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「レスキュー隊と『特殊武装法人』……いわゆる『正義の味方』……が共同で行動を行なう場合、指揮の優先権は、レスキュー隊の後方支援→レスキュー隊の現場チーム→『正義の味方』の後方支援→『正義の味方』の現場チームの順になります。緊急の場合には、これを外れる事も許されますが、後でレスキュー隊による査問の対象となります」

 俺はレスキュー隊のエラいさんから、そう説明を受けていた。

 監査資料の中に、妙なモノが有ったから説明を求めたのだ。

 「正義の味方」の現場チームの行動の査問……読んでるだけで胃が痛くなる内容だ。

 一応は、「正義の味方」の行動は妥当だった、と云う結論が出て行たが……大学の卒論発表の時の他の研究室の教授の質問が生易しく思える内容だった。

 それが数十分に渡り延々と続く。

 俺だったら、途中でパニック障害になるだろう。それを「正義の味方」の……それも、どうやら若手らしい連中が切り抜けた。

 勝てない。

 絶対に「悪の組織」は「正義の味方」に勝てない。

 無茶苦茶さでは「悪の組織」の「新兵訓練」も似たようなモノだが……「悪の組織」は組織への服従を叩き込み、「正義の味方」は自分の頭で考える事を叩き込む。

 そうやって育っていく「悪の組織」の構成員と「正義の味方」どもでは、最終的に、どちらが能力が上になるか?

 まさか……。

 俺達「悪の組織」は……「正義の味方」どもの「お情け」で存続を許されているのか?

「では、このレスキュー隊による査問で『行動が妥当でなかった』と見做された場合は?」

「貴方達の出番です」

「へっ?」

「正当な理由なく同じ間違いを何度もした『特殊武装法人』は予算を減らされます。今回は該当する『特殊武装法人』は有りませんが、最終的には貴方達監査委員の承認で正式に予算減額が決ります」

「え……っと、『正義の味方』の予算は、そもそも、どこから……」

「約半分に関しては公的予算から出ています。その予算の使い道を見るのも貴方達の仕事の内です。残りの約半分はクラウド・ファウンディングですが……誰が金を出したか『特殊武装法人』は知る事が出来ないような仕組みになっています」

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