壱◆8

 最悪だ。


 賢者にいいように操られて、内心の方はこれから一年を頑張る気満々だし、何より最悪なのはこのやりとりを空神がしっかりと見届けた事だ。


 暖かな光が下りてきて、それは私に触れると、体を満たす妖力の一部を神力に変換した。それはため池の如く多くの妖力を持つ私からすればごく僅かな量、一匙にも満たないたった一摘まみの変換ではあったが、腹の奥がじくりと痛んで気分が悪い感覚だった。


「いっ……」


 思わず背を丸めようとして、拘束されているのでそれが叶わず、足だけが持ち上がって膝に額をつけた。


 まだ空従の任についていない見習いの時代の妖力が神力に置き換わる感覚とも、精を練ってそこに神力を入れた時の感覚とも全く違う。妖力に浸された肉体となっている今の私には、神力は触れるだけでも攻撃のようなものだ。涙が滲みそうなのを堪えて、口をへの字にする。


「今のどこに、空神の信仰を高める行いがあったんだよ……」

「……人神妖平等の盟約に基づいた行動を取ったからじゃないかな」

「ちょっと考えたら誰だってああ指摘するだろ。大体、私は黒姫さまを守る為に……」

「はいはい」


 ぶつくさ文句を言う私を連れて、賢者はその場を他の仙人たちに任せ、奉行所を出てエナンジの里長の邸宅に戻り事の顛末を伝えた。


「よう解決してくださった! 今日は宴を開きましょう。賢者様も是非」

「いえ、僕は次の仕事が……」

「そう言わずに!」


 心配事が無くなり晴れやかな表情を浮かべる人々の様子が、朧気な記憶を掠める。


 ──ほれ、巫女さまも! 今日は無礼講じゃ、飲んでけ、飲んでけ!


 なんの記憶だったかな。思い出そうとして、頭がズキリと痛んだのでやっぱりいいか、と諦めて、私は賢者の旋毛に顎を乗せる。


「いいじゃん、今日はもう休もうぜ」

「君、時間が然程ないって分かっているのかな」

「いいって、いいって。生き急いでもつまんねえぞ」


 ゲラゲラ笑う私に呆れてため息を吐いた賢者は、里長に向き直ると「では、少しだけ」と宴への参加を了承した。


 金霊が戻って来たエナンジは活気を取り戻し、人々は事件解決に導いた賢者を囲んで楽しそうに宴を始めた──。


「ま、分かっちゃいたが」


 私は離れで一人、柱に縛り付けられ、その賑やかな声を聞きながらぼやく。


「私には馳走はねえわなァ……」


 物置きではなく一応客室に置かれているだけマシだが、神力で痛んだ腹にも慣れてくると、遠くから香る食べ物の匂いで腹が減る。これで美味い酒でもあれば文句も無いが、さすがに悪戯妖怪に宴に参加させるほど楽天的ではないか。


(私も頑張ったのにな~。まあ、売買の場所特定は温羅ちゃんだし、証拠隠滅として現場破壊しちゃったから、あんまり突っ込まれると困るか……いやぁ、でも賢者君のちっちゃいお口がもぐもぐするとこ見たかったな~。ここからじゃ見えないの悲しい)


 激しく首を振って頭を揺らし思考を黙らせてから閉眼する。あまり前世女の思考を聞き込んでいると、だんだん賢者に惹かれているような錯覚を起こしそうで嫌だ。


 ついでに前世の記憶を少し探る。あの場では時間が無かったので羅刹とかいう妖怪に全てを託してしまったが、それが正しかったのかを確認したかった。


(羅刹は1章の序盤に加入するキャラだね。真面目で器用でね~、黒姫さまからの信頼も厚いんだよね。角も小さいし、ぱっと見じゃ鬼だって分からないから、人里で諜報活動とかを任されることが多かったっけ)


 ふむ。悪くない評価だ。


(黒姫さまの仲間になる前は、弟を養う為に細々とバイト生活をしている苦労人でねぇ……)


