第002話「冒険者スーファ ②」

 スーファの言ったいる言葉が理解できなかったけど、取り合えずこの世界の情報を手に入れることが先決だった。


「スーファはいつ頃この世界に?」


 私と同じというけれどこの世界にだいぶ馴染んでいる感じだ。私よりも先にこの世界に来ていたのだろう。

 できれば、この世界のことを知っておきたかった。

 あまり考えたくはないが、このまま見捨てられたリはぐれてしまったりといろいろな可能性があるけど……はぐれてしまった時、今の私ではどうすることもできない。


「そうだな、オレがこの世界来たのはそろそろ世紀末がささやかれる頃だった」


 すでにこの世界に来て五年もの歳月が経っているということだった。


「辛い事をもいっぱいあったけど、オレは諦めず元の世界に変える方法を探して旅を続けているんだ」


 元の世界に変える方法を探し続けての旅。


「へえ――そんなに昔からいるんですね」


「そんのなに昔って……まあ、五年といっても長……えっ?」


「………………?」


「………………?」


 あれ? なんかおかしくない?

 私が感じた疑問をスーファも感じ取ったらしく動揺したように私の瞳を覗き込んできた。


「真澄……なんか君の話おかしいよ」


「スーファだって変なこと言わないでください」


 お互いハッとしたように顔を合わせる。


「真澄がこの世界に来た時って西暦何年だった?」


 何を言っているんだろう。そんなの二〇〇〇年を過ぎてから私の年齢以上の月日が経っている。


「いやいやいやいや…………そんなはずない」


 スーファはひどく動揺しているようだった。


「えっ、何……オレがこの世界にいる間にそんなに時間が経ってんの?」


 頷くしかなかった。納得するしかなかった。

 つまりは――五年どころではなく――二〇年以上のタイムラグが生じているのだ。


「えっ……オレのセーブデーターは……タクティクス●ーガもクリアしてなかったのに……」


 肩を震わせ涙を流す。


「嗚呼、カ●ュア……」


 あれ、なんか違うことで悲しんでます?


「あの……」


「今は……話しかけないでくれるかな……」


 いや、何言ってんのこの人。

 セーブデータなんてどうでもいいんですけど、今あなた帰りたいって言いましたよね。今もその方法を探しているって言いましたよね。


 スーファはゆっくりと立ち上がった。


「どうしたんです?」

 

 恐る恐る聞いてみる。


「生きる希望を――失くしてしまった」


 えっ、あれだけで?


「セーブデータですよね?」


「ああ、オレの命だ」


 軽っ!

 思わず引きそうになったが何とか踏みとどまった。


「大丈夫ですよ。私の時代にも確か復刻版みたいなのが出てましたし」


「それは本当か……!」


「ええ、多分」


 後半は声が小さくなってしまったが、スーファは聞いていないようだった。


「そうか、また会えるのか……●チュアに!」


 スーファの瞳に光が宿る。


「きっと会えますよ!」


「そうだな、こんなところでめげている場合じゃないな!」


 スーファは立ち上がる。


「一緒に元の世界に帰ろう!」


「そうね!」


 こうして、私とスーファは固く誓い合ったのだった。


 ――早く帰る方法を見つけないと!


 ◆ ◆ ◆ ◆ 


【ノストラダムスの大予言】

 1999年、世界が滅ぶとの大予言がひそかにささやかれる時代。様々なうわさが飛び交い将来を悲観するが故に自殺する者まで現れたというハタ迷惑な予言。実際にはコンピューターの2000年問題なども起こったわけで、少しは当たっているのか?


【タクティクスオウガ】

 伝説のオウガバトルシリーズ。1995年に発売されたスーパーファミコンのRPG.。高低差を利用した戦略や奥の深いストーリで他のRPGを凌駕した。やりこみ要素も多くPS、SS、PSPでリメイク版が発売された。


【カチュア】

 前記の【タクティクスオーガ】のヒロイン的存在。主人公をこよなく愛するマッドなブラコン姉御。そのブラコンっぷりは目を見張るものがあった。


【クラシックミニ】

 2017年に発売されたスーパーファミコンの復刻版。残念ながら「タクティクスオウガ」は収録されていない。

 ※FF6は収録されている。

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