第18話、インディアン、嘘つかない。良い子になれる~。
ドン・パッチーニ邸にて俺は使用人と対峙していた。
「俺の本当の名は...。」
「君の名は?ってか。映画じゃねーか!」
「い、いや俺の名は。」
「だから、新○誠監督の作品だろ。分かったって。」
「聞けよ!!そして、名前くらい言わしてくれよ!」
「嫌だよ。どうせお前みたいなモブの名前聞いても覚えられないし。取りあえず眠っておけ。」
俺は少し拳に力を入れて使用人を殴った。
「ぶべぇ!!」と何とも言えない言葉を放ち使用人は気絶してしまった。名も分からぬ使用人に合掌をし、俺はドン・パッチーニの書斎らしき場所を探したのだが、
「うーん。広すぎてわかんね。やっぱりあの使用人に聞くか。」
俺は使用人の元に戻って頬をビンタし起こした。
「おい、書斎はどこだ?言わないと殺す。」
「...。」
使用人は目をそらし口をつぐむ。
「わかった、わかった。名前を聞いてやるから教えてくれ。君の名は?」
「...。」
「てめえ...、仏の顔も三度までだぞ。君の名は?」
俺は苛立った。きっと顔が般若のような顔になったのだろう。使用人はガタガタ震え始めた。
「...ザンゲフっす。すいません...。」
「よーし、ザンゲフ。書斎まで案内してもらおう。案内してくれたら
「ほ、本当っすか!?」
「ああ。俺は嘘つかない。インディアンの末裔だからな。」
「イ、インディアンはよく分からないっすけど見逃してくれるのならありがてえ。聖騎士様は寛大っす。」
聖騎士って設定だから嘘ではない。これはあくまでも設定だ。うん。そう、設定なのだ。
インディアン嘘つかない、良い子になれる~。
「じゃあ、案内頼めるか?」
「はいっす。」
俺はザンゲフの後をついていき書斎にたどり着いた。そして、ドン・パッチーニの机の中から裏取引の帳簿ならびにそれに関与した貴族達の書類を手にいれた。
「よし、ここにはもう用事はない。ザンゲフご苦労だったな。捕まりたくなかったらさっさと逃げた方がいいぞ。」
「そ、それはどういう事っすか?」
「俺が一人でここに来てると本気で思っているのか?俺は聖騎士だぞ。他の騎士達がいるのは当然だろう。」
そんなのはどこにもいない。俺は聖騎士じゃないからな。
「た、確かに。それじゃあっしはこれで失礼させてもらうっす。」
「ああ、これに懲りたらもう悪事はするなよ。ああ、そうだ。この宝石持っていけよ。軍資金がないと再出発するのに困るだろ?」
俺はドン・パッチーニの机からゴロゴロと出てきた宝石をいくつかザンゲフに渡した。
「かたじけねえ。グングニルの兄貴、俺はアンタの事一生忘れねえ。この恩はいつか必ず返す。」
グングニルって誰だよ!?
ってツッコミたい気持ちを押さえつつ、
「ああ、じゃあな。ザンゲフ。元気でやれよ。」
俺がそう言うとザンゲフは俺に頭を下げそそくさと逃げていった。
「さてと、俺も仕上げに入りますか。」
俺は取るものを取り建物の入り口に出た。
「よし、俺も久し振りに力を出そうかな。」
背中の大剣を構える。相変わらず鞘から剣は抜けないが、
「技の名前、何にしようかな?うーん。トーマスに付けてやった『魔ジ斬り』なんてダサさの塊だしな。うーん。よし、あれでいくか。」
俺は剣を反対にし腰を落とし構える。
「アバンギャルドストラッシュ!!」
あれ?こんな名前長かったっけ?まあ、何でもいいか。
全身に力を込めて建物に一撃を放つ。
すさまじい衝撃で金一色の建物が粉々に倒壊したのだった。
「フー。スッキリした。さて、帰るか。」
振り返った俺にシャルルとトーマスが近づいてきた。
「クロちゃ~ん。どうだった?証拠はあった?」
「ああ、バッチリだ。ほら。」
「おぉ~、これならバッチリね!早速ギルドに行くね!」
「だな。さっさと行こう。久し振りに力を出して腹が減った。」
「いや、あの、クロさん?...これどうするんですか?」
トーマスが全壊して粉々になったドン・パッチーニ邸を指差して言う。
「何が?建物なんて初めからここには何もなかった。うん、なかった。」
「なかった。じゃねーよ!!どうすんだよ!?報復に狙われたりしたら!!」
「そんときはそんときだろ。それにホラ見てみ。スラムの住居の顔を。」
トーマスは門の所に集まっている大勢の住人を見た。
「なんだか晴れやかですね...。」
「だろ。それでいいじゃねーか。後は、この街トーキーの領主様か、衛兵様かの出番だろ。俺達の依頼はあくまで『魔秘薬の出所を探す。』だぜ。もう達成したしな。」
「そ、そうですね。なんか建物も無くしてしまって罪悪感たっぷりですけど...。」
「本当、トーマスは金玉もちっさいな。私がこの杖で殴って大きくしてやろうか?そして、お前を蝋人形にしてやろうかぁぁ?」
ネタが古いだろ。シャルルはマジで年齢詐称のロリババア確定だな。トーマスもひいてるじゃねーか。これを声に出したらまた面倒な事になりそうなので俺は口を閉じた。
「クロちゃん。今なんか失礼な事考えてなかった?」
「か、考えてねーよ。ヒューヒュー。」
「口笛なってねーよ。絶対なんかひどい事考えてただろ?クロちゃん、正直に言えっ。」
「何にも考えてねーって。は、早くギルドに行くぞ!」
俺はシャルルから逃げるように足早にこの場所を後にしたのだった。
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