第8話、ギルドマスター。
「問答無用。」
トーマスは尻餅ついて後退りしているガンスに剣を振り抜いた。
ズガッ!!
剣先はガンスの鼻先を掠め、股間付近の地面に突き刺さった。
ガンスは白目を剥いて失禁し気絶した。
「パーティーの最後の一人、ガンス気絶した事で勝者はトーマス!!」
ギルドマスターは高らかにトーマスの勝利を宣言した。
会場はブーイングの嵐になり暴動が起きるんじゃないかと思ったが、
「ハイ!祭りは終了だよぉぉ!!解散してぇ~。解散しない奴は僕が直々に相手するよ!」
と、ギルドマスターが言うと皆静かに解散していった。
このギルドマスターはどんだけ強いんだよ...。
「クロム君、トーマス君。ちょっと良いかな?話があるんだけどさ。」
話!?
ムリムリムリムリ!!
只でさえドギマギウオッチングまで時間ないのにギルドマスターの話って絶対に長いじゃん。
何て断ろうか。
「え?いやぁ~。
この後はちょっと厳しいって言うか、
何と言いますか...あれが、用事があると言いますか...。」
「歯切れが悪いね。何?僕と話すの嫌なの?」
ギルドマスターは急に威圧的になる。
「そうじゃないんだって...。
なんて言って言いかな。」
俺が言い訳を考えていると後ろからトーマスが、
「ギルドマスター。この人、特に用事はないですよ。これから始まるドギマギウオッチング観たいだけなんですから。」
と淡々と俺の予定をばらした。
トーマスゥゥゥ!!
何故裏切るぅぅ!?
俺悪いことなにもしてないよねぇ!?
君にはしてないよね!?
俺はトーマスに文句を言おうとするとギルドマスターが、
「へー...。僕の話よりドギマギウオッチングが大事なんだ。」
ギルドマスターの冷たい声が耳に刺さる。
俺は冷や汗が止まらない。
悪いことしてないのに何故こんなに攻められてるのか?
「女優のふうかちゃん、可愛いもんねー。」
ん?
何故、今日の出番の女優さんを知っているんだ?おかしくね!?
「今日は君達のお陰でいっぱい勝たせてもらったから僕の部屋で一緒にドギマギウオッチング見ながらご飯食べたかっただけなんだけどなー。
嫌なのか~!ショックだな~!落ち込むな~!」
「へ?そうなの?」
俺は呆気に取られる。
「そうだよ!
僕もドギマギウオッチングのファンなんだ!
だから一緒に見たかったのに。
しくしく...。」
明らかに嘘泣きじゃねーか!とは言いたかったが言えなかった。
うん...。
ギルドマスターだし...。
「ギルドマスター!!一緒に見ましょ!!
ドギマギウオッチング!!」
「いいの?」
「はい!だから泣かないで下さい!!」
「やったぁぁ!!
じゃあ、早く僕の部屋に行こう!!
あっ!?
リリー!!極楽亭から特上ステーキを5つデリバリー頼んで!リリーも一緒に食べよ~!」
「はぁぁい!頼んだらすぐに伺いますね!」
リリーは嬉しそうに注文に行った。
そして俺達はギルド2階のギルドマスターの部屋に着いた。
広くて綺麗に整理されている。
「そこに座ってよ~!」
とソファーに促されて俺とトーマスはソファーに座る。そして目の前のソファーにギルドマスターが座った。
「さてと...。」
眼光が鋭くなり、ギルドマスターの雰囲気が急に変わる。
「急に呼び止めてすまないね。話はすぐ終わるから安心して。」
安心してって言うならその威嚇するようなオーラをしまってもらいたいものだが...。
話の腰を折るのも時間が勿体ないので俺は黙る。トーマスは萎縮してるけど。
「トーマス君。」
「は、はい!!」
「この前冒険者登録をして荷物持ちをしてた君が、今日ダンジョンから出てきたら急に強くなったけど何か違法な事はしてないかな?」
「し、してないです!」
「では、何で急に強くなったのかな?聞かせて欲しいんだけど。」
「実は...。」
トーマスはダンジョンであった事を細かくマスターに話した。
助けられた後、
10階層のボスまで一人で戦わさせられた事。
ピンチになっても後ろからアドバイスしかしない事。
そして、ドギマギウオッチングの時間までに間に合うように後ろから威圧してきた事など助けた1件よりも酷い事の方が多々ありましたとさ。
「クロム君...。君もアイツらと変わらなくないか?」
ヤバい...。これは何か罰せられるとか...。
最悪賭けたお金全没収とか...。
嫌だぁぁ!!
俺は最悪の事を想像し頭を抱える。
「でも、違うんです!クロさんはアイツらとは違うんです!!」
ト、トーマス?
「クロさんは僕が強くなるために必要な事を教えてくれました。やり方は厳しいけど僕にあったやり方をしてくれたんだと思います。」
いい子や...。
アンタ、いい子過ぎ...。
俺はただ楽をしようなんて安直な考えだっただけに良心が痛くなるわ...。
「そっか。トーマス君がいいならいいんだ。
まあ、トーマス君の急激に強くなった秘密が分かって一安心したよ。」
「それってどういう意味何ですか?」
トーマスが聞く。
それ聞いちゃダメなヤツだって...。
絶対面倒なことに巻き込まれるから...。
「うん。最近このトーキーの街に強くなるって薬が蔓延してるんだよね。」
「強くなるならいいんじゃないんですか?」
とトーマスが言うのを俺は、
「そんな都合のいい薬があるわけないだろ。
どんな薬でも必ず副作用があるもんだ。
あらかたギルドマスターはその薬をトーマスが使ったんじゃないかなと疑ったんだろ?」
「ご名答。しかし、違ったけどね。
いや、違うと分かってて聞いたと言った方がいいいかな。
クロム君なら何かを知っているんじゃないかと思ってさ。」
「残念ながら俺は何にも知らないよ。」
「そうみたいだね。残念。
まぁ、何か分かったら教えて欲しい。
間違っても自分達で解決しようとはしないで欲しい。バックには多くの貴族達が絡んでそうだからね。」
「そんな面倒事はこっちから願い下げだ。
俺達は平和に生きいたいからな。」
「平和...ねぇ...。」
ギルドマスターは首を傾げながらニヤケ顔で呟く。
「クロさん...。さっきダンジョンで僕に地獄を見せて、ガンス達にも地獄を見せたばっかりなんですけど...。」
「...あれは平和の為の第一歩なのだ。」
「言ってることめちゃくちゃだろぉ!」
「あははは!トーマス君ナイスツッコミ!
やっぱり、君達最高だわ!!」
何故かギルドマスターに気に入られ、その後は特上ステーキに舌鼓しながらドギマギウオッチングを見て2人は冒険者ギルドを後にしたのだった。
そう言えば、ギルドマスターの名前聞くの忘れた...。
まあ、いいっか。
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