気分屋名探偵〜事件解決率100%〜

代永 並木

第1話

「……とまぁこのようなやり方で彼を殺したのだろう、確かにこの謎は難しいけど私にとっては造作もない」


探偵である少女は語る

事件の真相を


「それで誰が殺したんだ?」

「うん? あぁ彼女だよ」


一人の女性を指差す

その場の全員が動揺する

警察の見立てでは犯人候補から外れていた人物だったからだ


「彼女にはアリバイがあるそれは無理だ」

「出来るよ、と言うかこの方法は犯人がその場にいる必要性はないから不測の事態が起きない限りはほぼ確実に殺れる」

「私には動機が無いわ!それに私である証拠は何処に」

「いや君さ、証拠残さないのはいいけど流石に消しちゃダメな証拠も消してるんよ、他の人が犯人なら消さないような場所の……心当たりはない?」


淡々と時に欠伸をしながら少女は質問を返す

30分ほど経った時女性はようやく諦め自白をした


「えぇそうよ私が殺したの!」


驚く事にその自白内容は少女の言った内容とほぼ同じだったのだ

女性が逮捕され警察に連れて行かれる


「相変わらずの腕だな……ほかの事件に手を貸して欲しかったがな」

「受ける受けないは私が決めること、てなワケ犯人逮捕貢献したし報酬頂戴」

「今日中に振り込む」

「OK、なら帰るここにもう用ないし」


事件現場となった家から出てすぐに帰路を辿ろうとするが後ろから声がして止められる


「お待ちください」

「何?」

「お礼をしたいのですが」


殺された男性の妹に当たる女性だった


「要らない、私は警察の知り合いから依頼を受けただけだから」

「なぁ!探偵って凄いんだな」


小学校高学年くらいの少年が興奮気味に話しかける


「ふふん、凄いでしょ。私は名探偵だからねぇ」


自慢げに語る


「俺も探偵になる、お姉さんみたいな名探偵に」


意気込んでいる


「……探偵仲間が増えるのは歓迎だよ……でも私のようにはならない方がいい」


真剣な面持ちで少女は語る


「なんで?」


2人とも言葉の意味がわからず首を傾げている


「もし君が本当に名探偵になったらこの謎は解けるよ」


その時少年と少女は全く正反対の目をしていた

希望に満ち溢れた目、光を失った目をしていた

その後少女は何度も事件を解決し続けた

知り合いからは気分屋探偵と呼ばれている

気分で受ける受けないを決めそして受けた事件は全て解決するという探偵だったからだ

そんな日々が続いていたある日ふと警察の知り合いから少女はとある情報を聞く


「お前が解決した事件の被害者の息子本当に探偵になったらしいぞ」

「誰?」

「4年前の妻が犯人だった時のだ」

「あぁ居たね……へぇ本当になったのか」


少女は思い出すが興味は無さそうにする

探偵仲間が増えることは別に珍しくはない


「荒削りだが中々の推理を見せてくれるらしいぞお前と違って殆どの依頼を受けてるし」

「へぇ」

「興味無いのか……お前は自分の手柄とか言いそうだったんだがな」

「いや彼が決めたことでしょ、なら私の手柄じゃない」


1年経ち彼は名探偵と呼ばれ始めた

その頃同じ事件の依頼が来た事もあり久々の再会を果たした


「やぁ少年、久しいね」

「お久しぶりです! まさか貴女と同じ事件を受けることになるとは……あれからだいぶ経つのに貴女は変わりませんね」


歓喜に震えている

自分の憧れた人物と思わぬ形で再会したのだがら仕方がない

少年と会った時と少女は全く姿が変わっていない


「2人も名探偵が必要な依頼なのかねぇ、勝負しないか?少年……なに早い段階で成長が止まっただけだよ」

「望むところです」


2人は推理勝負を始めた

ルールは至ってシンプル先に犯人を当て謎を解けばいい

勝負に焦るような2人ではない

着実に情報を集め証拠を見つけていた


「一手の差だったね」


結果は少女が勝った

と言ってもギリギリの勝利だった

たった一つの証拠が勝敗を分けた


「悔しいですが流石ですねお見事」

「君もいい推理だったよ、君ならあるいは……」

「どうしたんです?」

「いや何でも……ところで最初の謎は解けたかな?」

