第54話百鬼軍の帰還

お風呂で疲労と快感に包まれた僕たちはふらつきながら、僕にあてがわれた部屋にもどった。天蓋つきのけっこう豪華で広いベッドに倒れ込む。

僕と麗華はその柔らかなベッドでお互いだきあいながら、深い眠りについた。

麗華の柔らかくて大きな体にだかれていると安心して眠れる。

文字通り、泥のようにねむり起きたときは昼すぎであった。

戦闘の疲れとお風呂であんなことをしたから仕方ないよね。しかし、千倍の快感はすごい。翌日もその余韻が残っている。


僕たちは服をきがえ、その宿屋の一階に向かう。そこはロビーになっていて、すでに雪とイザールが談笑していた。

僕たちアルタイルのメンバーの中でもこの二人は特別仲がいい。

「昨晩はお楽しみだったようですね」

雪がジト目でいう。

イザールもニヤニヤと僕の顔を見る。

そうか、あの麗華の淫紋は雪がつけたのだ。

昨晩、僕がどういうことをするかはお見通しだということだ。

そしてそれは仲のいいイザールにもしれわたっているようだ。

まあ、二人とも関係者だからいいか。


僕たちはアルファルドさんが用意した朝昼兼用の食事をとった。

すでに食事を終えていた雪とイザールは紅茶を飲んでいる。

「このカップもかわいいわね。この街ではこういう焼き物なんかもつくってるのね」

カラフルなカップを眺めながら、雪は言った。


ガラハットの街の事後処理は七人の小人セブンズドワーフにまかせて、百鬼軍は一時、王都に帰還することになった。

すでに瑞白元帥とミラは帰還の準備をしているという。

「あんたら待ちだったんだけどなかなか起きてこないからさ」

イザールが頭の後ろに両手をあて、そう言った。


面目ない。いろいろ疲れたもので。


「じゃ、じゃあ私たちもご飯を食べたら行きましょうか」

麗華が珍しくあわてて、言った。

そういう姿もかわいいな。


アルファルドさんの手料理を食べ終わった僕たちはさっそく百鬼軍の駐屯地に向かった。

すでにほぼ出発準備は終わっている。

ミラの姿をみかけたので、話かけようと思ったが彼女はそそくさと自分の部隊のところに戻った。

避けられてるのかな。

この世界の人は僕に基本的に好意をもつとステンノーは言っていたが、初めと違いあのラピュタ城の出来事以来、ミラはあからさまに僕を避けているような気がするな。

王都に戻ったらきちっと話をしたい。

ミラは大事なアルタイルの仲間なのだから。


王都に向かう旅にはガラハットの街を代表してドワーフのマーズが同行することになった。彼女はいまだに魔獣マンドラゴラから受けたダメージが完全に回復していないエスメラルダの名代を勤めることになった。

エスメラルダは王位継承権はないものの王族の血をひくということでガラハットの街の人々から姫様と呼ばれて慕われていた。

またエスメラルダはわけへだてない公平な性格をしていたので、街の人間皆に好かれていた。

彼女の生存を伝えたらきっとリオネル王女も喜んでくれるだろう。


僕たちアルタイルと合流した百鬼軍は一路進路を西にとり、王都をめざす。

あのシャーウッドの森の近くで夜営することになった。

僕は余った時間を利用して、あのチコの実を採取する。

チコの実は森のそこらじゅうに生えていて採取は簡単なものだった。すぐに革袋いっぱいにとることができた。

「これが燐君の言っていたチコの実なのね」

雪は言う。

部隊の指揮で忙しい麗華の代わりに護衛と称してここに着いてきた。

赤いチコの実を一つ食べるとかりかりと噛んだ。

クチャクチャと噛んだそれを僕の口に流し込む。

うーん、甘酸っぱくて美味しい。

こんな性癖まで話してしまうなんて、イザールは意外とおしゃべりだな。

雪はその舌で僕の口のまわりについたチコの実をなめとる。

「こういうのが好きだなんて燐君は変態さんね」

そう言いながらも雪は僕の口に舌を入れて絡めてくる。唾液をごくりと飲む。

君も十分変態だよ。

「このチコの実がそんなにすごい精力剤になるなんてね」

雪が言う。

「そう、効果は実証済みだよ」

イザールの体で体験済みだ。

これを持ち帰っていろいろ試したいことがあるんだよな。


「麗華さんのメドゥーサの紋章が変化したのね。これは研究の余地があるわね。王都に戻ったらエウリュアレの館で調べさせてもらおうかしら」

雪が形のいい顎に手をあてて、言う。

その後、また僕の唇をすう。

うーん、雪の唇も気持ちいいな。

「こんどは私にもそのウロボロスの力ためしてね」

雪はうふふっと妖艶な笑みを浮かべた。


翌日、僕たちは王都に向けて出発した。

すでに熟練度はかなりあがっている百鬼軍の行軍速度は素晴らしいものだ。

夕刻前には王都キャメロンに到着した。

先行の兵により、僕たちの帰還は伝えられている。

王門でルイザさん、ハンナさん、救護院の子供たちがでむかえてくれた。

「お帰りなさい!!」

「よくご無事で!!」

口々に彼らは叫び、僕たちを、でむかえてくれた。

ルイザさんは僕をだきしめるとまたそのマシュマロのようなおっぱいにおしつける。

ふわふわで柔らかいや。

「騎士さまはやっぱり私たちの英雄だよ」

涙を流し、喜んでくれた。

ルイザさんは僕たちの留守中、救護院の子供たちや病人たちの面倒をよくみてくれていたので感謝しかない。

ルイザさんたちがいるところが僕たちの帰るところになろうとしている。


百鬼軍の兵士たちはここで一時解散となる。王都に家があるものはそのまま家族のもとにかえり、帰るところのないものは王宮の空いている部屋やハンナが用意した屋敷で戦いで疲れた体を休めることになった。


僕たちアルタイルの主要メンバーは王宮にいるリオネル王女に謁見を申し出る。


玉座に腰かけるリオネル王女にガラハットの街奪還の成功を報告する。

報告を受け、彼女は涙した。

エウリュアレがハンカチを差し出すとそれで涙をぬぐう。


ガラハットの街奪還の功績により、真田雪は星騎士の地位を得た。これ以降彼女はデネブ卿と呼ばれることになる。

オグマ、麗華、ミラは王国軍少将の地位につくこととなった。またオグマは瑞白元帥の副官となった。

さらにミラと彼女の部隊はそのまま近衛団に昇格することになった。

神官ミラはラインスロット将軍の後を継ぎ、近衛団長となった。

イザールとルイザさんには財務大臣エルナトの推挙で男爵夫人バロネスの地位が与えられた。

そして僕には子爵の爵位とシャーウッドの森を領地として与えることになった。

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