(2)
「お前の偽物だけあって、マヌケだな。GPSも隠しカメラも切ってねえ」
課長が
「よし、この辺りだ。探せ」
変だ。
目的地への経路から少し外れてる。
しかも、わざと人通りが少ない場所に居るような……。
「あの……課長、それ、どう考えても罠……課長?」
あれ?
居ない。
もう、早速、やられたか……。
「いつの間にか消えた」どころじゃない。
奴の居場所の近くに来た途端に消えた。
瞬殺ならぬ瞬消えだ。
でも……。
次の瞬間、社用の
相手は……課長の
『仲間の命が惜しければ……右の路地に入れ』
「へっ?」
逃げて「正義の味方」に全部チクれ。
俺の理性と勇気は……そう告げている。
しかし……俺は……どう転んでも……。
俺は……例によって、勇気ではなく弱気を振り絞り……路地に入る。
「命令通り、私の偽物の行動を阻止する」
「た……助けて……」
そこに居たのは……課長を裸絞にしている俺の偽物……。
やっぱりそうだ。
この馬鹿は……上部組織の幹部の「
俺は止めるべき偽物を奴だと解釈し、奴は止めるべき偽物を俺だと解釈した。
だが……。
「さぁ、仲間の命が惜しければ……潔く自決しろ」
「あ……あんた……何で、他の事は融通が効かないのに、俺を殺す事に関してだけは知恵が回るんだ?」
「よくぞ訊いてくれた。私こそ、生体強化歩兵大隊『万朶』の生き残りなのだ。人殺しはお手の物なのだ」
「へっ?」
「聞いた事ない? あの有名な『万朶』。知らない?」
「無い」
「俺達、有名じゃないの?」
「知らん」
「本当に?」
「どんな成果上げたんだ?」
「2個中隊半が……自称『正義の味方』の中でも、最強と言われた『
なんだ、その「半」ってのは? しかし……どいつもこいつも「正義の味方」の中では
「傷1つ付けられずに、2分で名誉の玉砕を遂げた。前日に古くなったマンゴーを喰ったせいで寝込んでた我々以外は栄誉ある軍神となった」
……。
…………。
……………………。
…………………………………………。
まぁ、問題は俺も課長もヒーローじゃないし……早い話が、この馬鹿でも、俺達を瞬殺出来るだろう、って事だが……。
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