第15話 わ、た、し?

 その日の夜、昼の記憶が、また、思い出せるような気がした。

「零夏、夕飯できたから、降りてきて。」

ちょうどいいところで、母(仮)に呼ばれた。

 

 母(仮)の名前は中野 心夏(なかの ここな)、私の事情を唯一知っている人間だったが、私と暮らすことと引き換えに、記憶を書き換えされ、そのときのことを、思い出せないようになっている。


「はーい、今行く~」

返事をしたあと、私は、夕飯を食べながら考えた。

 あのとき、出てきた記憶は、こないだ出てきた記憶と違って、今度は、女の人だった。

なんか、できるキャリアウーマンみたいな、そんな感じの顔だったような。

あと、他に二人、仲間みたいな、男の人と、女の人。

あの人達が、あの男の人と、女の人が、昔の鈴と、慶一だとしたら、このときの記憶を先に思い出した方がいい?

 顔をしかめて、夕飯のエビフライを食べる。




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