第15話、潜在能力、半端ない。
「なななな、なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
呆気に取られてたトーマスが大声を上げる。
「なんじゃこりゃって、これが現実だろ。お前、見えてなかっただろ。」
「あーはっはっは!!トロールやゴブリンの前で感動して泣いている姿は傑作じゃったぞ!!いーひっひっひっ!!ヤバい、笑いすぎて?腹が千切れる!!千切れるぅぅ!!」
シャルルはその場で笑い転げて悶絶していた。
その姿にトーマスは真っ赤な顔をしてプルプル震えていた。
「クロさん...。知ってたんですか...?」
「知ってたってよりも、見えてたと言う方が正しいかな。トーマスが先に行くからさ。」
「そうですか...、見えてなかったのは僕だけだったんですね...?」
「そうだな。まあ駆け出し冒険者なんだから仕方がないだろ。」
シャルルはまだ笑い転げていた。
いい加減止めて上げればいいのにとは思うが、実際は俺も笑うのをめちゃめちゃ堪えて、いつ吹き出してもおかしくはない状態だった。
「クロさん...。アイツら、僕が殺ってもいいですか?いいですよね?」
「お、おう...。が、がんば...もうダメだ。ぶひゃーっはっはっ!!泣いてやんの!!トロールとゴブリンの前で泣いてやんの!!腹いてぇ~!腹いてぇ~よぉ!!」
俺は地面をバンバン叩きながら大笑いをした。
「殺す...。絶対殺す...。ウオォォォ!!」
トーマスは剣を手に持ち走り出した。トロールとゴブリンに向かって。
殺気を放ち走りこんでくるトーマスにゴブリン達は怯えて動けなかった。
今のトーマスに慈悲はない。5体のゴブリン達の首を瞬時にはねた。
「後は、貴様だけだ...。」
「に、人間の分際で生意気だど!!」
トロールは手下がやられた事でたじたじになっていた。その隙を見計らってトーマスが斬撃を入れる。しかし、斬撃を入れられたトロールの傷口がみるみる再生していった。
「お前の斬撃なんて俺様の再生能力の前では無力なのである。」
「ほう...。ならば試すか?」
俺はトーマスにアドバイスをしようかと思ったが、トーマスには考えがあるようなので黙った。
「今度はこっちから行くど!!」
トロールが大きな鉄のハンマーを振り回す。しかし、トーマスの方が何倍も素早い為に躱わすのは容易だ。実際トーマスは一度も攻撃を食らわなかった。
「クソ!!ちょこまかちょこまか動きやがって!!これならどうだ!!」
トロールは地面に向かって大きく振りかぶった。
「
大きな鉄のハンマーを地面に叩きつけるとトロールの周りから岩が刺状に盛り上がった。トロールの範囲攻撃で一般の兵士ならトロールを囲んでいたとしても皆串刺しになるだろう。
しかし、相手はトーマスだ。
トロールはトーマスを見失いキョロキョロと周りを見渡す。
「ど、どこ行っただ!?ヤツはどこに...」
「上だよ...。」
トロールが声がした上を向いた瞬間、トーマスが技を放つ。
「
トーマスは脳天からトロールを一刀両断し、身体を真っ二つにした。いくら再生能力の高いトロールでも回復は出来ず、その場で沈黙したのだった。
「クロちゃんや、トーマスのヤツあんなに強かったんじゃな。Bランクのモンスターをアッサリと...。驚いたぞ...。」
「だろ?普段はそこまででは無いんだが、土壇場って言うのか火事場のって言うんだかの力が半端ないんだ。潜在能力はその辺の中級冒険者よりかなり上だと思う。」
「成る程な...。クロちゃんが目をかける訳だ。」
「いや、出会ったのは偶然さ。
「偶然は必然って言うんだがな...。まあ、いいか。さて、どうしたものかな...?この金ピカの建物といい、街にモンスターを飼ってる事といい、薬の事といい問題だらけじゃぞ。」
「建物ごと吹き飛ばせばいいじゃないか?」
「クロちゃんは本当、脳筋じゃの...。それじゃ証拠が残らんじゃろうてと。」
脳筋、脳筋って俺がまるで馬鹿みたいじゃないか...。失礼な熟年幼女め...。俺だって考えてるっつーの。とは言えず、俺は頭をポリポリとかくのであった。
「クロさん!僕、どうでした?」
トーマスは憑き物が落ちたようにスッキリした顔で言ってくる。
「ああ、中々いい攻撃だったぞ。特に最後の魔ジ斬りは決まってたな。」
「でしょ!?僕も決まった。と思いましたよ!はぁ~、スッキリした。ストレス解消にはモンスター狩りですね!!」
お前はそんなにストレス溜まってたのかよ。とはツッコめなかった。だって、ストレスの原因は確実に俺達だからな。
とりあえずトーマスには「そ、そうだな。」と軽く流しておいた。
門番のモンスターを倒してから周囲の殺気が薄れたというより無くなった。
これはどうしたものか?と周囲を見渡すと住人らしき人々が次々と俺達の周りに集まってきたのだ。
「ク、クロさん...。どうしましょ?どんどん人が集まって来てるんですけど。」
「大丈夫だ。彼らにはさっきまでの殺気がない。」
「くだらんギャグじゃの~。センスを疑うぞ。」
「いや、ギャグじゃねーし。門番してたモンスターを倒してから雰囲気が変わったんだよ。」
「そ、そうなんですか?でも、恐いんですけど。」
そう言いトーマスは俺の後ろに隠れた。
「あなた方は救世主だぁ!!」
救世主?住人達の言葉にハテナマークが浮かぶ俺達なのであった。
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