第14話、純粋なだけじゃこの世界は生きられない。
俺達は西地区のスラム街に来ていた。
「ここがスラム街ですか...。クロさん、さっきから何か色んな人にジロジロ見られているんですけど。」
「シャキッと歩け。そんなにキョロキョロしてると拐われるぞ。」
「ま、またまた。脅かさないでくださいよ!」
「トーマスは金○がちっちゃいのぉ~。クロちゃんみたいに堂々と出来んのか?」
「シャルルちゃん。金○じゃなくて肝っ玉でしょ?女の子がそんな下品な事を言っちゃダメじゃない!?」
「ほぉ~。この私に意見を言うか...。童貞の癖に。」
「ど、どどどど童貞じゃないやい!!」
明らかに顔を真っ赤にしてトーマスは動揺している。
「そんなくだらない事ばっか言ってんなよ...。」
「クロさん...。」
「トーマスが童貞なのは誰が見ても分かりきってるだろ。見栄を張るな。」
「張ってねーし!見栄なんかこれっぽっちも張ってねーし!!大体あんたらに僕の何が分かるんだよ。」
「お前のナニなんてわかんねーよ。」
「そうだそうだ!童貞のナニなんてわかんねーぞ!!」
「ぐぬぬぬ...。ああ、そうさ!!僕は童貞さ!!だから何なんだよ!?僕は純潔を貫き通すんだ!」
「ちょっと聞きました、シャルルさん。あちらの機○車トーマスさん、貫き通すんですって。俺の機関車でって。なんて卑猥な。」
「あら、お隣のクロさん。聞いたわよ!いやーね...、こんな公衆の面前で卑猥な言葉ばっかり言って。親御さんはどういう教育されたのかしら?」
「主婦の井戸端会議みたいな事をすな!!しかも、親は関係ねーだろ!親は!もう知らん!!」
そういいトーマスは1人先に歩き出してしまった。
「何を怒ってるんだ
「まぁ、若いから反抗期なんじゃない?...それよりもクロちゃん気付いておるか?」
「あぁ...。
「そうじゃな。...さてどうやって黒幕を炙り出そうかの...。」
「そんなん決まってるだろ。正面突破だ。」
「クロちゃんは脳筋だのぉ...。まあ、それも悪くはないか。」
そう言いながら俺達は、怒りで暴走気味になっているトーマスの後を歩いた。
それにしてもトーマスは不用心に歩いているな...。
この辺りはもう敵のテリトリーだというのに...。
まあ、トーマスも少しは強くなったから大丈夫か...。
そんな事を思いながら気配察知をする。
いつの間にか建物の影から禍々しい気配のする人間達に囲まれている事に気付いた。
「囲まれている...か。」
「そうじゃの。して、どうするんじゃ?」
「どうするもこうするも襲って来ないんだからわざわざこっちから仕掛けることもないだろ。いちいち相手するのも面倒だし。この程度のやつらはトーマスの訓練相手位にしかならないよ。」
「ほう...。薬で強化されてる人間をこの程度ね。やっぱりクロちゃんは強いんじゃの...。」
「さあね...。さてと、もうすぐ本拠地につくかな。トーマスは...とアイツ何してるんだ?」
先に行ったトーマスは教会の門の前で修道服を着ている女性と子供達に何やら話をしている。
俺達が近づくとトーマスが振り返る。そのトーマスの顔には涙が流れてた。
「トーマス...。お前泣いてるけど、何してんの?」
「クロさ~ん、この子達の話を聞いていたら涙が、涙が止まらないんですよ。こんな不幸な人達が居ていいのでしょうか?こんな世の中でいいのでしょうか?」
「は?何言ってんの?お前なんか悪いものでも食べた?」
「クロさん!!この子達を見て分からないのですか!?こんなボロボロな服を着てボロボロな教会の前で寄付を恵んで下さいって言ってるんですよ!」
「いやいや、だからさ~...」
俺がトーマスに現実を教えようとするとシャルルが口を挟む。
「クロちゃん。トーマスには見えてないんだよ。」
「あぁ...、そういう事ね。」
俺は背中の大剣を構える。俺の姿を見たトーマスは必死に止めようとしてきた。
「な、な、何をしてるんですか!?子供達に剣を向けるなんて正気の沙汰じゃないですよ!?」
「お前な~...、まあいいや。トーマス、ちゃんと現実を見ろ。」
俺は止めてくるトーマスを後ろに下げ教会の門目掛けて大剣を振り下ろした。
振り下ろした大剣の斬撃波のが門の1メートル前で大きくぶつかった。
「中々強力な結界だな...。」
「クロちゃん、手伝おうか?」
「この程度、俺だけで充分だ。」
俺はさらに力を込めて大剣を振り下ろした。
その振り下ろした斬撃は大きな真空波となって結界にぶつかる。
「クロさん!?こ、子供達とシスターが巻き込まれて...」
トーマスがそう言った瞬間、結界が壊れた。
そして、現れたのは金ピカに光輝く建物だった。そして、修道服を着ていたのはトロールに変わり、子供達はゴブリンに変わっていた。
「トーマス、現実はこんなものだ。自分が見えるもの全てを本物だと思うな。」
トーマスは今起きた事実に呆気を取られたのであった。
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