第45話仲間たちとの再会
深い眠りから覚めた僕の体力はほぼ元通りになっていた。
「ちょうど良かった。もうすぐタル芋が焼けるよ」
イザールが焚き火を見ながら言う。
木の棒の先に丸い芋が刺されている。
香ばしい香りが僕の鼻腔をくすぐる。
お腹が空いてきたな。
イザールは僕が寝ている間にタル芋という里芋によく似た芋を採取してくれていたのだ。
彼女がいてくれて本当に助かる。
「これなんかもういけるかな」
棒のひとつをとり、ふーふーと息を吹きかけながらそれを僕に手渡す。
芋は素朴な味だったが、ほくほくとして美味しい。
「美味しいや。ありがとう、イザール」
僕は彼女に礼を言う。
「いいってことさ。あの気持ちよさを味あわせてくれたんだ、お安いご用さ」
イザールは言う。
なり行きとはいえ、雪に続きイザールとも関係を結んでしまった。
「あ、あのことは麗華には……」
完全に身勝手な要望だが、麗華にばれたら洒落にならない気がする。
「わかってるよ。本妻さんには内緒だろう。たまにでいいから、またあれを味あわせてくれたらいいよ」
イザールは愛嬌のあるウインクをする。
かわいい仕草だ。
「それにさ、知ってるかい。夜の女神の教義では一夫多妻も多夫一妻も同性婚もありなんだよ。たしか、妻か夫は七人まで大丈夫だったかな」
それはなんとご都合主義な教えなんだ。
メドゥーサは僕の味方だと言っていたが、こういうことも含まれるのかな。
麗華にルイザさん、雪にイザール。後三人までいけるな。
「燐さん、顔がにやけてるよ」
イザールは言い、また焼けたタル芋をふーふーして渡してくれる。
ある程度お腹が膨れた僕にイザールはある提案をした。
「この森をでる前にさ、私、あるものを見つけたんだ。私にはそれがなんなのかわからないからさ、燐さんに見てもらおうと思って」
イザールは言う。
それは僕たちが寝泊まりしたこの洞窟の奥にあるという。
ようやく、普通に動けるようになった僕はイザールの案内でその場所に向かった。
「光よ」
イザールは短く、光の魔法を使う。
雪にその魔法を教えてもらったらしい。
アルタイルの仲間たちとの仲でイザールと雪は友人関係にあるという。
麗華はちょっとこわいので近寄りがたいのだという。
アヴィオールは妹のような存在でこの三人が一番仲がいいのだとイザールは言った。
アルタイルにもそんな人間関係があるのかと新鮮であった。
「ミラは真面目なんだけど、とっつきにくいのよね」
ともつけたした。
ほどなくして、その場所にたどり着いた。
魔法の光に照らされたそれを見て、僕は思わず驚愕の声をあげた。
それは巨大な鉄の体をした飛行機であった。
その羽にはこれまた巨大なプロペラが左右に二つずつ、さらに船頭にも一つ。合計五つのプロペラがつけられている。
戦闘機、いや、爆撃機といったところか。
ところどころ、錆びていて、クモの巣がはられている。
かなり古い機体ではないかと思われる。
僕の記憶がたしかなら太平洋戦争の時代に使われていたものと思われる。
このような飛行機をまさか異世界アヴァロンでお目にかかれるとは夢にも思っていなかった。
もし、この爆撃機が今なお使えるなら天空要塞ラピュタの攻略の糸口になりえる。
「これは僕たちの世界で空を飛んでいた機械だよ」
冷たい鉄の飛行機の体をさわりながら、僕は言う。
「やっぱり、そうじゃないかと思ったんだ。星見の婆さんが寝物語に五十年前に鉄の鳥がこの国にやって来たと教えてくれたんだ」
イザールは言う。
その星見のお婆さんの言葉が真実ならこの爆撃機は僕たちと同じように異世界にやって来たのだ。なら、これを操縦していた人もこの世界のどこかにいるはずだ。
雲をつかむような話だが、その操縦をしていた人も見つけなくては。
五十年も前だというし、生きていてくれればいいけどね。
あのラピュタは地上にいる敵には無敵の強さを誇るが、さらなる上空から攻めれば、きっと攻略できるはずだ。
燐君、燐君。聞こえる。聞こえたら返事をしてちょうだい。
突如、頭の中で雪の声がする。
幻聴かなと思ったがどうやらそうではないようだ。
「頭の中に雪の声がするよ。きっと魔法で話しかけてるんだよ」
イザールが言う。
どうやら、その声はイザールにも聞こえているようだ。
聞こえるよ、雪。
僕は心の中で答える。
良かった。やっとつながったわ。これはね、メドゥーサの魔法のひとつで
ちょっと待っていてね。
燐君とイザールの魔力を検知したわ。
洞窟の中にいるのね。
お願い、外で待っていてくれるかしら。
僕たちは雪の言う通り、洞窟の外で彼女らを待った。
ほどなくして
その背中には赤いローブを着た雪が乗っている。
アヴィオールは僕の目の前に着陸する。
雪は滑るようにアヴィオールの背中から降りる。
アヴィオールも変身をとき、あのロリ巨乳の姿になる。
二人は僕を見つけると飛びつくようにして抱きついた。
「燐君、生きていて良かった」
雪がそのかわいい顔に涙を流す。
「ご主人さま。もうあんな命令はださないで下さい。ご主人さまがいなくなればアヴィオールは生きる意味を見失います」
アヴィオールも大粒の涙をながし、僕の体をぎゅっと抱きしめる。
「ごめんよ、二人とも」
僕は手をのばし、二人の体を抱きしめる。
アヴィオールはまた飛竜の姿にもどり、僕たちはその背中に乗り、瑞白元帥率いる百鬼軍が駐屯する地へと向かった。
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