第3話 雑談
狛狐さんと話をしたが自分のいた所に無事に戻れるか分からないと判断されてしまったので今日は寝泊まりする部屋を案内してもらうことになった。
「そういえば、会った時から言いたかったんですが、その耳ってやっぱり本物なんですよね?」
会った時から気になってたから、つい口に出してしまう。
「そうだよ。耳をしまうこともできるけど別にそこまで気を配る必要ないから、いつも出してるんだよ」
主である狛狐さんが答えてくれる。
まさか自分を案内するのに主の狛狐さんと狛狐1の二人が来るとは思っていなかったから予想外の展開になってしまった。
自分は凄く動物が好きだから、つい話す時に顔ではなく狛狐さんの耳を間近で見てしまっているから無性に触りたくなってしまう。この衝動を抑えれるのか不安……。
「うわっ!」
歩いていて足元を見ていなかったから狛狐さんの袴の裾を踏んでしまい転びそうになる。
「大丈夫?」
怪我する覚悟をしたが痛みはない。恐る恐る目を開けると狛狐さんに、もたれ掛かってしまったようだ。
「す、すみません!」
「いや、こっちは全然大丈夫だけど足とか怪我してない?」
優しく声をかけてくれてなんていい人なのだろうと思っているのも、つかの間の出来事で狛狐1が声を荒げている。
「お前! 足元ちゃんと見ないから主にぶつかったんだよ! 主が怪我したらどうするんだ!」
「うぅ、すみません」
こっぴどく怒られて自分が項垂れている様子を見たからか、「まあまあ怪我とかしていないし過ぎたことだから気にしないの」と狛狐1に言い聞かせている。
「僕の不注意でご迷惑をおかけしました……」
「謝らせてしまっているこちらも悪いからね。狛狐の短気さには困ったものだ……。私のことを第一に考えてるのはわかるんだけどね」
狛狐のことで悩んでいたけど気づいたら自分の方に顔を近づけている。
「近くで見ると顔可愛いね」
「え! 僕は男ですよ! かっこよくなることを夢見ているので可愛いと言われるのは少し悲しいです……」
ムッと怒っていると狛狐1が真顔になっているし、主の狛狐は自分が怒っていることに対して慌てている様子だ。
「おい、お前本気で言っているのか? 顔の作りが可愛すぎだから無理だろ」
狛狐1にバッサリ言い捨てられてしまって呆然としてしまいそうになりながらも負けずに言い放つ。
「かっこよくなるもん! 狛狐1は黙っててほしいです」
「はいはい」
く、悔しい。狛狐さんの顔は、かっこいいから僕の気持ちはわからないだろうな。
「ごめんね。不快な気持ちにさせてしまって──でも私は、そのままの千尋さんのが魅力的でいいと思います」
そう言いながら頭をポンポンと撫でられる。
「じゃあ、お詫びに狛狐さんの耳を触らせてもらえないでしょうか……」
「えっ、私の耳かい?」
まさか自分にそんな要求をしてくるとは思ってなかったから狛狐さんが自分で合ってると言った様子で、もふもふしている耳を指差しているから、こくりと頷く。
「ふむ、いいですよ」
身長が高いから親切に屈んでくれて耳を触ることができた。ふわふわな毛並みのしていて動物を触っている気分。
あっ、狛狐さんは、狐だから動物か……。
丁寧に触っていると何だか狛狐さんの表情に変化が──。
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