滔滔たる少年

佐藤菜のは

滔滔たる少年

恋は苦しい、でも不幸じゃない

月を見ても太陽を見ても君を想う


僕は募る想いを持て余していた

今朝も君を遠くから見つめるだけだった


それ以上のことはできない

なぜなら恥ずかしいからだ


心のうちはいつも饒舌な僕である

しかし対外的には軽々しく人に話しかけたりしない


奥ゆかしいのだ

特に女子に対しては


級友のなかには易々と女子と仲良くなれる奴等もいる

そしてそれをあちらこちらで自慢するのだ


僕はそんな浮わついた輩とは違う

痴れ者どもめ


いつ見かけてもすっと背筋を伸ばした君が眩しい

対して不安定な僕の心は不断なくざわめく


そう、真っ直ぐ立つ人は美しい

多くの人は傾いていたり歪んでいたりする


僕もよく鬱屈とした精神が姿勢に表れていると家族に指摘される

幼少のころからひどい猫背なのだ


恋は苦しい

苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい


喉から声なき声が迸る

前進するためのきっかけが欲しい


僕が声をかけ、君がそれに振り向いてくれたならば

もし君の瞳を直視することができたならば


君が少しでも笑ってくれたならば

僕の心は瞬時に破裂するだろう


いつまでもうずくまっている自分が腹立たしい

いままでずっと下ばかり見ていた


僕は走り出せるのか

顔を上げて、未知の方向へ


変われるなんて自信はない

だけど僕が幸せになるために僕が行動しないでどうする


恋は苦しい、でもたったいま僕は行くと決めた

――嗚呼!

































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滔滔たる少年 佐藤菜のは @nanoha_

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