 ということは、今回出会ったのは、姫の仲間になる前の日雇い労働か何かをしていた場面だったようだ。肝心の黒妖姫との出会い方は……。


(お腹空かせて倒れてたところを、黒姫さまに助けてもらって、その恩義から仕えるようになるっていう、すごくあっさりと仲間になるんだよね。こっちだと温羅ちゃんと一緒に書類持って行って、知り合うのかな? 今は人手も足りない時期だし、そのまま仲間になるかも~)


 何か大きな出来事をへて仲間になるわけではないのなら、出会い方に多少の差はあっても大丈夫だろう。他に何か有用な出来事は無かったかと、『げーむ』の記憶を探ろうとしたところで、食べ物の匂いが近づいている事に気づいて目を開けた。


 丁度、膳を持った少女がこの部屋を覗いたところだった。目が合うと、少女はぱっと笑顔になって部屋に上がり、祝いの料理が並んだ膳を私の前に置いた。


「お前……ここの長の娘か」

「うん。お姉さんだけ食べられないの可哀そうだから、持ってきてあげたの」


 偶然とはいえ脅かしたというのに、随分まあ人懐っこいものだ。「怖くねーの」と尋ねると、少女は首を振った。


「だってお姉さん、賢者様のお力で捕まってるから」

「ッケ。そうだった……」

「それにね、お姉さんのお話、面白かったから」

「……なんか面白い話したか?」


 黒妖姫のことで頭がいっぱいで何の話を聞かせてやったのかも曖昧になっていた私が聞き返すと、少女は上品ぶって手を口元に沿えながら、笑みを堪えたような声で答えた。


「キンタマ」

「っはは、下品な娘っ子め」

「んふふ。だからね、お話聞かせてくれたお礼なの」


 少女は小さな頭をぺこりと下げて、それから満面の笑みの顔を上げた。


 ──巫女さま、ありがとうございます。これで村は安泰です……。


 ……どうにも、綺麗には思い出せないものの、過去の記憶が脳裏を過ぎる。決して悪い気はしない。自尊心が満たされる。承認欲求が埋まっていく。だというのに喜ばしい感情の端に、虚しさがある。何かが足りなくて、私は名前も形もわからぬソレを求めて日夜修練に身を置くのだ。


 言い知れぬ想いに顔を顰めると、少女は催促と受け取ったのか小さな丸っこい指で器用に箸を使い、刺身を摘まんだ。


(う)


 生物の臭いで全身の毛が逆立つほど反応する。我に返った私は慌てて仰け反ろうとして、柱に後頭部をぶつけた。


「馬鹿、生臭ェのはやめろ、食えたもんじゃない!」

「え? でもおっちゃんらが、妖怪なら魚とか肉がいいって」

「妖怪にも好みぐらいあるわ!」

「えぇ~。じゃあ、お姉さん何が好きなの?」

「酒!」


 しょうがないなぁ、と溢して少女が立ち上がった時だった。


「お酒は駄目だよ」


 賢者の声がして、私はビクリと肩を揺らす。少女は振り返り、部屋と廊下を区切る敷居の溝の前に立つ賢者を見て「どうして?」と首を傾げた。


「今この御婆ちゃんは、一応地仙だからね。口にして良いものは決まっているんだよ。お酒は飲んじゃいけない決まりだ」

「そうなんだ……でも、お姉さんだけ皆と食べられないの可哀そう」

「優しい子だね、ありがとう。彼女が食べられるものは僕が貰ってきたから、君は戻りなさい。お父さんが探していたよ」

「うん」


 少女を帰して、入れ替わるようにして賢者が部屋に入り、私と並ぶようにして座った。それから、置いて行かれた膳の横に干し葡萄が数個乗った小皿を置いた。


(んあああ、小っちゃい子相手だと口調が優しい……音声付だとそれが際立って最高)


