🏫 出会った日の話

高校生活三年目。

 高校生活三年目。その年の夏は例年以上の暑さだった。


 繰り返される真夏日の予報。容赦なく照りつける太陽の熱に辟易しながら、俺は学校へと続く長い道のりを自転車を漕いで通っていた。


 高校生にとって、その時期はちょうど夏休みだった。


 けれど、練習熱心な部活などは長期休みの間もほぼ毎日活動していた。


 俺がいつも自転車を学校の駐輪場に停めていると、近くの体育館のほうからは運動部の元気なかけ声なんかがよく聞こえてきた。


 夏の爽やかさ、熱気、賑わい。


 それらは決して嫌いじゃなかった。そこにいるのが誰かなんてまったく知らないけれど、そこにあるそれぞれの青春を思えば「ああ、きっと今充実してるんだろうな」と羨ましく感じるものである。


 自分だって同じ高校生だったのに、なぜそんな他人事みたいな雰囲気なんだ? 


 そういう意見や疑問も当然あるだろう。


 どうして無縁な感じが出てしまっているのか。その理由を説明しよう。


 まず第一に、俺自身はその夏休み中の部活動というのを一切経験していなかった。


 実は高校に入学したての頃、俺は一応バドミントン部に所属していた。


 だが、そのことを知る者は少ない。なぜならたった二か月で退部したからだ。


 原因についてはひとまずおいといて、一年目の夏を迎える前に帰宅部となってしまったことにより、夏休みに部活動で学校に来る機会というのがまったくなくなってしまったのである。


 そして、青春を遠く感じてしまったもう一つの理由。


 夏休みにもかかわらず、学校に登校していた事情もそれと関係がある。


 高校三年生、といえば大学受験の年だ。俺も受験生の一人だった。


 通っていた高校は地元では一応進学校だったこともあり、生徒の大多数は大学進学を希望していた。


 そのため夏休みには特別に受験対策講座が用意されており、各科目の先生が交代で大学受験のための授業を行っていた。


 生徒の中には学校を頼らずに外部の塾に通って力をつけようとする者も多くいたが、俺は高校が自転車で行ける距離の場所にあったことと、お金を余計に払ってまで勉強する気がなかったことから、学校内ですべて済ませることにした。


 為すべきことを流されるままに。


 受験に対して疑念に思うことはあれど、周りがやっているから自分もやる。


 やらないという選択肢を選ぶ勇気も、そうまでしてやりたいこともなかった。


 だけどと言うべきか、だからと言うべきか、俺は講義をサボることもなく夏休み中もとりあえず真面目に学校に来ていた。

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