第71話夜警
三つ目の都市を取り戻してから約半月が過ぎようとしていた。
僕たちアルタイルも騎士団となりかなり大所帯となった。
アルタイル騎士団の主な任務は王都キャメロンの警備と犯罪の取り締まりである。
その仕事の一つに夜警がある。要は夜の見回りである。
その日も僕はイザールとウェズンを伴い、王都の街を歩いていた。
僕は誰もが見てわかるようにアルタイル騎士団の目印を決めた。
それは円形になり自分の尾をかむ蛇であるウロボロスをデザインしたものだ。
ウロボロスの腕章をつけたものはアルタイル騎士団の一員であるものとした。また騎士団の旗も黒地に赤いウロボロスが描かれたものとした。これは美術の才能のある雪と一緒につくった。
後にウロボロスの黒旗と呼ばれるものになる。
けっこうそれは楽しい作業でもあった。僕はこういうものを作るのが好きなのかもしれない。
雪は絵がうまくてうらやましいというと彼女は小さく首を左右にふる。
「私のはね、見たものをそのまま描く能力なの。燐君みたいにストーリーを作れないのよ。お話を作るのって実はすごい才能なのよ。私こそ、いろんな話が書ける燐君がうらやましいわ」
雪は言った。
それは意外な答えだった。
雪は県や国の美術コンクールでいくつもの賞をとっている。そんな彼女が僕のことをうらやましいっていうなんて。
僕のはただただ自分の欲望を妄想にしてつなげただけなものなのに。そんなものをうらやましいと言われるなんて思ってもみなかった。
夜の王都を歩いているとちらりとウェズンは僕の方を見る。
「奇妙な生命反応があります。魔物のような人間のような不思議なものです」
ウェズンは僕に言う。
「それはどこから感じられる」
僕は訊く。
「ここから二百メートルほど先の空き家から感じられます」
ウェズンは答え、ある方向を指差す。
そこは主に貧しい人たちが住む地域で、たてつけの悪い建物が多く並んでいた。
「いってみましょうか、燐さん」
イザールは僕に訊く。
「そうだね、なんか気になるし」
僕は答える。
それは何者であろうか。
王都を脅かす敵でなければいいのだが。
ウェズンの案内で僕たちはかなり古くて、今にも崩れるのではないかというような建物の中に入った。
たしかにウェズンの言うとおり、誰かがいる。
僕の視界のマップにも白い点滅が見える。赤いものなのではないので、敵ではないと思われる。
僕たちは慎重にその建物内部を歩く。
でも、その建物はかなり古いので歩く度にギイギイときしむ。
こんなに音がでたら、バレバレじゃないか。
しかし、その生命反応は動かない。
こんなに音がしていたら、敵対する者なら逃げ出すだろう。
逃げ出さないのでその者は敵ではないと思われる。
ついに僕たちはその人物がいるであろう部屋の扉の前に立つ。
イザールは念のため、短剣の柄に手をかけている。
ウェズンも体が金色に変化している。それは戦闘モードだ。
警戒していて損はないだろう。
僕が扉に耳をあて、中の様子をうかがっていると部屋の中から声がした。
「和久君だろう。入りなよ」
部屋の中からは女性の声がした。
この声、どこかで聞いたことがあるぞ。
どこだったかな。
僕はゆっくりと扉を開ける。
手にはレオナルドの羽ペンが握りしめられている。いつでも不可侵領域を展開できるようにだ。それにウェズンがすぐ横にひかえている。
超高速で可動できる彼女なら万が一も防いでくれるだろう。
扉を開けるとそこには一人の背の高い女性がいた。
彼女は出窓から夜空を眺めている。
空にはきれいな三日月が浮かんでいる。
月を見ていた彼女は振り返る。
僕と視線があう。
彼女はにこりと微笑む。
かなり化粧をしているが僕は彼女のことを知っている。
その背の高い女性は
濃いアイシャドウをした彼女の瞳が印象的だ。
それに着ている服もかなりセクシーだ。
スリットの深いチャイナドレスで胸元はぴったりと布がはりついていて美しい乳袋を形成している。
僕はためしに
レベルは72とかなり高いが戦闘力はあまりない。魔力と素早さはかなり高い。魔力だけみたら雪と同程度だろう。
B92W68H99とスタイルはセクシーでグラマーだ。スポーツをやっていただけあってでるところはバッチリでていてへっこむところはキュッと引き締まっている。
スリットから見える生足が魅了的だ。
きっと近接戦闘よりも精神への攻撃が得意なタイプなのだろう。
しかしながら彼女からは戦意とか敵意は感じられない。
視界の点滅も敵ではない白いものだ。
それにしても
僕もごたぶんにもれず、サキュバスもののゲームやアニメは大好きなので目の前で見ることができて感動している。
よく見ると頭の上の方に巻き角が生えている。
「和久君だろう。見違えたよ、立派になったんだね。すっかり英雄じゃないか。あの時は馬鹿にしてごめんね。見る目がなかったのは私たちだったんだよね」
白い頬を撫で、咲夜は言う。
彼女は雪の幼なじみだ。
生きていたということを知ったらきっと喜ぶだろう。
「私はね、あるかたの使者として王都に帰って来たんだよ」
咲夜は言う。
その巨乳を揺らし、ゆっくりと僕に近づく。
イザールが短剣を抜き、僕の前に立つ。
ウェズンが背中を守ってくれている。
「大丈夫だよ。とってくったりしないから。かわいい顔が台無しだよ」
咲夜をにらみつけているイザールに向かって彼女は言う。
「燐さんには指一本ふれさせないからね」
イザールは言う。
「同じく、マスターは私が守ります」
ウェズンが言う。
「おお怖い怖い。和久君、こっちじゃすごいもてるじゃないか。やっぱり麗華は見る目があったんだね。まあ、いいわ。私は歓楽の街モードレッドを支配する淫魔王リリム様の使いでこの王都にやってきたんだよ。でも、怖い二人がいるから今日は引き上げるよ。雪によろしく言っておいてよ」
そう言うと咲夜は出窓から外に飛び出した。
おいおいここは三階だぞ。
あわてて、僕たち出窓の外を見る。
すでに咲夜の姿は小さくなっていた。
彼女は華麗に屋根から屋根へと飛び移り、遠く彼方へと逃げていった。
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