 にやついた顔になりそうになる。下唇を噛んで堪え、顔を逸らすことでようやっと落ち着かせ、私は息を吐く。


「宴会は?」

「君の見張りを理由に抜けさせてもらったよ。僕も地仙だ、あれは駄目これなら良いと食べるもので気を遣わせるのも忍びなくてね」

「あー……」


 霞がかっていた遠き記憶が少しだけ明らかになる。巫女だった頃、事件解決の際には酒の席が設けられ、私は断るのに苦労した。場の雰囲気が悪くなるのも嫌で(妖怪になってからは場を荒らすことに抵抗が無くなったので、これまでの鬱憤を晴らすが如く見かけると乱入していた)、三度目以降は宴そのものに参加しなくなり、一応顔だけは出してそっと離れる賢者の動きには多少共感する。


「お前はその見た目だから、酒は勧められんからマシだろうけどな」

「……。まあね」


 賢者は、少し意外そうに目を瞬かせてから相槌を打った。それから視線を膳の上にやり、彼は目を伏せた。


「……生物、食べないんだね」

「に、臭いが苦手なだけだ! 食えば、多分、上手いんだろ……」


 弱点を握られたかと思って牽制する。しかし賢者にそういった意図はなかったようで、静かに「そっか」と呟くように返答し、それから黙り込んでしまった。


 なんだ? 私を茶化してこない賢者なんて気味が悪い。じろじろと彼を観察していると、不意に賢者は顔を上げ、同時に拘束を解いた。パシン、と軽い音を立てて、神通力で作られた縄が解けて消える。


「……え? 何?」


 思考が分からず、素直に問いかける。賢者は「食べづらいだろう?」と、いつものように微笑んで、私を見上げていた。


(かわ……っ)

「そっ、う……なん、何だよ!」

「そのままの意味だよ。今回、君は別の目論見があったとはいえ、金霊狩りの部署の一つを解体することに尽力したからね。多少の自由は許すよ。それとも、僕が手ずから口に運んであげようか」

(あーんってこと!? 賢者君が!? 何それ見たいちょっと誰か呼んで横から見よう最高の構図を見つけてみせる)

「うわやめろ! 絶対やるな!!」


 色めき立つ前世を抑え込み、私は賢者から離れるように後退りをし、粟立つ両腕を擦った。


「うおおわ……もはや好意なのか気色悪さで鳥肌立ってんのかも分からん……」

「そんなに預言者……ああいや、前世だったか。その人の思考に飲まれるものなのかい?」

「知らない私がお前を『可愛い最高!』と叫んでいる……ッ」


 いまいち想像がつかないのか、賢者は「ふーん?」と相槌を打ちながら、押し入れから布団を引きずり出し始めた。


(お布団持ち上げ切れてない……きゃわわ……)


 自然と手伝おうとして伸ばしていた腕を慌てて仕舞い、私は首を大きく振ってから、広げた布団の上で禅を組む賢者を睨む。


「……待て、お前何してる」

「何って、今晩はここに泊まらせてもらうことになったから」

「はーッ!? だったら別の部屋で寝……いやお前、一晩中調息(※空中の気を取り込み心身を落ち着かせる呼吸法)するつもりか!?」

「修行の一つだ、当然だよ」


 地仙になりたての若者ならともかく、この歳で一晩中やるなんて馬鹿じゃないのか。引く私を無視して、賢者は体の力を抜きながら、「君だって、昔はやってたんだろう」と帰してきた。


「はあ、や……やってた、気はするけど……いや知らん! 覚えとらんわ!」


 言いながら、目を閉じた賢者を見て我に返る。拘束も無い、賢者も油断し切っている、今なら逃げ出せるのでは? さすがに出入口側に賢者は陣取っているが、いくら賢者といえども調息中ではとっさに動けまい。上手くすり抜ければ、逃げられる!


