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「ああ? つまり、今、お前が『正義の味方』どもの予算を握ってるって事か?」

 夕方になって会社の寮に戻り、俺が課長に今日の話を説明すると、課長はそう訊いてきた。

「ええ、ただし……『正義の味方』の予算を減額する正当に見える理由を考え付く事が出来れば……ですが」

「ああ、そりゃ、ウチの『親会社』の頭のいい奴が考えてくれ……おい、何、ニヤニヤしてる?」

「ただし、ウチの『親会社』は、世間一般では『テロ組織』『悪の組織』ですよね?」

「おい、何言ってやがる……それは世間が間違って……何だ、その目は? あと、何だ、その手は?」

「俺が『予算を減らされたくなければ、ある特定のテロ組織を潰せ』と『正義の味方』に発破をかける事も可能な訳です」

「ま……待て……お……お前……本当に変りやがったな……」

「大した望みじゃないですよ。たまには、美味いモノを食って、高価たかい酒も飲みたいんで」

「あ……あのなぁ……」

「課長は忙しいでしょうから……来なくていいですよ。私1人で楽しんできます。お金だけ出していただければ……」

「お……お前……力を手にしたら、途端に地金が出やがったな……」

「泣き言ですか?」

「ち……違う……。お前……一体全体、何で……」

「何ですか?」

「『正義の味方』どもの金玉を握ったと思ったら……やるのは、そんなセコい真似なんだ?」

 ああ、そうだ。

 どうやら俺は……悪党になれるとしても、しょ〜もない小悪党止まりらしい。

 もの凄い力を手にしても……自分のみみっちい望みの為にしか使わないだろう……。

 しかし、この時点で、俺も課長も気付いているべきだった。

 真に、ロクデモない真似をするのは巨悪ではない。

 ましてや、正義でもない。

 力を手にした小悪党が、どんなズンドコな真似をしでかすか、と云う事を……。

「ああ、そうだ……課長。『親会社』の頭のいい人達による分析結果で知りたい事が有るんですよ」

「何をだ?」

「『正義の味方』が『悪の組織』と見做している組織を完全に潰さない理由ですよ。それに関する『親会社』の見解と……その見解に到るまで、どんな意見が出たかを知りたいんですが……」

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