第83話アルファルドの提案
パーシバルの街の総督代行であるハンナさんは僕たちアルタイル騎士団のために二つの建物を宿舎として提供してくれた。
大きな風呂もあるかなり立派な建物であった。
さっそく僕たちはその建物にはいる。
咲夜ちゃんには雪やウェズンが同行するなら建物内部なら自由に動いて良いと許可した。
せまい馬車に閉じ込めていたから、ほんの少しだけど行動制限を解除した。
「ありがとう、燐太郎。さっそくお風呂にはいらせてもらうわね」
咲夜ちゃんは言う。
僕も咲夜ちゃんたちとお風呂にいきたかったが、行かないといけない場所ができてしまったのだ。
パーシバルに到着してすぐにハンナさんは僕に一通の手紙を渡した。
それは漆黒の狼の紋様で封印されたものだった。
たしかその家紋は先の宰相であったスターク家のものであった。たしかダイアウルフと呼ばれる家紋だ。
それはアルファルドさんの父親が使っていた紋章である。
ということは差出人はアルファルドさんに違いない。
封を開けてみるとやはりアルファルドさんからのものであった。
手紙の内容は内密で話したいことがあるので街はずれのカント寺院まで来てほしいとのことであった。
僕は騎士団のみんなと一度わかれ、そのカント寺院に向かった。
アヴィオールがついてきたそうにしていたが、なんとか説得して、僕はその待ち合わせ場所に向かう。
アヴィオールにはまたこの埋め合わせをしないといけないな。
その寺院は街の北側にあり、海風を感じる場所にたてられていた。
カント寺院には光の女神ルキナがまつられている。
アルファルドさんの双子の妹であるアンドロメダさんはこの光の女神の信徒で
アンドロメダは守銭王シャイロックが街を占領した時にあの扉と同化することを交換条件に街の住人たちへの危害を加えないことを約束させた。
アンドロメダが聖女と呼ばれる出来事の一つである。
僕がそのカント寺院の内部である礼拝所にはいると二人の人物が出迎えてくれた。
一人は美貌のメイドてあるアルファルドさん。
もう一人は燕尾服を着た人物で銀色の縁の眼鏡をかけている。
燕尾服をきているがその胸の豊な膨らみと形のいいお尻はどうやら隠しようがないようだ。
その人物はアンドロメダであった。
「よく来てくれました、アルタイル卿」
深々とアルファルドさんは頭をさげる。
次にアンドロメダさんも頭を下げる。
どうしたんだろう、こんなにあらたまって。
「ハンナ総督代行からうかがいました。次の攻略目標がモードレッドに決まったとか」
アルファルドさんが言う。
「そうなんだ。それでアルファルドさんにはここで僕たちアルタイル騎士団とともに来てほしいんだ」
僕は言う。
パーシバルに立ち寄る目的の一つがアルファルドさんと合流することだ。
「それはもちろんです。喜んでお供いたします。ですが、その前に私たちのことでお話がございます」
アルファルドさんが言う。
どうやら手紙の本題のようだ。
「うん、わかったよ」
僕は答える。
「端的にもうしますと私たちをアルタイル卿の家臣にしていただきたいのです」
今度はアンドロメダが口を開く。
家臣?
それはどういうことだろう。
「アルタイル卿には現在有能にして勇猛な方々がお仲間として多数いらっしゃいます。ですが、あなた様にはその手駒となる家臣は一人もいないのではないですか?」
アンドロメダさんは言う。
たしかに麗香や雪、イザールは大切で信頼できる仲間だ。アヴィオールやウェズンも頼めば大概のことを聞いてくれると思うが、家臣というのとはちょっと違うかな。とくにアヴィオールなんかはハーレムの一人だしね。
「これからはあなた様は騎士団をはじめとした集団のリーダーとして行動されると思われます。その際に必然的にあなた様の手足となる家臣が必要だと思うのです」
次にアルファルドさんが言う。
家臣か、そんなことは考えたこともなかったな。
たしかになにか物事をすすめるのに人材というのは必要だ。
けど、僕が家臣なんかをもつようになるなんて。
アルファルドさんは戦闘においても家事全般においてもかなり優秀だ。
アンドロメダさんについては未知数だけど。
「ここからがさらに本題なのですが、聞いていただけますか?」
アルファルドさんは話を続ける。
僕は頷いた。
その話とはなんだろうか?
「ここからは内密にお願いします」
これはアンドロメダさんだ。
僕はさらに頷く。
「それはあなた様にこのアヴァロン王国の新しい王になっていただきたいのです。知っての通り私たちの父スターク公は無実の罪で先代ドナルペイン王に殺害されました」
アルファルドさんは言う。
「私どもは現在の王家に恨みこそあれ、恩はございません。できればこのまま滅んでほしいのです。しかしながら王国の住民はそれとは別なのです。民衆を救う戦いには喜んで参加したいのです」
アルファルドさんはさらに言う。
アルファルドさんの父親は宰相でありながら跡目争いにまきこまれ、反逆の罪にとわれて処刑されたときいたことがある。
「しかしながらリオネル王女個人には私アルファルドは恩がございます。あの方まで滅ぼすのはしのびないのです」
ふっと小さなため息をアルファルドさんはつく。
「なので私たちをアルタイル卿の家臣にしていただき、この先すべての街を解放したあかつきにはあなた様にこの国を統治していただきたいのです。リオネル王女をあなたさまの妃にして現在の王家を滅ぼし、新しい王家を創設していただきたいのです」
続きはアンドロメダさんがいう。
それはとんでもない提案だ。
僕にリオネル王女と結婚して新しい王家をつくれだって。
そんなのはかんがえたこともなかったよ。
僕は今ある問題に対処するので精一杯なのに。
僕はしばらく考える。
考えても答えなんかでない。
まだ魔王軍に七つの都市のうち四つも支配されたままだというのに。
でも、アルファルドさんの提案を今すぐことわって彼女たちが僕たちのもとをさるのも避けたい。
「あなた方を家臣にするのはねがってもないとです。でも、王家を乗っ取るなんて今は答えなんかだせません。これは考えさせてくださいとしか言えません。その答えは勝手な言い分ですがすべての都市を解放してからでもいいですか?」
僕は言う。
その言葉を聞き、二人はこそこそとなにか話あう。
やっぱり双子だな。
顔もスタイルも鏡に写したようにそっくりだ。
ちがいは左の目の下にほくろがあるのがアルファルドさんで唇の右下にほくろがあるのがアンドロメダさんだ。
「かしこまりました。あなた様にお仕えしながらあなた様が王になっていただけるようにお考えがかわるように我々が行動しましょう」
アルファルドさんが言う。
「アルタイル卿、あなた様は王の器をおもちです。私どもの眼鏡にまちがいはありません。それはかの瑞白元帥もおっしゃっていました。あなた様にお仕えし、いずれは国王となっていただけるように努力いたします」
これはアンドロメダさんだ。
「これからはメイドのアルとお呼び下さい」
アルファルドさんあらため、アルがスカートの両端をつまみ、お辞儀する。
「こらからは執事のアンとお呼び下さい」
アンドロメダことアンは右手をまげて、腹部にあててお辞儀した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます