第46話瑞白元帥の過去
百鬼軍が駐屯するのはガヴェインの街とケイの街の中間地点であった。
海岸の村ドーバー付近であるとのことであった。
アヴィオールの背中にのり、僕たちはその駐屯地に向かう。
「竜騎士」の称号を獲得しました。
オーディンの義眼に文字が浮かぶ。
竜騎士か、これはかっこいいな。
太陽が真上からやや西にかたむき始めたころ、僕たちはその駐屯地に到着できた。
空の旅もなかなか疲れる。
アヴィオールの背中に捕まるのもたいへんだ。鞍かなにかつけた方がいいだろう。
ふらつきながら、僕はアヴィオールからおりる。
危なく転びそうになるのをイザールが支えてくれる。
イザールはあの洞窟の一件以来、僕に献身的だ。優しくて、かわいいし、いい娘だな。
雪も続いて降りたのでアヴィオールは変身をとく。
元のロリ巨乳に戻る。
僕たちを見つけた麗華は猛ダッシュで駆け寄り、抱きつく。
僕の体を抱きかかえる。
僕の顔をそのJカップロケットおっぱいにこすりつける。
ああっ、この柔らかさにかなうものはないな。
そしてブチューと盛大に僕にキスをする。
はーこの唇の感触いいな。この世のものとは思えない感触だ。キスだけでこんなに気持ちいいとは。これを感度三千倍にするとどうなるのか。俄然、興味がわいてくる。
でも、今はこんなことをしている場合ではない。
あの洞窟で見つけた爆撃機のことを話さなければ。
「れ、麗華。君とこのままハグしていたいんだけど瑞白さんに話たいことがあるんだ」
と僕は言う。
「話たいことってなに?」
麗華はようやく唇を離す。
名残惜しそうだ。僕もだけどね。
「あのラピュタ要塞の攻略の糸口がつかめそうなんだ」
僕の言葉を聞いた麗華は華やかに微笑む。
「すごいじゃない。さすがは私の燐太郎」
麗華に褒められると素直に嬉しい。
僕たちは麗華の案内で瑞白元帥の幕舎に向かう。
そこには瑞白元帥とオグマ、ミラがいた。
イザールは疲労のため別の幕舎で休みたいというのでそうさせた。彼女にはかなりお世話になった。いろいろとね。
なので、今はゆっくり休んで欲しい。
その幕舎には僕と麗華、雪、アヴィオールが加わる。
「ご無事でなによりです、燐太郎殿」
瑞白元帥は僕の肩をたたく。
「よくぞご無事で」
オグマが敬礼する。右の拳を心臓のところにあてるのがアヴァロン王国式の敬礼だ。
「ええ、イザールたちのおかげで戻ってこれました。それで、ですね瑞白元帥。僕はそのシャーウッドの森であるものを見つけたのです」
僕は言う。
「それは戦略爆撃機回龍のことですな」
瑞白元帥は言う。
どういうことだ。
瑞白元帥はあの爆撃機のことを知っているというのか。
出会ったときから不思議な人物であると思っていたがよりいっそう深まった。
「拙者もその話を燐太郎殿たちにしようと思っていたのですが、ならば話は早い」
瑞白元帥は白いあご髭をなでる。
「瑞白元帥、あなたは何者ですか?」
麗華が僕の言おうとしたことを代弁する。
ここにいる皆がそれに聞き耳をたてている。
「拙者も燐太郎殿と同じように異世界からこちらにやって来たのです。あの回龍に乗って約五十年前に」
瑞白元帥は語る。
今から約五十年前、瑞白元帥はあの爆撃機に乗り、アヴァロン王国にやって来た、もとの名前を
彼は太平洋戦争時の空軍のパイロットでフランス領インドネシアに向けて飛行している最中に激しい嵐に遭遇し、僚機たちからはぐれ、気がつけばこのアヴァロン王国に漂流していたのだという。
それ以来、五十年ちかくさまざまな冒険に参加し、剣豪明けの明星と呼ばれるまでになったのだという。
「それじゃあ、瑞白元帥は時代はちがうけど僕たちと同じ世界から来たということですか」
僕は訊く。
瑞白元帥は静かに頷く。
この剣豪は僕たちの先輩だったのか。だから、和装を好んで着ていたのか。
「それはちょっと違うわね。私たちの過去のその時代の歴史には空軍は存在しない。考えられるのは私たちと似たような世界の過去から来たということね」
麗華が冷静に分析する。
それでは瑞白元帥は僕たちの世界とは異なる平行異世界の過去からこの異世界アヴァロンにやって来たというのか。
ややこしい話だな。
でも、それは今では些細な問題だ。
目の前の瑞白元帥こそがあの爆撃機のパイロットだったのだ。
「ところで燐太郎殿、麗華殿。貴殿たちの世界は拙者のいた世界とよく似たところときく。未来はどのような形になっていましたか?」
瑞白元帥は僕たちにきく。
彼は平行異世界とはいえ、太平洋戦争の時代からやって来た。きっと未来のことが気になるのだろう。
「それなりに平和ですよ。明日のご飯のことを気にせずにいいですし、命の危険もそれほど感じないですし」
それは率直な感想だ。
いろいろと問題はあると思うけど戦争の時代よりは僕はいいと思う。
暇な時にゲームをしたり、アニメをみたり、好きなイラストを描いたりできる。
客観的に見てもそれほど悪い時代ではないと思う。
それも瑞白元帥のような人たちの苦労によってできた世界なのだろう。
「私のような見た目の女子がなんの問題もなく、燐太郎と同じ学校に通える、そんな時代です」
麗華は言った。
たしかに麗華の金髪に青い瞳の女子と同じ高校にかよえるなんて瑞白元帥の時代の人からしたらかなり考えにくいことだろう。
瑞白元帥はそれを聞いてただ、にこやかに微笑むだけであった。
僕たちはその日は休み、翌朝、日の出と共にその爆撃機回龍の様子を見に行くこたになった。
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