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「あの……他の監査委員の方は?」

「別の場所です。委員同士の打ち合わせはオンライン会議になります」

「別の場所と云うと……?」

「言えると思いますか? そもそも、私達にも知らされていません」

 翌日、「正義の味方」監査委員会の公務に出掛けると……勤務先からの「命令」を果たすにはいくつものハードルが有る事としか思えない説明を受ける羽目になった。

 なるほど、「正義」とは勝者の事だと云うのが良く判る。

 「正義の味方」達こそ狡猾で、「悪」とされ「正義の味方」に潰された組織は……単に自分を現実主義者だと妄想していただけの阿呆だったのだ。

 多分、ウチの会社の上部組織も含めて。

 案内人は初代ウルトラマンの科特隊の制服みたいな感じのオレンジ色の背広と作業着の中間のような服を着た「鬼」の女だった。

 女と言っても身長は一九〇㎝は有る筋肉の塊。肌は白……と言っても人間には有り得ないセラミックのような白だ。髪は銀色で、瞳も白に近い灰色。額からは「白い炎」を思わせる一本角が生えている。

 そして、鬼女が着ているオレンジ色の服は「レスキュー隊」の制服だ。

 通称「レスキュー隊」は、元々は「正義の味方」の組織の人命救助部門だったらしいが、今は「正義の味方」達とは「協力関係に有る独立した組織」だ。

「あ……あの……つかぬ事を聞きますが……その姿……」

「よく訊かれるんですよ。昔、力が強くなるのと引き換えに人間の姿を失ないました」

「は……はぁ……あの、ひょっとして気を悪くされたりとか……」

「いえ、そう云う事を訊かれるのは慣れてますので。では、ちょっと、こちらの部屋へ」

 そう言われて入った部屋は……何だ、これは?

 一番、近い外観のモノが有るなら……病院の診察室か、学校の医務室。

「ちょっと、そこの椅子に座って下さい」

「は……はい」

「少し脳を探りますが……危険は有りませんし、これから使う『魔法』の原理からして貴方のプライバシーに関わる情報を取得するのは不可能です」

「へっ? い……いや、待って……脳をさぐるって……ふにゃ〜……」

 頭がぼ〜っとなった瞬間に見えたのは……目の前に居るゴツい鬼女の驚いたような顔だった。

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