空中戦

 空中ではレイとウォーカーが必死に戦っていた。地上からの援護がほとんどない中の戦い。回復するにもミーアの下へ行けば攻撃は一気に地上部隊へ向く。退くことのできない戦いが続いた。

 ウォーカーは前と同様に竜を盗み竜騎士を一掃しようとするが、空船からの魔法攻撃が激しく先ほどのように戦えていなかった。


「数が多すぎる上に空船の反撃がきついな……」

「ウォーカー、少し時間稼ぎをしてくれ」

「何か策でも?」

「私の能力は風。空を支配するのはいつだって風だ。大量の魔力を使うことになるがそれ相応の結果は出せる」


 レイは今までウォーカーに対し敵意を持っていた。ミーアにつらい現実を見せ恐怖させたことや、漆黒の槍が影響するとはいえ殺戮の限りを尽くした人間を信用できなかった。だが、ミーアとウォーカーのやり取り影ながら見ており、ミーアが信頼しているのなら自身も信用するべきだと判断していた。

 ミーア以外から頼られることが初めてだったウォーカーは不思議な感覚を覚える。傭兵として報酬が前提の上で頼られることはあるが、力を共にいつ死ぬかわからない戦場での信用は、ただお金をもらい力を尽くすことよりも心地がいいものだと知る。


「わかった。俺に任せろ」

「頼むぞ」


 ウォーカーは器用に竜を操り敵地のど真ん中へと進む。射線がお互いに当たることで敵の攻撃に戸惑いを発生させつつ次々と竜を乗り移り乗っている兵士を倒していった。だが、空船は敵味方関係なく攻撃を放つ。


「俺らさえ倒せば味方はどうでもいいってことかよ。まだ俺はそこまで落ちぶれちゃいない!」


 漆黒の槍は黄金の槍と違いバリアを発生させることはできない。だが、黄金の槍にはできない強力な攻撃を発生させることはできる。漆黒の槍にオーラを纏わせ一気に放出し、空船の魔力砲に対し正面からぶつける。その衝撃は地上まで広がる。

 しかし、魔力砲と力比べしている間に竜騎士たちはウィークを襲った。


「風よ吹き荒れろ! カオスアネモス!!」


 漆黒の槍と魔力砲がぶつかり合う衝撃を上回る突風が空全体に吹き荒れる。地上から放たれる魔法さえも完全にコントロールを失い風と共に散り、レイは空を完全に支配していた。空船を落とすまでには至らないがこの攻撃により竜騎士のほとんどは地上へと落ちていく。

 魔力砲を放っていた空船も攻撃を中止し姿勢制御を行っていた。


「いいとこに竜騎士が落ちてくれた。ならこれで仕留める」


 ウィークは空に槍を投げると、無数の分裂した槍がウィークの周りへと雨のごとく落ちた。落下した竜騎士部隊や地上部隊を貫き完全に消滅させていく。


「さぁ、次は空船だ」

「もう一度魔力砲を止められるなら私が突っ込もう」

「問題ない」


 空の戦いは次第にスバラシアが優勢になりつつあった。

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