第13話、アソコじゃ、ア・ソ・コ。
俺、クロムとトーマスは只今絶賛混乱中です。
「息子?息子ってシャルル、お前17歳って言ってたよな?何歳で産んだの?意味がわからん。えっ?えっ?何、何が起きたの?」
「ク、ク、クロさん。お、落ち着いて下さいよ。聞き間違いですよ。そう、僕達の聞き間違えなんですよ。」
「だ、だよなぁ~。いくら何でもギルドマスターを産むとなると遺伝子レベルでおかしいもんな~。聞き間違いなら良かったわ~!フー、一旦落ち着こうぜ。うん、落ち着こう。」
俺とトーマスは聞き間違いと言うことにして深呼吸をし、落ち着かせようとしたのだが、
「いやいや、間違いはないぞ。
「ん?シャルルくん...。君だけ時空が違うのかな?それとも違うお星様から来られたのかな?はたまた、シャルル君はお熱でもあるのではないのかな?
これはイカン!イカンぞぉぉ!!!助手のトーマスよ!お前の機関車でシャルル君の頭に効く薬を買ってきておくれ!!」
「はい!先生!!って誰が助手だ!!そして誰が機○車トーマスだ!!いい加減にしろ!!お前なんて色々な大人に怒られてしまえ!!」
俺達がやいのやいの言ってるとシズクがムッとした顔で近づいて来て、
「静かに...。他のお客様に迷惑...。」
と言ってきたのでとりあえず黙って席に座った。
何だかシズクに言われると弱いのはなぜだろう?そんな事を考えてる俺にヨシヨシと頭を撫でてくるからまた何も言えなくなる。
一体どうしたと言うのか?
俺はいつの間にかロリコンになってしまったのか!?いや、違う!断じて違う!
俺の頭がますます混乱した。
その様子をシャルルはニタニタとにやけながら、
「シズクもこの依頼受けた方が良いと思うわよね?」
シャルルはいきなりとんでもない話をシズクに振った。
「...うん。クロムなら大丈夫。」
「いやいや、シズクさん。この依頼Sランクって聞いてました?」
「うん。...聞いてた。」
「俺、万年Cランクなんだけど...。」
「...だから何?大丈夫。クロムなら出来る。」
シズクさんやーい!そんな自信に満ちた顔で言わないでくれよぉ~。断れないやないかぁい!!
「はぁ...、分かった。依頼をやろう。」
「クロムならそう言うと思った。」
半ば強制的にさせたように思うんだが...。と言いたかったがシズクが嬉しそうな顔をしているので俺は口を閉じた。
「よぉ~し、決まりだの。楽しくなりそうだぁ。シズク、クロちゃんを説得してくれてありがとう!!」
「ん。...お安い御用。」とシズクはシャルルに向かってブイサインをした。
この二人はいつの間にこんなに仲良くなったんだ?もしかして俺は嵌められているのかも。と不安は隠せなかった。
「依頼はするとして大体の目星は付いているのか?」
「そんなのない。あったらSランクの依頼にはなっていないだろ?」
「そりゃそうか。」
「でも、こういう時って大体の相場でいく場所があるだろ?あそこじゃ。ア・ソ・コ!!」
意味ありげにシャルルは言う。
俺は考えるが思い付くのは一つしか出なかった。
「あ~。アソコって娼館か?確かに情報は集まりそうだもんな。」
俺の気のない返答にシャルルが声を荒げる。
「このバカタレがぁ!!そんなところのハズがないだろうがぁ!!シズクも何か言ってやれ!!」
「...この...バカタレ。」
切なそうな声でシズクが言う。なぜか俺の胸はズキンと傷んだ。
「悪い...。冗談だ。シズク、安心してくれ。俺はそういう所には行ったことがない。いや、むしろ行けない。なんせ万年金欠だからな!だっははははぁ!!」
「クロさん。...それはただダサいです。」
「や、やかましい!!そんな事より、アソコの話だったな。まあ、おおよそ西地区の事だろう?」
「ほう、正解じゃ。」
「そ、その西地区って何があるんですか!?」
トーマスが唾を飲み込み聞いてくる。
俺は頭を働かせる。
「西地区はスラム街になっている。職を失ったごろつきや孤児達が大勢暮らしているんだ。その中で怪しいのは...教会だな。」
「ほう...。何故じゃ?」
「考えたらわかるだろ。スラムはあんなに荒れているのに教会だけは物凄く綺麗なままだ。そんなのはあり得ない。何かあると思うんだがな。それに教会ならなぜ孤児を野放しにしているんだ?色々な観点から見ても怪しいと思うのが普通だろ。」
「流石...、西地区ってだけでそこまで考えるか。クロちゃんならと思っていたがこんなに早く。」
「いやいや、見れば分かると思うぞ。」
「ん?どういう意味じゃ?」
「それは行ってからのお楽しみってことで。それにしてもシャルル。お前の話し方ちょいちょい変わるのは何でだ?気になるんだが...。」
「気になるか...。それは、おいおい話すよ。それよりも早速行くかの?」
「そうだな。とっとと片付けて誰かさんが食べた分を支払わきゃな!!誰かさんが!」
俺は高く積まれたお皿を眺めながら強めに言った。
しかし、もうシャルルとトーマスの姿はそこにはなかった。
「クロム...。みんなもう行ったよ。」
「ったく...。」
俺は頭を掻きながら席を立つ。
「クロム...。頑張ってね。」
「ああ。行ってくる。美味しいご飯を作って待っててくれ。」
「うん。待ってるね!」
シズクの飛びきり可愛い笑顔に見送られ俺は外へ出たのだった。
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