第11話、シャルル・シャルルネ。



俺とトーマスはシャルルとシズクのメイド服で盛り上がってる食堂を通り抜け俺の部屋に入った。


「はぁ~。あんなに混んでるとは思わなかったぜ。トーマス、悪いな。もう少し食堂が落ち着くまで俺の部屋で我慢してくれ。」


「ぼ、僕はいいんですけど...。この人はどうすればいいんですか?」


...この人?

俺は振り返りトーマスの方を見るとメイド服のチンチクリン、もといシャルルがそこに居た。


「お前、何してんの?俺の部屋は女入室禁止なんだけど。」


「はぁ?馬鹿言ってるんじゃないわよ!シズクが言ってたわよ!朝が弱いからクロムは毎日、私が起こしているの。だって。

これのどこが女性入室禁止なのよ!毎日シズクが入ってるじゃない。

シズクも成人してるから立派な女性よ!

それとも何?私は入っちゃダメな訳?どうなのよ!?答えなさいよ!」


うわぁ...。

出たよ、苦手なんだよね。捲し立てるワガママなお嬢様系って...。

ってか何で付いてきてるの?って言いたいが、言葉を慎重に選ばないとこの手のタイプは1言うと10になって返ってくる。

俺は思考を加速させて考える。そして出た言葉がこれだ。


「お前、うるさいよ。

勝手に人の部屋に入ってきてギャーギャーとわめき散らかして何なの?

俺はお前みたいなワガママなチンチクリンを召喚した覚えはないんだが。」


俺の辞書に自重やら思いやりやらの言葉はない。言いたい事はハッキリ言う。

これが俺、クロムなのだ。

俺がハッキリと言ってやったら、シャルルは唖然とした顔になった。まさか、反論されるとは思ってなかったのだろう。


「ぐぬぬぬ...。私にそんな態度とって言い訳?」


「どんな態度取ろうが、俺の勝手だろう?お前にそんな事を言われる筋合いはない。」


俺はバシッと言ってやる。

こういう輩はハッキリ言わないと分からないからな。


「あっそ...。ならいいわ。あんた達、この宿から今すぐ荷物まとめて出ていきなさい。」


「はっ?お前にそんな権限なんかないだろ。」


「権限ならあるわよ。私がこの宿『クロ猫亭』のオーナーだもの。」


「いやいや...。苦し紛れだからって嘘は行けないな~。」


「嘘じゃないわ。嘘だと思ったらアンネに聞いてごらん。」


アンネ...。俺は誰だ?と一瞬なったがすぐに思い出した。アンネとはおかみさんの名前だ!?

マジか...。マジなのか...?

俺は半信半疑でシャルルを見る。

するとシャルルはため息をして、収納魔法アイテムボックスから1枚の紙を取り出した。


「これが証拠だから、読んでみなさい。」


俺はシャルルから紙を受け取って読んだ。


「どれどれ...。この『クロ猫亭』の開業を認める。オーナーをシャルル・シャルルネとし、店舗責任者はアンネとする。領主、ラインアップ・ストロプ。.....だと?」


印も本物の印が入っている。魔法のインクなので間違いはない。


「ほ、本当にここのオーナー...?」


「だからそう言ってるじゃない。それでどうするの?」


「どう...とは?」


俺は冷や汗が止まらない。


「私の話を聞かないなら、ここを追い出すけどって話。」


俺は直ぐ様飛んで土下座をする。

これぞ最終奥義にして至高のほまれ。

『ジャンピング土下座』だ。


「す、すいませんでした~!わたくしめはあなた様がオーナーとは露知らず失礼な態度を取ってしまい不徳の致すところ。

わたくしめで良ければ話を聞きますのでどうかここを追い出すのは止めて欲しい...です!!」


トーマスは思った。

調子をこいて暴言を吐き続けて生きていくと年端も行かない女性に躊躇なく土下座をするような大人になってしまうんだと。

僕はそうならないと冷ややかにクロムを見て心に誓うトーマスであった。


「聞いてくれるなら別にいいんだ。私もテンションがあがってつい暴走気味に喋ってしまったからな。とりあえず、クロム。頭を上げて椅子に座ってくれないかな?」


「いやいや、わたしごときシャルル様に顔を上げるなんて滅相もない。」


「話が進まないから頭を上げて椅子に座われって言ってんの?マジで追い出すよ。」


「はい、すいません。本当にすいません。」


俺は追い出されたくない一心で、シャルルの言うことを聞き頭を上げて椅子に座った。


「私をクロムのパーティーに入れて欲しいんだ。」


「え?」


俺は驚いた。

っていうか何故に俺なんだ。

冒険者は他にいるだろう...。俺よりもランクの高い冒険者なんていくらでも。


「何で俺のパーティーなんだ...ですか?

他に冒険者は沢山いる...居ますのに。」


「使えないなら敬語は使わなくていいから。聞き取りづらいし面倒だし。普通にしてくれて構わないわ。

私が何でクロム、あなたのパーティーに入りたいかの理由は今は言えない。時が来たらちゃんと説明をする。それは約束するわ。」


「そもそも、何で俺の名前を知っていたんだ?シズクから聞いてたとしても顔と名前は一致しないだろう?」


「その質問も今は答えられない。ごめん。」


「シャルル、自分の事は言えないけど、パーティーに入れてくれって?どう考えても怪しすぎるだろ。」


「それは...。」


すると部屋の扉が静かに開く。そこに現れたのはシズクだった。一体いつから話を聞いていたのか。


「クロム...。シャルルをパーティーに入れて上げて。この人はいい人。わたしには分かる...。

ダメ...?」


シズクは泣きそうな顔で俺を見てくる。

シズクにその顔をされると何故か俺の心は締め付けられる。

俺はふぅ~。っと一息つく。


「...分かったよ。シャルル、シズクに感謝しろよ。シズクが言わなきゃ絶対断ってたんだからな。」


俺がシャルルのパーティー入りを認めると、シャルルの顔はパァッと明るくなった。


「うん!シズク、ありがとう!シズクの代わりにちゃんとクロちゃんを見張ってるからね!」


え!?

なにそれ...。


「...シャルル。それクロムが居る前で言っちゃダメ。」


「大丈夫、クロちゃんは鈍感だから。どうせ聞こえてないって。」


いやいや、バッチリ聞こえてるんだけど...。

シズクがシャルルに頼んだのか...。

はぁ...。と肩を落とす俺にトーマスが、

「ドンマイ。」何て言ってきやがった。

イラッとした俺はとりあえずトーマスの頭をこづいた。



運命に導かれた3人が出会った事でこの物語は大きく話が進む。...かも知れない。

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