれど、これについてはストーリーに直接関わりがないことだ。この先名前が出てきたときにあなたの頭の中で適当に置き換えてもらえればそれでいい。
イメージといえば、千歳皐月の見た目の印象がどのようなものか気になっているのではないだろうか。
これまでの話を聞いて、おそらくどこか変で浮いた感じの女子を想像していると思う。
見るからに変わっていて、集団の中に混ざっていたら一人だけカラーが違ってすぐに判別できるような、風変わりな女の子を思い描いているに違いない。
だけど、それは否定しておく。千歳皐月の見た目から受ける印象はいたって普通だ。
普通。悪い意味ではない。「普通に可愛い」の普通だ。
もしかしたらこれから話が進むうちに抱いていたイメージが変わる瞬間があって、俺の私の千歳皐月はそんなのじゃないと拒否反応を起こしてしまうこともあるかもしれないが、そのときは俺の話し方が下手だったということで許してもらいたい。
さて、何はともあれ俺たちは出会った。
遭遇して、勢いのままにファミレスまで来て、お互いのことを少し知った。
ここからは名前以外の部分、例えば「なぜ夏休み中にもかかわらず彼女は学校にいたのか」などを確認していくことになる。
それでは、そろそろ舞台を戻そう。
夏の昼下がり、初めて彼女と会った日のファミレスの店内で――。
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