 賢者が開眼した時に反応できるように、奴を視界に入れながらそうっと出入口の方へと動こうとし──しまった、と後悔した。そのくるりとした上向きの睫毛やふっくらとした頬が月光を浴びる様があんまりにも綺麗で、目が離せなくなってしまった。勿論、私の意思ではない!


(見放題……眼・福!)


 クッソ、足が動かねえ……! この馬鹿女が!


 脳内で前世を罵倒してもどうにもならず、私はどかりとその場に座った。音を聞いて、賢者は片目でこちらの様子を窺って来た。


「おや。逃げるかと思ったのに」

「うるせっ。……余計なことしやがって、前世の記憶を閉じるぐらいできねえのか」

「出来るけど」


 賢者はあっさり答えた。「なら」と言おうとした私を遮って、賢者はにっこりと笑顔を浮かべて言った。


「しないよ」

「ア!?」

「だってその前世がいると、君を動かしやすいんだもん」

(“もん”!?)

「可愛い言い方をするな気持ちが昂る!」


 じたばたとする私を見て愉快そうな笑い声を上げた賢者は、クツクツと笑みをかみ殺して言う。


「ま、閉じたいなら自分で神力を上げて閉じることだ。やり方は過去の自分に聞くといい」

「それを思い出せるならやっとるわ!!」


 私の叫びは宴の楽し気な笑い声にかき消され、月明りの下を金霊が踊るように泳いでいた。


***


 ナナシ山、旧・陰大王宮殿。


 雨漏りの激しいボロ屋敷に戻ると、小さな温羅と見知らぬ鬼が待っていた。羅刹と名乗った鬼は、金霊狩りの買取事務所の元従業員とのことで、「天邪鬼様からの預かり物です」と言って、いやに妖力の強い物体を見せてきた。


「何コレ」


 アタシ──黒妖姫は、差し出された黒い球体を前に、呟いた。成人男性の手の平程の大きさで、透明感はあるのに淀んだ池みたいに何も見えない真っ黒な水晶のようなそれを、羅刹という妖怪は「書類です」と何度目かの解答をした。


「どこをどう見れば書類になるのよ。ちょっと温羅、本当にこれを天邪鬼から渡されたの?」

「はいです!」


 分体を吸収し、元の大きさに戻った温羅がハキハキと答える。嘘はないように見える。というか、温羅は嘘が苦手だったわね。天邪鬼から『金霊狩りの証拠』として渡されたのは間違いないのでしょうけど……。


「うーん……」

「直近の売買履歴を取り出した際に、天邪鬼様が妖術で一纏めにされたんです。ただ、彼女の妖術は高度でして」

「便利な分、他人が解いたり自由に扱うのは難しいってワケね」


 羅刹の説明を聞きながら球体を手に取る。試しに妖力を球体に流してみると、一瞬ぶわりと球体が大量の紙束に変化したが、すぐに球体に戻ってしまった。完全に解くには、同等の妖力で無理矢理術を破壊するか、正式な解き方を見つける必要があるらしい。


