第56話蛇の紋章
救護院のあるロベルト邸をあとにした僕とイザールはふたたび、ハンナさんの白兎亭に向かった。
「ちょうどよかったよ、いろいろつくったから味見していってよ」
ハンナさんがチコの実を使った料理をいくつかさっそく用意してくれた。
チコの実をねりこんだクッキー。煮詰めた甘酸っぱいジャム。
そのジャムをチキンのソテーにかけたもの。
さらにタル芋でつくったコロッケのような料理。
僕とイザールはそれで遅い昼食に摂ることにした。
「へえ、この鶏肉、かなり美味しいよ。パサパサしてなくてしっとりしていて。それにこの甘酸っぱいソースが食欲をそそるね」
パクパクとイザールはチキンを食べる。
たしかにイザールの言う通りだ。
さすがハンナさんだ。これだけの料理をすぐにつくってくれるなんて。
「このチコの実っていうのはなかなかいいね。これで栄養価も高いんだろう。うちの看板メニューにくわえようかね」
ハンナさんは言う。
「ええ、ぜひ。このクッキー持って帰ってもいいですか」
僕は訊く。
チコの実のクッキーは甘くて爽やかでかなり美味だった。日持ちもしそうなんでお土産に持って帰ることにした。
「じゃあ、エウリュアレの館にいこうか」
僕はイザールに言い、オリオンを魔女の館に走らせた。
「チコの実、けっこう食べたからもう回復したんじゃないの」
イザールが背中に胸を押し当てながら言う。
チコの実の効能の一つに精力増強がある。事実、もう僕はムラムラしてきている。
この効能はさすがだな。
魔女の館でエウリュアレが僕たちを出迎えてくれた。
雪はここでエウリュアレ秘蔵の魔術書を研究しているのである。
エウリュアレは僕たちをとある部屋に案内してくれた。
なぜかそこには大きなベッドがおかれている。
あと、ソファーにテーブル。
雪はソファーに座り、
「来たのね、燐君」
雪は眼鏡の奥の瞳を笑顔で細める。なんてかわいい笑顔だ。
「それではごゆっくり……」
エウリュアレはテーブルに水差しとコップをおいて退出した。
パタンと雪は魔術書をとじる。
その魔術書には夜の女神メドゥーサの秘術がいくつもかかれているのだという。
「たしか麗香さんの淫紋が変化したのよね」
雪は言う。
そう、快楽指数を千倍にしたらあの淫紋ことメドゥーサの紋様がヤマタノオロチに変化した。ルイザさんもシーサペントに変化した。
「それは
形のいいあごに手をあて、雪は言う。
「なあ、難しい話はもういいだろう」
イザールが言い、僕の手をひく。
「その獣属契約っていうの私もやるよ」
ふふっと笑い、イザールは僕に唇をかさねる。ねっとりと舌をからめる。
ううん、柔らかくて気持ちいいな。
「ああっ、イザールずるいわ」
そう言うと雪が抱きつき、僕の耳をあまがみする。ペロペロと耳たぶや耳孔、首すじをなめていく。
うわっ、ぞくぞくする気持ちよさだ。
僕たちはすぐに裸になり、ベッドに飛び込む。さすがは魔女の館のベッドだ。ふかふかで心地いい。
左にイザール、右に雪が寝転がる。
さて、どちらからいただこうか。
それにしてもここは天国か。左右にタイプの違う美少女がいる。
僕は思わず、ごくりと生つばをのみ込む。
雪もイザールも頬を紅潮させている。
それでは、雪からお願いしようかな。
数時間前にルイザさんと一戦交えたというのに僕はまだまだ元気いっぱいだ。
すでに僕の腕の中で雪が悲鳴に近いあえぎ声をあげている。
千倍だからね、僕の体にも快感が駆け巡る。
それにしても雪とイザールが仲がいいとはいえ、同時に僕とベッドを共にするとは思わなかった。
雪はゼエゼエと荒い息をしている。
燐君、今日はすごいわをとても気持ちいい。もう君だけのものして……。
雪の心の声が聞こえる。
僕も絶頂に達して雪の細い体にたっぷりと欲望の液を流し込んだ。
はー気持ちいい。やはり、千倍はすごい。
頭がぼんやりする。
すぐに雪の淫紋が変化する。
それは二本の巨大な牙を持つ蛇であった。
神話の魔獣ヨルムンガンドである。
これより真田雪の別名はデネブ・ヨルムンガンドとなるのである。
「こんどは私よ」
イザールが口づけする。あのチコの実のクッキーをポリポリと噛み砕く。それを僕の口に流し込む。やっぱりイザールの口は美味しいな。
イザールはそのプリンとしたお尻を僕にむける。
すぐに僕たち一つになる。
イザールの体も素晴らしい。
踊り子をしているだけあって、このひきしまった体は格別だ。すべすべとした肌もさわり心地抜群だ。
僕はイザールの細い腰をつかみ、先ほど出したばかりなのに、ふたたび大量の体液を流し込む。
どくどくと出される度に僕の体は震えるほどの快感が襲う。
「燐さん、しゅごいよ。こんなの知ったらあんたから離れられないよ」
呂律もまわらないイザールが涙ながらに言う。よほど気持ちよかったのか体がけいれんしている。
イザールのお尻の淫紋も淡く輝く。
それは人の顔と腕を持つ蛇の姿をしている。
人に文明を教えた神なる蛇ククルカンである。
イザールはこれよりククルカン男爵夫人と呼ばれるようになる。
もちろん、名付け親は僕だ。
イザールと雪は僕の左右の腕を枕にそれぞれ寝息をたてている。
「どうもお疲れ様です。燐太郎様。お二人との絆をさらに深められてなによりです」
いつの間にか部屋にはいってきたエウリュアレが赤い瞳で僕を見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます