第86話夢幻迷宮
人は眠りにつくとき、夢を見る。
その夢を自分の好きなストーリーで見れるとしたらどうだろうか?
幻影城に来る客にその客が望むような夢を見せるサービスがあるというのだ。
サキュバスの得意な魔法に夢を操り、人を快楽に誘うものがある。
淫魔王リリムはサキュバスたちに命じて、幻影城に来る客にその魔法を使い、望むような夢を見せているのだ。
客たちはあるいは姫となり多くのものにかしずかれる夢をみたり、英雄となり皆に尊敬される夢を望むものなどその夢は多様を極める。
ある時から、その夢のなかに倒したはずの獣魔王ジャバウォックがあらわれ、夢のなかの客たちを食べ始めたのだ。
夢の中で死んだものたちはもとの世界では廃人となってしまうというのだ。
精神だけが死んでしまうというのだ。
討伐を試みた淫魔王リリムであったが返り討ちにあい、多くのサキュバスたちが命を落としたという。
「あのジャバウォックが支配する世界で自由に動けたのは私だけだったのよね」
咲夜ちゃんは言う。
「それは咲夜がこの世界の出身ではないからだと思われます。どうやらジャバウォックの夢幻迷宮ではこの世界出身のものは本来の力がだせないようなのです」
淫魔王リリムは言う。
異世界転生したママはもうこの世界の人間だから、残念ながらジャバウォックにはかなわないのよね。せっかく本体は倒したんだけどね。
この言葉は僕の心の中だけに聞こえるものだ。
「さすがに私だけではジャバウォックは倒せなかったんだよね」
咲夜ちゃんは言う。
「二つ目の条件は獣魔王ジャバウォックが潜むという
淫魔王リリムはまた豊かな黒髪の頭をさげる。
「ということはその夢幻迷宮にいけるのは私と雪、蓮それに燐太郎というわけか」
Jカップロケットおっぱいの前で腕を組み、麗華は言う。
「じゃあ、私はいけないのか。残念だな」
イザールは頭の後ろで両手をくみ、そう言った。
「で、どうするのだ燐太郎?」
狼犬顔の蓮が訊く。
その答えは一つしかない。
「わかりました。その条件を引き受けましょう。アルタイル騎士団への
僕は言う。
放っておけばその獣魔王ジャバウォックは夢の中で罪のない人々を殺しつづけるのだろう。
そのような凶悪な存在を放っておくわけにはいかない。
「そういうと思ったわ、さすがは私の燐太郎」
麗華はうれしそうだ。
「そうだろう、僕たちアルタイル騎士団は正義の味方だからね」
麗華の十八番のセリフを僕は言った。
淫魔王リリムの二つ目の条件を受け入れた僕たちは
そこには複雑怪奇な魔法陣が刻まれたベッドがいくつかおかれていた。
そこに寝転がり、淫魔王リリムの転移魔法で精神だけを夢幻迷宮に送るのだ。
僕はベッドのうちの一つに寝転がる。
麗華と雪と咲夜ちゃんが同じベッドにねころがろうとする。
「ちょっと鷹峰、あんた体がでかいんだから違うベッドにいきなさいよ」
咲夜ちゃんが麗華を押し退けようとする。
さすがの運動神経で麗華はそれをかわす。
二人のすきをついて雪は僕のお腹の上にのる。
「こら、雪、ずるいわよ」
そう言い、麗華はご自慢の巨乳を僕におしつけ、だきつく。
うふっ、やっぱり麗華のおっぱいは特別な柔らかさだ。
「ううんっ」
淫魔王リリムは咳払いする。
「たぶんだけど、一人一つのベッドに横たわるのが正解なのではないかな」
別のベッドに寝転がる蓮が言う。
たしかに彼の言う通り、ベッドの数は人数分ある。
「咲夜ちゃん知っていて燐君に抱きつこうとしたの?」
雪は言い、パラケススの杖の先端を咲夜ちゃんにむける。
うわっこんなところで
「雪さん、どうか落ち着いてください」
淫魔王リリムはそっと手のひらを雪の手に重ねる。
そうすると不思議と雪はもとの冷静さを取り戻す。
「あなたがそう言うなら……」
雪は杖をローブの内側におさめる。
おかしいな、リリムは一言もしゃべっていないのに。
リリムと雪も念話が使えるからそれでお互い話したのかな。
内容が気になるところだが、いまはそれを詮索しているところではない。
おのおのベッドに横になるとすぐに儀式が始まる。
「たそがれより暗きもの。いにしえの賢者。冥界の王子。我に力を与えよ。三千万世界の扉を開き、我が友を夢幻の世界に旅だたせよ」
淫魔王リリムが低い音律の呪文を唱える。
彼女の言葉を聞き終わったあと、強烈な眠気が襲う。
だめだ、これにはあらがえない。
まぶたが勝手に閉じて、意識がどこかへと飛んだ。
気がつくと僕は砂漠にいた。
細かい砂が頬にあたり、不快である。
視界はほぼ茶色で五十メートルほどさきにピラミッドのような建物が見える。
おそらくだけどあれが夢幻迷宮だろう。
「そう、その通りよ、燐太郎。あれが獣魔王ジャバウォックが潜むという
その声は咲夜ちゃんだ。
彼女はまたスリットの深いチャイナドレスを着ている。乳袋がいい感じにエロい。
「どうやら装備品はそのままもってこれたようね」
吹きすさぶ風に目を細目ながら雪が言う。
「そのようだ。それにこちらではもとの顔にもどっている」
秀麗な顔の蓮が言う。
どうやら精神だけの存在になり、夢の世界に入った彼の顔はもとの女性顔負けの秀麗なものにもどっている。
あれっ、麗華がいないぞ。
背の高い彼女ならすぐに見つかるはずなのに。
あっいたいた。
砂をまとった風の中から走ってくる人物がいる。
うんっ、おかしいぞ。
その人物はかなり小柄なのだ。
身長は僕のお腹ぐらいだろう。
懸命にかけてきて、僕に抱きついた。
「さびしかったよ、燐君!!」
その人物は金髪で青い瞳のとびっきりかわいい少女であった。
年のころは六、七歳ぐらいだろうか。
青いワンピースを着ていて腰に白いエプロンを巻きつけている。頭には黒いリボンをつけている。
「アリスちゃん!!」
僕はその少女をそう呼んだ。
僕の口は勝手にこのとびっきりにかわいらしい幼女のことをアリスと呼んでいた。
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