第64話黄金の戦士
天狼族と合流した僕たちアルタイルはまずは一路シャーウッドの森を目指した。
東に進路をとり、シャーウッドの森近辺で夜営し、次に北を行き、攻略目標である商都パーシバルを目指す。
これが今回の進軍ルートだ。
シャーウッドの森はリオネル王女に与えられた僕の領地なので誰の許しを得ることなく天狼族を休ませることができる。
僕はここで天狼族とある契約を結んだ。
それはこのシャーウッドの森での天狼族の狩猟採集を認めるというものだった。
それを麗華が文書にしてくれた。
僕はこれに自分のサインとアルタイルの家紋であるウロボロスが
「ありがとう、アルタイル子爵」
天狼族の族長であるロボは礼をいってくれた。遊牧民である彼女らとしても活動域が増えるのは素直に嬉しいのだろう。
「採取された獲物や木の実、薬草なんかの一部はハンナさんの商人ギルドにおろしてほしいんだ。で、これは友好のしるしとしてハンナさんから」
僕はハンナさんから持たされた小さな壺や皮袋を手渡す。それは塩や香辛料であった。
活動域の限られている彼女らにはそれらはかなりの貴重品のようで素直にこれも喜んでくれた。
どうやらハンナさんは天狼族とのつながりを商売の機会につなげようとしているようだ。
ハンナさんは救護院の運営でかなりお世話になっているので、天狼族とのつながりで利益を還元したい。
僕としてもシャーウッドの森を領地としてもらったものの管理するものがいなくて困っていたのでちょうど良かった。
これでチコの実も定期的に入荷させることができる。
その日はロボが仕留めたいのししを天狼族の人たちが手際よくさばき、料理にしてくれた。
さっそくハンナさんからもらった香辛料を使って鍋料理とステーキが作られる。
サバイバル能力にたけたイザールも手伝った。同じ旅をして生きるイザールと天狼族の人たちは気があうようでその日の夜はちょっとした宴会になった。
イザールがランピーという小型のギターのような楽器をかき鳴らし、ロボが天狼族の歌を歌う。
青き狼と白き雌鹿が出会い、我らは産まれた。
ロボは月夜に歌う。
麗華もそれに合わせて歌う。
大柄な麗華は声量もたっぷりで歌がうまい。
僕は思わずその歌にききいってしまった。
天狼族の作ったゲルでその日は休み、翌朝となった。朝御飯には昨日のいのしし料理の残りをあたためなおしたものとシャーウッドの森で採取した果物が並んだ。
シャーウッドの森を出発する前に僕はロボとアヴィオールとで薬草の採取に出た。
ロボは薬草や食べられる茸や木の実の知識が豊富でていねいにそれらを教えてくれた。
「薬草学者」「遊牧民の知識」の称号を獲得しました。
視界に文字が並ぶ。
「この森はいいね。使えるものがいっぱいだよ」
ロボは嬉しげだ。
これらの薬草も彼女らのいい収入源になりそうだ。
ある程度の薬草がとれたので、僕たちは商都パーシバルを目指すことにした。
平原を一路、騎馬の集団は目指す。全員で四十名にも満たない集団であったが皆勇敢な戦士たちだ。心強い限りだ。
天狼族全員がすぐたれた騎手であったため僕はついていくのに必死であった。
名騎手である麗華は涼しい顔でヘラクレスをあやつる。
僕はオリオンにまたがり、どうにかこうにか馬首を並べる。背中にはアヴィオールのあったかいおっぱいを感じる。
雪はイザールの操る馬に乗っている。
運動神経抜群のイザールもまた名騎手であった。
アルファルドさんは例によってメイド服で馬を操る。あの姿で馬を駆るなんて何度みても感嘆する。
「見えてきましたぞ」
瑞白元帥がある方向を指さす。
「そうですね」
ロボが相づちをうつ。
やがて僕の視界に城壁に囲まれた都市が見えてきた。
どうやらそれが商都パーシバルの外壁のようだ。
今のところ敵らしい敵はあらわれないな。
「いや、安心するのはまだ早いぞ」
スピカこと渡辺蓮が言う。
はるか天空の彼方を見つめる。
そこにはキラキラ光る小さな点があった。
それがだんだんと大きくなる。
どうやらこちらに向かって飛来してきているようだ。
「気をつけて、こっちに落ちてくるわ」
麗華がそう言うとオリオンの手綱を握る。
麗華は巧みに足だけでヘラクレスを操り、さらりオリオンを引きその飛来するものが着地するであろうポイントから距離をとる。
僕たちは半月形をとり、そのポイントを取り囲む。
やがてどおんという轟音とともにそれは地面に穴をあけた。
砂煙がはれて、その物の形がはっきり分かる。
それは直径一メートルほどの黄金の球体であった。
太陽の光を反射してキラキラしていてけっこうきれいだ。
球体にはどうやら傷一つない。
その表面はつるつるしている。
「なんなのこれは?」
イザールが僕に訊く。
訊かれても困るな。皆目見当がつかない。
そうだ、ためしに
レベル62、戦闘力はかなり高い。素早さと魔力はたいしたことないな。
でも
そんなのとどう戦えばいいんだ。
僕が頭を悩ませているとその球体の頂点部分が変化した。なんと人の顔があらわれたのだ。その球体の左右がパカリと開き腕が生える。下部分はなんと足が生えた。
ガチャガチャと球体は忙しく変化し、なんと人間の女の子となった。
黄金のスカートをはいた顔立ちはかなりかわいらしい女の子だ。
全身金色だけど。
「侵入者発見。これより目標を排除します」
冷たい機械的な声でその金色の少女は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます