第7話、問答無用。
そして1時間後、ギルドの闘技場にてガンスのパーティーとトーマスは対峙していた。
ギャラリーは超満員だ。
ガンス達はヘラヘラ笑っているが、対象にトーマスは足を震わせていた。
このままじゃ不味いか...。
アイツ緊張で足を震わせてやがる。
このままではまずいぞ。
俺の全財産が...。
俺はダンジョンでの魔石を換金して出来た金と手持ちの全額をトーマスに賭けた。
トーマスに賭けたのは俺と俺の話にそそのかされた受付嬢のリリーと何故か自信満々なギルドマスターの3人だけ。
ガンスのパーティーの配当金は1.2倍、トーマスの配当金は50倍となっていた。
ギャラリー達は今日の飲み代を確実に稼げると思っているだろうが、俺は命を賭けている。
トーマスがもし負ければ、俺は今日は野宿確定。夕食は無し。まさに背水の陣。
「トーマス!!死んでも勝て!死ぬんなら勝ってから死ねぇぇ!!」
「おぉぉい!
絶対、後で殴ってやる...。」
俺の言葉にツッコミを入れたことでトーマスは足の震えが収まり落ち着いた様子を見せた。
「これなら大丈夫だな。」
俺はトーマスの勝ちを確信した。
「準備はいいかな?
これよりガンスのパーティーとトーマスの決闘を始めるよ~。」
両者達は刃が潰してある鉄剣を握り構える。
その様子にギャラリーの盛り上がりは最高潮に達した所でギルドマスターが手を上げる。
「それでは...。始め!!」
「ヒャッハァァー!!」
合図と共にガンスのパーティーの剣士2人がトーマスに向かって行く。
その様子を見たトーマスはフーッと一息ついて動き出した。
剣士達はトーマスを挟む様に動き出して同時に剣を振った。
しかし、目の良いトーマスは2人の剣筋を見極めて躱わす。
そして高速の剣技で鉄剣を弾き飛ばし、
無防備になった一人の剣士のみぞおちを剣の柄で殴った。
殴られた剣士はお腹を抑えたままその場にうずくまった。
そしてもう一人の剣士には顎に刃先をかすめるように討ち意識を刈った。
その様子を見た中級以下の冒険者は一瞬の出来事に何が起きたか分からなかった。
もちろんガンス達もだった。
「な、な、何をしたぁぁ!?こんなのインチキだぁぁ!!」
ガンスは大きな声で吠える。
「いやいやガンスく~ん。
ギルドマスターは上機嫌でガンスに言う。
まるでギルドマスターの顔には新しいおもちゃ見つけた時の子供のような顔をしていた。
実際、童顔だから子供にしか見えないけどな。
ゴゴゴゴゴゴ......。
「クロムく~ん!
今失礼な事を考えてなかったぁ~??」
ギルドマスターの鋭い視線が突き刺さる。
「何にも考えておりません!はい!
私はなぁんにも考えていないのであります!!」
「そ、ならいいけど。」
なんだこのギルドマスターは!?
心でも読めるのか!?
しかも、ゴゴゴゴォォ...って変なオーラ出てた。
焦って慣れない敬語が出てきてしまったぞ...。
ま、まあトーマスの試合に集中しよ。
べ、別にギルドマスターの事、怖くなんかないんだからね...。マジで!
俺はトーマスの決闘の続きに集中した。
まあ、勝ちは確定したようなものだがな。
「く、くそ!どうなってやがる!?
あんな荷物持ちのゴミがこんな強いハズがないのに...。
お前ら!!ドンドンと魔法を打ち込め!!」
「は、はい!!」
ガンスのパーティーの魔法使い2人はそれぞれ詠唱を開始した。
ダラダラと詠唱している隙に倒してしまえばいいのだが、今回俺はトーマスに特別な剣技を教えていた。
スラッシュと言う剣のスキルの応用の技で、俺のオリジナルの技である。
トーマスは剣士のセンスとそれを盗む目と再現力があったから用意に覚えることが出来たが、並みの人間ならこんな短期間には覚えられてはないだろうな。
「ファイヤーボール!!」
「ファイヤーボール!!」
2人の魔法使いは炎系の初級魔法であるファイヤーボールをトーマスに向かって放った。
「キャッハァー!!燃えて死んでしまえぇ!!トーマスゥゥ!!」
ガンスの汚い言葉が中に舞う。
が次の瞬間ガンスは開いた口が塞がらなくなった。
トーマスは飛んでくるバスケットボール位の炎の玉避けるでもなく当たる寸前まで、剣を構えて待っていた。
「
ボソッと言った後に、無数の炎の玉が次々と真っ二つに切れてトーマスの後ろに飛んでいった。
「なぁぁにぃぃ!!」
ガンス達だけじゃなくギャラリー達も驚いていた。
「トーマス!!早く終わらせろよ!!
あんまりちんたらしてるとドギマギウオッチング始まってしまう!
いいのか?
歌っちゃうぞ!この野郎!
はうどぅゆぅどぅ~♪
ご機嫌いかが?
ご機嫌斜めを真っ直ぐに~♪
(真っ直ぐにしたら怒り狂ってるよ!)※ノリツッコミ
お昼休みはドギマギウオッチング~♪
あっちでもこっちでもいい
俺がそう言って歌ってるとトーマスは呆れた顔で、
「はぁ~。ったく...。クロさんは...。
ハイハイ!すぐ終わらせますから待っててください!
こっちは変に注目されて恥ずかしいんだから...。
こうなってしまったら仕方ないけど...。
と言うわけで、ガンス...。」
「な、ななな何だ!!」
今のトーマスの剣技を見たガンスはかなりビビっていた。
「もう終わらしたいから俺から行くけど覚悟は出来た?出来なくても行くけど...。」
「ちょちょっと待ってくれ!!」
ガンスは両手を上げて待ったのポーズをしているが、トーマスは無視をしてガンスに近づく。
魔法使い達は杖を投げて降参のポーズをしていた。
「ははは話せば、わわわかる....。」
「いやいや、アンタは分からないでしょ?
分かっていたらあんな場所で置いてかないよね?」
「あああ、あれは手違いで。」
「問答無用。」
トーマスは尻餅ついて後退りしているガンスに剣を振り抜いた。
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