第9話、冒険者舐めとんのか?舐めるのは飴ちゃんだけにしとき。



クロムとトーマスがギルドで決闘騒ぎを起こしている同時刻。

宿屋の裏手にて謎の女、シャルルは宿屋の女将アンネとその娘シズクと会っていた。


「アンネ。シズクには私から説明するから大丈夫。」


「は、はい。」


アンネは不安そうにしているのを見てシャルルはアンネに念話テレパシーを飛ばす。


『アンネ、下手な事は言わないから大丈夫。

安心して。

ただ私の話に合わせてくれないか?』

と言うとアンネはコクりと頷いた。

シャルルは目線をシズク戻し、


「私の名前はシャルル・シャルルネ。

貴女のお母さんアンネの....姪ね。」


「...お母さんの姪ですか?」


「そう...。

シズクとは従姉妹になるわね。よろしく。」


「....宜しくお願いします。」


「それにしても....。」


シャルルはシズクの顔を覗き込みまじまじと見つめる。


「本当にそっくりね。私とは性格は全く違うけど...。なるほど...。そういうことか...。

うんうん。シズクは恋をしているんだね。」


「!?」

急に初対面の人に言い当てられてシズクは赤面した。

赤面して恥ずかしそうにしているシズクを横目にシャルルは言葉を続けた。


相手・・は...。ああ...。やっぱり...。

そうなるんだね...。」


急にシャルルの顔が曇り難しいく考えている。

その様子を見たアンネは急いで止めに入った。


「ちょちょっと、シャルル様!!これ以上その話は...。」


アンネに言われてシャルルはハッとし、話を反らした。


「ま、まあ、私は魔導士だからな。人をよく観察・・すると大体分かるのさ。なっ!アンネ!!」


「えっ!?あ、はい!!そうなのよ~!

シャルル様は魔眼・・の持ち主ですもんね~!!」


「ば、ばか!!アンネ何を言ってくれちゃってんの!!」


「はっ!?す、すいません!!フォローするつもりが~!!」


シャルルとアンネは、やいのやいの言い合ってると、


「フフフ。2人共面白い...。

お母さんがこんなに焦ってるの初めて見た。」


シズクが楽しそうに笑っていた。

2人はさっき言ってた事を気にしていない様子のシズクを見てホッと胸を撫で下ろした。


「コホン...。と、とにかくこれからも宜しくと言いたい。」


「...うん。...よろしくお願いします。シャルル様...。」


「あ~...。様は止めて欲しいな。

他人行儀っぽいし、シャルルで良い。敬語も禁止ね。分かった?シズク。」


「...わかった。シャルル。それにしてもシャルルはお姫様か何かなの?お母さんが様って言うから。」


「うーん。そこら辺の事はおいおい教えるわ。説明するのも少し大変だし。いい?」


「...うん。」


「よし、それではアンネ。

とりあえずしばらくこの街に滞在するんだが、お世話になっていいか?

シズクとも色々な話をしたいしな。それに...な。」


「もちろんです。それでは一番いい部屋を...。」


「いや、私も宿を手伝うぞ。

だから寝床もアンネとシズクと一緒でいい。」


「いやいや。そ、それは申し訳が...。」


「後、アンネ。

私に様はいらないし、敬語もダメ。シャルルと呼べ。

私はアンネの事、義理母ママとでも呼ぶから。ちなみにこれは命令ね。」


「そ、そんな~。無理ですよ!!!貴女はこの国の...。」

とアンネが口を滑らそうとした瞬間。

「アンネ!!」

シャルルの大きな一声でアンネの言葉が止まる。

「そんな訳でヨロシクな!!」


陽気に振る舞うシャルルとは裏腹に諦めた様子のアンネは、

「もう好きにしてください...。」

と一言呟いてトボトボと宿に戻るのであった。


「シズク。私たちも中に入ろう。色々仕事教えてくれないか?」


「うん。わかった。」


2人もアンネに続いて宿に入るのだった。




▼▼▼▼▼▼▼▼



決闘が終わり、ギルドマスターの好意で最上級のステーキとドギマギウオッチングを堪能した俺とトーマスはギルドを出て俺がお世話になっている宿に向かっていた。


「そういえば、トーマスが泊まっている宿はどこなんだ?一緒に行動するなら同じ宿の方がよくないか?」


俺は何気なくトーマスに聞いた。


「そうですね。じゃ、僕もクロさんと同じ宿にお世話になろうと思うので今僕が使っている宿に荷物を取ってきていいですか?」


「近くなら俺も付き合うぞ。」


「良いですか?それなら行きましょう。そんなにここから離れてないんで。」


俺は駆け出し冒険者のトーマスが泊まってる宿なんて、どうせ小さくて皆で雑魚寝するような宿で寝泊まりしているんだろうと考えていたのだが。


「ここですね。」


「おい...。」


「じゃあ、僕は荷物持ってきます。」


「おぉぉぉい!!」


「はい?そんな大声出してどうしました?なんかありましたか?」


「なんかありましたか?じゃねぇぇよ!!

何なんだ、この豪勢な宿はよぉ!?

お前駆け出しだよな?何こんな貴族様御用達の宿に泊まってやがるんだ!?

あぁ!?冒険者舐めとんのか?」


「いやいや、クロさん落ち着いてください。

僕は全然舐めてないですって。

両親もお祖父ちゃんも冒険者になるなら最初は高い宿に泊まってモチベーション上げた方がいいと言ってたんですよ。

それでここが一番高かったからここにしたんですよ。」


「それが舐めてる証拠だろうがよ!!

どこにそんな冒険者が居るんだ?」


「え...。結構この宿の中には冒険者の方が居るんですけど...。」


「駆け出し冒険者は居ないだろ!?」


「あ!?確かに...。」


「はぁ~。お前は常識から教えないとダメだな...。まあいいわ。待ってるから荷物を持ってこいよ。」


「は、はい!」


しばらくすると荷物を両手と背中に持ったトーマスが出てきた。

その姿は追われて夜逃げする人に見える。


「お前...。荷物ありすぎだろ...。」


「これでもだいぶ減らしたんですけどね...。」


「はぁ~。まあいい。行くか...。

荷物持ってやるよ。」


「あ、ありがとうございます。」


俺はトーマスから荷物を受け取って歩き出した。ここで一つ疑問が浮かぶ。


「トーマス。ちなみにあそこの宿の値段ていくらだ?」


「えっ?あそこは1泊500ゴールド位ですね。」


「ご、ご、ごひゃくーー!!」


俺は高級宿の金額の高さに絶句してぶっ倒れた。

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