第17話、聖騎士グングニルと名乗ってみた。
「お前達はあの人の恐ろしさを知らないんだ。」
ガラームは冷や汗を垂らし怯えながら言ってきた。
「だからあの人って誰だよ?」
「ここいら一帯を仕切っているドン・パッチーニさんだ。」
「ドン・パッチーニ?聞いたことないな。」
「裏社会のボスで貴族との繋がりも深い方だ。その人の館を壊した。」
「誰が?」
「お前達だよ!!!今も絶賛壊してるじゃないか!?」
トーマスとシャルルの決闘はまだ続いていて金ぴかの建物は半壊となっていた。
「うそ?あそこの教会がドン・パッチーニの住んでるところなの?マジで?」
「マジで。今は留守みたいだからいいが、帰ってきたらと思うと...。俺達はこんな見た目だからどこも行けないし。どうしたら...。」
ガラームと話をしてる最中もドンドンと建物は壊されていってる。
うん...。これは修復不可能だ。ばれないうちに逃げようか...。
「クロム達には悪いが逃げたらお前が犯人だってドン・パッチーニさんに告げ口させてもらう。俺達も命は惜しいんだ。」
「えぇぇ!?そりゃねーよ。壊したの俺じゃねーし。」
「そうは言ってもパーティーのリーダーはお前だろ?責任があるだろ?」
知ったこっちゃね~よ。
何であいつらのケンカしたのが俺の責任になるんだ?だんだんあいつらムカついてきたな。
もういっそこの建物を全て破壊してしまえばいいんじゃないか?
最初から建物もなかった事にしよう。
うん。そうしよう。
俺は自分を納得させトーマスとシャルルが戦ってる方へ歩き始めた。
「お、おい。どこ行くんだ?」
「何...、ちょっと大掃除にな。」
とりあえずトーマスとシャルルを止めないとな。
「おい、お前らいい加減にしろ。俺達がここに来た理由を忘れるな。」
「クロさん、アンタも僕を童貞だと馬鹿にしたじゃないか!?この糞ビ○チをやった次はアンタだからな。」
「そうね!!この童貞をやった後はクロちゃんと戦うのも面白そうじゃ!」
はぁ~。俺は一つ溜め息を吐く。
言葉で言っても分からないなら実力行使しかないな。俺は、足に少し力を入れた。
そして、トーマスの背後を取る。
「いい加減にしろ。」俺はトーマスにゲンコツ落とした。すると威力が強すぎたのかトーマスの身体が肩まで地面に刺さったのだった。
「やり過ぎたか...。力加減が難しいな。次は...。」
次に俺はシャルルを見る。シャルルは敵わないとみたのか両手を上げた。
「こ、降参じゃ。今のクロちゃんの動き全く見えなかった。」
「そうか、ならいい。シャルル、お前の魔法で建物の中に人は見えるか?」
「え?あ、あぁ、10人ほどかな?怯えてるのかその場を動いていない。」
「わかった。じゃあ、トーマスと一緒に下がっててくれ。」
シャルルは俺の言うことを聞き、埋まったトーマスを救出し門の入り口まで下がった。
俺は半壊した建物の入り口に向かい、
「すいませーん!!中にいる人、全員出てきてもらえますか?この建物崩れそうなんですよ~!」
俺は嘘をいいコンタクトを取ろうとした。
すると中から使用人らしき人物が出てきた。
「こ、この建物崩れるのですか?」
「えぇ、何かモンスターみたいな奴らが争ったんでしょう。始末はしましたが。」
「ドン・パッチーニ様が飼っておられたモンスター達が...、だから止めましょうと言ったのに。しかし、ここには結界が張ってたはず。」
「あ~、結界も完璧ではなかったのですね、きっと。どんなものでも完璧なんてないじゃないですか。うんうん。」
「そ、そうなんですか。して、貴方は?」
ここは正直に話すべきか否か。
答えは否だ。演技をしよう、そうしよう。
俺は顔を引き締めた。
「俺は王都から派遣された聖騎士のグングニルだ。王から特命を受けてここに参った。ドン・パッチーニの悪事は全てバレておる。お前達はそれに関与してるのか?」
グングニルってだれだよ!?
適当な名前を付けて言ってるだけだし。
自分で言ってて少し恥ずかしくなる。
しかし、この男は信じたようだ。
「い、いえ。」
「本当か?ならいい。他の者達はここの外に出るがよい。そして、お前はドン・パッチーニの書斎まで案内してもらおう。」
「は、はい。」
他の使用人を外に出し執事のセバスと共に屋敷の中に入っていく。そしてセバスが口を開く。
「そ、それにしても悪事って一体なんの事でしょう?」
「おいおい、白々しいな。お前は混ざっているのだろう?何かが...。」
「ちっ。バレているのか。何でこんな時にドン・パッチーニは外出してるんだ。まあいいここでお前を殺せば万事解決だな。」
「本性を出しやがったな。」
「それにしても何でわかった?変装は完璧だったのに。」
「匂いだよ。お前には人間じゃない匂いが強すぎる。獣系のモンスターか?」
「さすがは聖騎士だ。よくぞ見破った。」
俺、聖騎士じゃねーけどな...。こいつは多分バカだ。
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