第68話商都パーシバルの解放
ぬるりとアンドロメダの体が扉からぬけ落ちる。一糸まとわぬ姿で扉から解放された。
それを姉であるアルファルドさんが受け止める。
すぐに瑞白元帥が駆け寄り、自身の羽織を肩にかける。
「あ、ありがとうございます」
吐息まじりにアンドロメダは礼をいってくれた。
彼女はかなり疲弊しているようだ。
すぐにでも休ませてあげないと。
ここにミラがいれば魔法治療を頼めるのだが、ここにいないので仕方ない。
「太陽の女神ヒルメよ、この者にその加護を」
シスター服を着たアラミスが手をかざす。
その白い手が淡く輝く。
「大地母神の信徒ほどではないですが私も治癒の魔法は使えますので」
アラミスは言った。
アラミスの治癒魔法の効果だろうか、アンドロメダはすやすやと寝息をたてている。
「応急処置のようなものなので本格的な治療をすぐに行わないといけませんね。かなり体力を消耗しているようです」
アラミスはそうつけ足す。
「なら早く街に戻ろう」
ポルトスがアンドロメダの体を軽々と抱き上げる。さすがの腕力だ。ポルトスの体格は麗華よりもひとまわり大きい。身長なんか二メートルはあるんじゃないかな。
「そうだな、一度街に戻ろう」
結城涼は言う。
僕もその意見には賛成だ。
とにかくこれでこの街は解放されたのだと思う。
商人の街パーシバルは魔王軍から解放されました。
因果の鎖が切り離され絆の光に照らされました。
視界に文字が並ぶ。
おおっ、やったぞ第三の街の解放に成功したぞ。
レベルが45になった。魔力がかなり上がったぞ。幸運もものすごい勢いで上がっていく。
「パーシバルの街の解放者」「契約の守護者」「扉の管理者」「聖女の友」の称号を得ました。
称号も確実に増えてきているし、これはいい傾向だな。
僕たちは一度エジンバラ城を離れた。
もとの城門前に戻ると見知った人物がいた。
それは百鬼軍の副将であるオグマと火星のマーズであった。
なぜ彼らがここにいるのだろうか?
僕が疑問に思っているとすぐにオグマが答えてくれた。
「これはたまたまですよ。我々は行軍訓練をおこなっていたのですよ。たまたまこの地方の近くまできたので偵察がてら来てみたらすでに魔王軍が壊滅されていたのです」
オグマは言った。
これは彼なりの言い訳なのだろう。
もし天狼族がうまくいかなかったときには僕たちを救出するために百鬼軍を近くまで寄せて来たのだろう。
「そうそうたまたまなんだ、アルタイル卿」
笑顔でマーズが言う。
「ありがとうございます。守銭王シャイロックは倒され、聖女アンドロメダを救出しました」
僕はオグマたちに言った。
「おおっこの方は先の宰相スターク公爵のご令嬢ではないですか」
オグマは言う。
オグマの話では聖女アンドロメダは前の宰相をつとめていたスターク公爵の娘であるというのだ。ということはアルファルドさんもそのスターク公爵の娘ということなのか。
ちらりとアルファルドさんを見ようとしたらすでに僕の真横にたっていた。
「そのことは後で説明いたします。今はご内密に……」
それは僕にだけきこえるようにささやかれた言葉だ。たしか盗賊にそんなスキルがあるとアルタイル邸の書庫にある本で読んだことがある。
暗殺者であるアルファルドさんがこの
宰相の娘が暗殺者になったかはかなり疑問ではあるが。
「しかしこれは後始末のほうが大変ではないかな」
火星のマーズが周囲を見渡す。
そうこの街のいたるところに怪物や魔物の死体が転がっている。
できるだけ早めに処理しないと衛生的によくないだろう。
「まったくやりすぎじゃないかな」
イザールが言う。
ちらりと結城涼たちを見る。
「燐さん、私あんまりあの人たち好きになれないな。力があるからって何も全員殺さなくてもね」
イザールが小声で言う。
「私も燐君のやり方のほうが好きよ。甘ちゃんのところがいいわ」
雪も同意見のようだ。
そうだよな、いくら敵だからといってここまでやらなくても。でも戦いなんだから本当はここまでクールにやらなければいかないんだろうけど。僕にはちょっとつていけないな。
「私は燐太郎についていくよ」
麗華が僕の顔をそのJカップロケットおっぱいにおしつける。
麗華の胸は柔らかくて大きくて温かくて落ち着くや。
僕たちはある建物を宿泊施設として貸してもらった。明日からは百鬼軍と天狼族で協力してあの魔王軍の無数にある死体を処理しなくてはいけない。気が進む話ではないがこれをやらなくては住民たちが安心してもとの生活に戻ることはできない。
それに守銭王シャイロックがためこんだ財宝を街の住民に変換しなくてはいけない。
今回、戦いは結城涼たちがほとんど終わらせてくれていたが事後処理のほうがたいへんだな。
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