第6話 続々・魔法の練習
魔法の練習を諦めるわけにはいかない、他人には極論に聞こえるかもしれないが生命がかかっている。
なので私は母に頼んで庭の一角、これから花を植える予定だった花壇一つを分けてもらった。庭師に苦笑されてしまった、もしかして手入れをする場所が減るから給料も減る心配しているけれど令嬢の私に強く出られないのかもしれない。なので私が謝罪の為に頭を下げると慌てふためいていた。曰く、貴族令嬢が使用人に簡単に頭を下げると他の貴族連中に下に見られる、と。
「私が悪いのに謝罪をしないのはおかしいでしょう」
母には庭師の給料をどうか下げないで貰いたい、と後で頭を下げてこよう。母は別かもしれないけれど、庭師には安心して欲しい、給料の件も、私が誰彼構わず頭を下げる疑惑についても。
さておき、花壇1つとはいえ好きに出来る権利は得られた。まずは魔法自体に慣れ、流水魔法の精度を上げ、出来れば並行して土地魔法や金鉱魔法も使えるようになりたい。土地魔法に必要な土は目の前にあるので早速だけれど挑戦することにしよう。
土を指差す。花壇の土に私の魔法素を流し込み全体的に、均一に行き渡ったら雑草を根本から排除するイメージをする。樹木魔法もあるけれど木は五行思想で陽性だ、水と土でいずれ間接的にでも扱えれば良いと思うけれど時期尚早だろう、暫くはただ練習用に花壇を使う心算でいる。私の意図を読み取ったかのように土は列を作ってゆっくりと回転し始める。コンベアーを彷彿とさせる動作で回転し続ける土は、次第に放り投げるように雑草を吐き出し始めた。他の花壇や庭に移っても困るのでそれを持ってきた麻袋に詰めてしまう。そうして雑草を取り除き終えたところで土地魔法を止め、今度は流水魔法を使う。予め桶に溜めておいた水を指差し魔法素を流し込む。桶の水に魔法素が行き渡ったら浮かせて移動させ、花壇の上、私の膝くらいの高さに伸ばすように広げていく。ホットケーキやクレープの生地をイメージしていたからかやや薄く、花壇の枠を出てしまったので調整する。空中に枠がないのでなかなか難しい。何とか花壇の枠内に収めても土と違って水が流体なので上手い形に留まってくれない。これは要検討だ、少し疲れてきたので検討の後、明日以降に再試行しよう。形を留めることを諦めて操作を解除すると、水は重力に従って花壇へと落ちた。衝撃で土が少し跳ねてしまったのでまだ土に残っていた魔法素で操作し、土を花壇に戻して本日の練習は終了。
土地魔法は初めてなのでこんなものだろう、まずは基礎をしっかり練習してから応用の方法を考えたい。
流水魔法について理想は如雨露なのだけれど、水を器なしに膝の高さだけれど上空に留めようとすると上手くいかない。どうしたものか。
魔法に集中した所為か疲れていて思考がいつもより鈍い気がする。部屋に戻って休憩しよう、と顔を上げれば庭師が顔を押さえて天を仰いでいた。
「魔法、便利すぎだろ……」
それは私もそう思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます