第4話 まさかの展開
「…………っ」
狛狐さんが声にならないような声を出している。
あれっ、狛狐さんの表情がなんかエロくないか?
そんなことを思ってしまうのは自分だけだろうかと心配になったが、どうやらその必要はないみたい。
「ば、馬鹿者! 主になんてエロい表情をさせているのだ!」
あまりに表情がよくなかったのを理解したのか自分と狛狐さんの間に割って入り制してくる。
「いやいや! それを大声で口にしたら駄目ですよ!!」
狛狐1もハッとした表情になり、しまったと言葉を発する。
やれやれと思ってたが、次の瞬間に板戸がガバッと開いたと思ったら全く知らない女性がズカズカと入ってきた。
「うか様! どうしたのです、こちらにわざわざ出向かれるとはよっぽど重大な用があったのですか?」
狛狐さんが、いつになく緊張した面持ちで話をしているが──うか様!!
「いや、狛狐1の声がここまで聞こえたんだけど信じがたい言葉を言っていたから気になって出向いただけだから安心してー」
あっ、この方が
なんか聞いたことあると思ったら商売繁盛の神様で名が知れ渡っているから知らない人はいないぐらい有名な方が今、僕の目の前にいるのか?
「あら、この子はどこから迷い込んだの?」
僕のことに気づいて口にするけど、なんて言えば言いのか分からなくてカチコチになってしまう。
「気づいたら神界のうか様の敷地に入ってしまったので狛狐1が連れてきました。ですが、怪しい者でもないので安心してください」
カチコチになっている間に狛狐さんが僕のことについて丁寧に説明をしてくれた。
「うんうん、ならいいか」
「かるっ! えっ、待って。そこはもっと怪しんだりしないの!?」
軽すぎる返事につい本音が出てしまって慌てて謝罪して口を紡ぐ。
「人間の子だから特に害はないと分かってるし狛狐もそう言ってるから気にしないのよ」
なるほど。信頼関係を築いているからこそのやりとりだったのか。奥深いなー。
「にしても私には、あんまり表情を出さない狛狐がエロい顔してたっては事実なの?」
「はい、そうです!」
元気よく狛狐1が返事しているけど、うか様が狛狐1に対して質問していることが、あまりにも神様っぽくない。そんなことを考えてしまって失礼すぎると反省した。
「うか様に触れられているのに表情を緩めるのは、いかがなものと思ったからですよ。だけど、うか様以外に触らせたことがないから千慧、責任取って婚礼してくれないか?」
「そうだそうだー! 責任とって婚礼……!! 主、婚礼ってどういうことですか!?」
まさかの狛狐1も野次を飛ばすつもりで言っていたのに真顔になって狛狐さんに問いかける。
「ほら、うか様も婚礼しろとよく言ってたから丁度いいかなって思ったんだけど──」
「駄目です」
言葉の途中で遮るようにすぐさま狛狐1が駄目ですともう反対している。
「いいんじゃない?」
「「えっ」」
まさかの人物が肯定したから狛狐1と自分の声がハモる。
日照り雨にはご用心 行武陽子 @tiroru2kinako
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