第2話 旅は道連れ
しばらく探したけど、やっぱりログアウトボタンはないみたいだった。
「はぁー、なんなのよー、もー。お兄ちゃんもはぐれちゃったし、ここどこかもわかんないし。こんなことなら、WORLDの地域の説明とかスキップしないで聞いておけばよかったなぁ。」
目眩が治まって立ち上がると、どうやら森の近くの草原にいるみたいだった。明るい日差しに爽やかな風。森は広そうではあるが日差しがあるおかげで鬱蒼という感じではなく、ちょっとしたハイキング向きな場所に見える。
ごろん、とりあえず寝そべって考える。
まずこのログアウトできないという状況。これは多分、普通ではない。
で、それに対してなにかできるか?
無理。だってゲーム自体初心者なのに。
じゃぁ、とりあえず偉い人がなんとかするまでは待つしかない。
そこまで考えると、よいしょっと起き上がる。
せっかくだし、自分でもこの世界を見てみようかな。
幸い、ハイキング向きな場所である。
街に戻って水とおやつでも調達できたら良いが…さっきのクエスト報酬もあるし、まぁ、見てみるか。
●◯●◯●◯●◯●
「らっしゃい!燻製肉最後の一箱だよ!」
「グレの実最後の一房だよー、早い者勝ちだよー!」
「食べ歩きに串焼きはどうだい?今なら焼きたて!本日最後の箱を開けたから、なくなったらもう焼けないよー!」
あちこちで飛び交う客寄せ声。
どうやら囚われた人たちが街に集まっているせいで在庫が減っているのか、"最後"という呼び込みが多い気がする。
なんとか干したフルーツのような携帯食と、水袋に入った飲料水を確保した頃には、ほとんどの店が売り切れごめん状態だった。
●◯●◯●◯●◯●
食糧も少ないながら調達し、さぁハイキングだ!と意気揚々と森に向かっている途中、
むにょん
「ひっ?!」
踏んだ。なにか踏んだ。
これは、あれか、森の近くだし、動物のアレなのか?
やだなぁ、街に靴洗う場所あるかなぁ、と思いながら足元を見て
ぶにょーん
「ひぃ?!」
動いた。ていうか、伸びた。
靴の底に踏まれていたはずの黄色いソレは、なにやら柔らかそうな動きでその場から抜け出すと
「ぷぅ!」
挨拶してきた。
●◯●◯●◯●◯●
しばらく様子を見てわかったこと。
1、私が踏んだソレは、生き物であること
2、どうやら敵意はないこと
3、ぐにょぐにょとグミのように柔らかいモノであること
そしてなぜか、
4、私についてくること
「ねぇ、キミ、どうしてついてくるの?」
「ぷ?」
「いや、ぷ?じゃなくてさ」
「ぷぷぅ?」
「うーん、なにか欲しいものを持ってるのかなぁ?」
「ぷっぷっぷっ♪」
会話になっているように見えて、全くわからない。
これじゃお互い大きな独り言だ。
そうこうしながら歩いてるうちに、森に差し掛かった。
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