アイヤ嗚呼あああああああああああああああああああああああああああああああああッ!

 ドアを開ければ女子のかほりが鼻腔をくすぐる。唯菜の部屋に足を入れたのは何年ぶりだろう? 少なくとも中学時代から今に至るまでは一度もない。


 室内はピンクピンクしてるわけじゃなく、どちらかと言えば余裕ある大人の部屋って感じの内装だった。余裕ある大人というのもイメージで語ってるだけで実際こんな風なのかは知らないけれども。


 しかし、可愛らしいものが一つもないわけじゃない。



「懐かしいな……これ」



 ベッドの上、枕元にはクジラのぬいぐるみが置かれていた。


 だいぶ昔、それこそ今の家族になってから間もない頃。両親に連れていってもらった水族館で、僕と唯菜は色以外はお揃いのこのぬいぐるみを買ってもらった。


 早く二人が仲良くなるように……そんな意味合いがあったとかなかったとか。あの日は色々な事があったけど、結果的には笑顔で終われたのを覚えている。今でも褪せない良き思い出だ。



「ははッ……なんか意外だな。唯菜が未だにこれを目の届くところに置いておくなんて」



 ぽけーっとやる気のない顔をしている桃色のクジラを見ていたら、自然と僕の口元が緩んだ。 因みにだが僕が買ってもらったクジラは青色で消息不明だ。海に帰ってしまったのかな?



「……おっと、いけないいけない。懐かしさに浸っている場合じゃないな」



 僕は首を左右に振った後、ベッドから視線を外しクローゼットへ。


 四季折々の服には目もくれず、恐らくここにあるだろうと当たりを付けた収納ケースを上から順に確認していく。



「……あった」



 程なくしてお目当てのブツを発見した僕は、性処理おとなの道具おもちゃを床に置き、〝唯菜の下の口に装着するマスク〟を頭上に掲げてピンと広げる。



「これが……これが――――唯菜のおパンティーッ⁉」



 色気むんむんのパープルパンティーに心奪われた僕はいてもたってもいられず、



「――ふんッ!」



 唯菜のパンティーを被った。下のお口がない僕には上の口を塞ぐこの姿しかなかったのだ。


 チラと姿見に映った自分は変態仮面と呼ぶに相応しい風体をしていたが、今さら変態度が増そうが瑣末な問題だと、僕は気にもせず性処理道具を手に取り唯菜のベッドに背中からダイブ。


 ふわっと広がる唯菜の香りに包まれ、興奮は最高潮。


 日常では味わえないこの罪悪感という名の刺激、高ぶりを冷ましてはならないと僕はすかさず性処理道具をバベルの塔に装着する。



「アイヤ嗚呼ああああああああああああああああああああッ――――唯菜ッ! お兄ちゃん、イっちゃうアルよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


「なに……してんの」


「――――――――――――ッ」



 いざ始動と上下に動かそうとした右手が、ただただ震えるばかりで指示に従ってくれない。


 というより、体全体がピクリとも動いてくれない。まるで金縛りにあったかのようにまったく。


 幸い、瞳だけは動かせる。が、声の正体は確認するまでもなく唯菜のものだということはわかった。


 あ……あ……アイヤあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!


 既に嫌われているんだからナニしたっていいと強気でいたけれど、それはまず間違いなくバレないだろうという自信からくるもので、だからこそ僕の動揺は異常なまでの発汗として表れている。


 僕は……僕は――全裸で義妹の部屋に入って義妹のパンティーを被り、義妹のベッドに寝そべって義妹を感じながらオ○ニーしている瞬間を義妹に目撃されてしまった。


 要約すると――クソ野郎だ。

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