「最初……?」


初めて会った時の話をする


「覚えていないならそれでいい」

「……あっ、会った時のですね! すみませんまだあの謎は解けてなくて」

「……あれは難解だからね何せ名探偵の謎なのだから……そうだねぇ解けたらキスの1つでもして上げようか?」

「それは本気でやらなくては」

「頑張りたまえよ少年」


手をヒラヒラと振り場を後にする

それから半年後……少年の思わぬ形で2人は再会する


「やぁ少年……謎は解けたかい? なら推理を聞こうじゃないか」


少女は座り慣れた椅子に座り少年を見る

少年は少女を睨みつけ推理を披露する

静かに彼の推理を聞いた少女は笑みを浮かべる


「いい推理だよ、でも決定的な証拠がない」

「あぁ無い……何せ貴女は名探偵だ証拠を残すようなヘマはしない……だからこれは頼みです」

「頼み?」

「この推理が当たっているのなら自首をしてください」

「犯人であろうとなかろうと自首はしないでしょ?」

「普通なら……」


少年は一呼吸おいた後語る


「貴女はこの事件が解決されることを願っている……名探偵の手によって」


人類史において稀に存在する凶悪犯罪者

少女は名探偵では無かった


「貴女が受けた事件は全て……貴女が仕組んだ事件だった」


彼女は……笑う高らかに声を上げて

楽しそうに笑う、愛おしそうに笑う、狂気を混ぜて笑う……溢れる感情を込めて高らかに


「謎を解いたらキスの1つと言ったけど……それじゃ報酬としては安すぎる、この身を君の自由にしてくれて構わない、成長が止まった未熟な身体とはいえ今の君の年齢ならまだ許容範囲だろう?」

「俺は貴女に憧れた」

「憧れるのは自由だ、でもその憧れがその人間にとって真実の姿とは限らない……憧れは憧れでしかない」


殺人を唆しそしてその事件を探偵として解決をすることで成り上がっていた

言わば自作自演


「1つ聞きたいのですが」

「動機を当てるのも探偵の仕事だよ」

「それだけは分からなかった……今までの犯罪者とは何かが違う」

「頭脳かな?」

「…………」

「私は頭が良かったの親よりも周りよりも教師よりも……だから少し本気出すとみんなは追い付けない」


語り始める


「優秀なことはいいことだと思っていたから私は1位を取り続けたけれどそれは間違いだった……人間は思っていたよりも愚かだった。優秀だった私は周りから嫌われ憎まれ嫉妬された」


言葉一つ一つに怒りが込められている


「大人に間違いを指摘すれば子供のくせにとか生意気だとか言われ同年代からは少し意見するだけで頭がいいからって偉そうにするなと言われる……この世は劣等は見下され飛び抜けた優等は……嫉妬される」


少女は恐ろしい笑みを浮かべ続ける


「大多数の人間は人類の進歩を求めていない求めているのは停滞、己の価値を示せれば彼奴らは馬鹿のままでいたいのさ、このままでは世界は停滞するこの国はやがて死ぬ」

「……それと犯罪がなんの関係がある」

「うん? 危機感を持って欲しいからやってる……平和ボケした奴らは危機感を持たない日常という毒に犯され侵食されいずれ危機にすらも対応出来なくなる、だから危機感を持たせるために人に人を殺させた様々な理由でそうすれば彼らでも気付くはず危険はすぐ側にって」

「そんなのは……」

「自己中だし自分勝手な理論とやり方だよ……でもさ人間なんてそんなものだよ、正義も悪も自分勝手でしかないだから私は自分勝手にこの国を悪という色で塗り替える私の求める形に求める姿に」

「なら何故貴女は俺に謎を解かせた」

「人は嫌いだけど可能性は信じてる……私という愚かな犯罪者を殺してくれる救世主めいたんていが私の前に現れることを」


机からひとつの物を取り出す


「そしてこの事件の結末は逮捕ではなく……」

「待て止せ!」

「自らの命を断つことで終わるこれで私の物語は終わる……バットエンドだ、悪いね少年……巻き込んでお礼の1つでもしたかったが生憎と私如きでは君に支払えるものが何も無い」


銃をこめかみに押し付け発砲する

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