「んー。今のアタシの妖力じゃ、術の破壊は無理ね。あとは正式な解き方か……」

「本人に聞くです!」

「駄目よ。天邪鬼の近くには賢者がいるわ。証拠を持ってのこのこ出ていったら、今度こそ前科者になるわよ」

「きゅ~」


 温羅の提案を即却下する。項垂れる温羅の頭をぐりぐりと撫でながら考えていると、羅刹がおそるおそる口を開いた。


「天邪鬼、ということは……あの方が空従の巫女様だったという……?」

「そうよ。まあかなり姿は変わってるらしいけどね」

「そうですか。……でしたら、」

「ちょっと待って」


 何か提案をしようとする羅刹に待ったをかける。素直に止まった羅刹が、「何か?」と小首をかしげたのを見て、アタシは呆れて肩をすくめる。


「アンタ今、何か有用な提案しようとしたでしょ」

「有用かどうかは……」


 自信が無いと言いたげに眉を下げる彼の眉間を突いて、アタシは言う。


「いい? 他人に利を与える時は、自分にも利が渡るようにしなさい。情報なんてタダで渡すには高価すぎるのよ」

「ですが、」

「アンタ、何か困ってることは? 今回は特別よ、聞いてあげる」


 急な質問だったからか羅刹は少しばかりオロオロしたが、「早く」と急かすと、周囲を見渡してから「では……」と口を開いた。


「私を、雇ってくれませんんか。そして弟に、ここで暮らす権利をください」

「弟がいるの?」

「はい……ただ、夜は気性が荒くて、人里では中々隠し切れず……」

「ふーん。いいわよ」


 アタシは深く事情は聞かずに了承する。羅刹が「えっ」と素っ頓狂な声を上げたので、思わず笑いながらアタシは続けた。


「丁度人手が足りないのよ、働いてくれるなら歓迎するわ。給金はあんまり出せないけど、雨風凌げる部屋ならあるから、好きに使って。あ。アタシの部屋は一番大きいところだから、そこはダメよ。じゃあ、さっきの提案の続きを頂戴」


 四の五の言わせず促すと、羅刹は先ほどより幾分も明るい表情になって提案を始めた。


「天邪鬼様の妖術は、空神仕えの神通力を応用したものだと聞いたことがあります。空神仕えの基礎術を学べば、ある程度の解術方法は探れるかと」

「なるほどねー……。確かに、半分ぐらい解けちゃえば、あとは力業で壊せそうね」


 いいことを聞いたわ。それなら、白神仕えの術を学べば、白神の神通力を突破できるかもしれないってことよね! 浮き足だって、アタシは温羅に指示を飛ばす。


「温羅! 紅葉商店に注文! 空神仕えと、白神仕えの基礎術が分かるものを寄こすように言って!」

「白神のもですか……?」

「当たり前でしょ! アタシが誰にこんなとこまで飛ばされたと思ってんのよ!」

「は、はいです!」


 小さな体で駆けていく温羅を見送り、次の作戦を考えていると、羅刹が不思議そうに「姫さま」と声をかけてきた。


「ん? 何よ」

「いえ……球体に変化しているとはいえ、それは紙ですし、燃やせば解決するのでは」


 姿形を妖術で変えたとはいえ、本質的な部分が変わるわけじゃない。黒い球体になったこれも、元は紙だから燃やすことが可能だけど……。質問の意図が分からず、アタシは小首を傾げた。


「燃やしてどうするのよ」

「証拠隠滅が目的では?」


 ああ、そういうことね。何を言いたいのかと少し考えちゃったじゃない。アタシは室内にあった竹椅子に腰掛けて、「違うわよ」と羅刹の予想を否定する。


「勿論アタシの分は燃やすけど、他人の証拠は残すに決まってるでしょ」


 ニヤリと笑うアタシを見て、仲間に引き込んだ妖怪達が恐れ慄く。そんなに怖い顔してるつもりもないのに、美少女に向かって失礼な奴らねと内心で悪態を吐きながら、アタシは髪を手で払う。


「金霊狩りに参加したこいつらは、証拠隠滅に幾ら出してくれるかしらね、楽しみだわ」


 折角紹介してもらった割りの良い金策を潰されたのよ、これぐらいはさせてもらうわ。白神への復讐の為にも、何にしたってまずは……。


 ぐるりと辺りを見渡す。穴だらけの壁や天井、埃どころか砂が舞う殺風景な室内は、野宿よりはマシ程度の有様。隠大王は外からの見栄えを気にして大きな屋敷を建てたそうだけど、実際に住むことは想定していなかったとかでこの体たらくらしい。さすがにちょっと……仙人とはいえ人間のアタシが生活するにはもうちょっと色々と必要だわ。


 何か言いたげな羅刹に、アタシはこう付け足した。


「お金がいるのよ。分かるでしょ」

「……ですね」


 隙間風に震えた羅刹は、心底同意してくれた。……仲良くやっていけそうね。


***

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