第58話ドワーフ戦士団
職人の街ガヴェインを奪還してから二週間が過ぎようとしていた。
最近はアヴィオールと蔵書を読んだり、ルイザさんのところで子供たちの世話をしたりして過ごしている。
自分なりにかなり充実した生活を送れていると思う。次の奪還作戦に向けて英気を養っている状態だ。
そんな生活をおくっていたところ白兎亭の女将であるハンナさんがある情報をもってきた。
「傷のいえたエスメラルダ様が王都にやって来るらしいよ」
ハンナさんは言った。
ラピュタ城に監禁されていた公女エスメラルダはすっかり体調がよくなり、王女リオネルのもとに表敬訪問されるのだという。
そこでエスメラルダは晴れて王族に復帰されるのだという。
唯一の王族であるリオネル王女にとってもエスメラルダの存在は心強いものになるだろう。
まあ、これは麗華の意見だけれどね。僕も同意見だ。
それにしてもハンナさんの白兎亭は繁盛している。あのチコの実を使った料理がかなり受けているようだ。ひっきりなしに客が来ている。心なしか男性が多い気がするな。
あんまりにも忙しいので救護院にいる女の子何人かを白兎亭で雇えるようになったぐらいだ。
女の子たちも働き口ができて喜んでいる。
「ここの料理はいいね。うまいし、元気になるし」
白髪の男性がエール酒を飲みながら、そう言う。心なしか彼のはだつやも良いような気がする。
さらに三日ほど過ぎ、ついに公女エスメラルダが王都にやって来た。
護衛の役は火星のマーズであった。彼女はドワーフの戦士たちを引き連れていた。
その数は二十名ほど。
数こそ少ないが皆屈強で一騎当千の猛者たちだ。
これも麗華からきいたのだが、このドワーフ戦士団はそのまま百鬼軍に参加するのだと言う。ちょうど近衛団になったミラの部隊の代わりとなる予定だ。
そう言えば最近ミラとは会話していないな。
あのラピュタ城のことは僕はまったく気にしていないんだけどな。どこかで機会をみつけて彼女とはきっちりと話をしたい。
ミラも大事なアルタイルの仲間だから。
アルタイル屋敷で本を読んでいた僕にアルファルドさんが来客を告げた。
僕は身支度し、その来客を出迎える。
その来客とはドワーフのマーズであった。
「こんにちは、アルタイル卿。ガヴェインの街を取り戻してくれたお礼に街の職人たちが
いろいろ作ったんで受け取って欲しいんだ」
ドワーフのマーズは言った。
マーズがもってきたのは
僕には
それは鎧という名であったがデザインはコートのようなものであった。ためしに着てみたが驚くほど軽いもので、着心地は抜群であった。
対魔法防御、物理攻撃防御の効果が付与されているようで、しかも温度調節の機能もあるとのこどだ。
寒い日は暖かくなり、暑い日は涼しくなるのだという便利な代物だ。
この
他にも麗華に
アルタイルの戦力はこれでまた増強されるな。
「あとこれはエスメラルダ様からです」
そう言うとテーブルにマーズは一枚のメダルを置いた。
それは金のメダルで蟹がデザインされていた。
「エスメラルダ様が命を救ってくれたお礼にとのことです。どうぞお受け取りください」
マーズは言う。
これは間違いなく
「マーズさん、いろいろとありがとうございます」
僕は素直に礼を言う。
「いいってことさ。私らを解放してくれたせめてもの恩返しさ。これからは私も瑞白元帥のもとで働くからよろしく頼むよ」
マーズはそう言うと右手を、差し出す。
僕はその手を握りかえす。
職人らしい固い手であったがそれは心強いものでもあった。
アルファルドさんがつくってくれた昼食を食べたあと、また、来客があった。
アヴィオールが本を読んで欲しかったのにと少し機嫌を悪くした。
来客の対応が終わったら本を読んであげるよと彼女に約束するとどうにか機嫌をよくしてくれた。
ロリ顔のアヴィオールは甘えん坊で困ったところがあるがそれもまたかわいいな。
僕はまた応接間におもむく。
今日は来客が多いな。
もしかするとそれだけ、自分が王国にとってそれなりに必要な人間になったという証明かもしれない。もちろん、それは自分だけの力ではない。麗華や雪、イザールたち仲間の力があってこそだ。
応接間に行くとそこにはエルナト財務大臣がソファーに座っていた。
「こんにちは、エルナト大臣」
僕は挨拶する。
「アルタイル卿、君も元気そうで何よりだ」
エルナト大臣はアルファルドさんの紅茶をすする。うむ、なかなかうまいなと言った。
「それでどのようなご用件ですか?」
財務大臣が僕になんのようだろうか。
「ちょうど時間もできたんでね。一度君に話をしておきたいことがあってね」
エルナト財務大臣は言った。
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