第43話イザールの献身

その大鷹は羽を一つ羽ばたかせ、空中に僕を連れ去ろうとしている。

僕が魔王軍の捕虜になればどうなるか。

考えるのも恐ろしい。

あの憎しみに燃える羽柴マリアの顔が頭をよぎる。


真田雪は意識を失い、地面に倒れたままだ。

麗華は膝をついたまま動けないでいる。彼女もまた体力をすべてロトの光を防ぐのに使ってしまったのだ。

「燐太朗‼️燐太朗‼️」

僕の名前をただただ叫ぶだけだ。

アヴィオールは僕の命令で天空へ逃がしてしまった。

僕を助けられる者はもういないと思われた。

もちろん、僕は体をピクリとも動かせないほど疲労している。


「燐さん‼️」

その声はイザールのものだった。

短く叫び、馬を走らせるとアルファルドさんから短剣つきのロープをかり、大鷹の真下につける。

投げ縄の要領で大鷹にロープを投げる。

見事ロープは大鷹の首に絡みつく。

踊り子イザールは身軽にロープをつたい、一息で大鷹の背中に飛び乗る。

脅威的な身体能力だ。

そう言えば、旅芸人の彼女は軽業も得意だといっていたが、これほどとは。


その間にも大鷹は羽ばたき、戦場から遠ざかる。すでに麗華たちの姿はちいさな点となっている。


「こんちくしょう‼️」

イザールは短剣を振り上げ、大鷹に突き立てる。だが、その羽は硬くて、短剣を弾き返す。イザールの腕力ではいかんせんどうにもならない。

何度も何度も短剣を突き立てるが、その切っ先は大鷹の肉を傷つけられない。


その間にも大鷹は何度も羽ばたき、戦場から離れていく。もう、麗華たちの姿を見ることができない。

すでに戦場であった砂岩地帯は過ぎ去り、眼下には緑深い森が広がっている。

そこはたしかシャーウッドの森と呼ばれる所だ。その森は王都キャメロンの東側、ガヴェインの街との中間に位置している。

おそらくだが、イザールが飛び乗ったことにより、大鷹は方向感覚を失ったものと考えられる。


「ならば」

イザールは大鷹の頭部に移動するとその目玉に短剣を突き刺す。

見事に短剣は深々と眼球に突き刺さる。

ギャウワッと大鷹は悲痛な声をあげる。

「もう一つ」

続け様に残る眼球にイザールは短剣を突き刺す。

さらに大鷹は悲鳴をあげ、完全に視力を失った大鷹はシャーウッドの森めがけて墜落する。


視界の青空が一気に緑の葉っぱだらけになる。ちいさな枝が僕の体を傷つける。

僕はその衝撃で意識を完全に失った。



どれくらい眠ったのだろうか。

さっぱり見当がつかない。

パチパチと火花が散る音がする。

近くで焚き火がたかれている。

火のぬくもりを感じる。

さらに体に柔らかな感触と人のぬくもりを感じる。

起き上がろうとするが、体はまだ言うことをきかない。

どうにか、まぶただけが開けることができた。

目を覚ますとイザールの愛嬌ある丸顔が目に入る。


「良かった。目を開けてくれた」

ほっとした様子でイザールは言う。

褐色の彼女の肌が見える。

ピンク色の乳首がかわいらしい。

どうやら彼女は素っ裸のようだ。僕を力いっぱい抱きしめる。

ほんのりとイザールの体温が伝わり、癒される。


どうやら、彼女は疲労で体温が下がった僕を素肌で温めてくれていたようだ。

それにイザールの肌はすべすべとして気持ちいい。


ありがとうと言いたかったがあーとかうーとかしか言えない。

言葉を発することもできないほど、僕は疲労しているようだ。

あのロトの光を防ぐのにそれほどの生命力が必要だったということか。

レベルの低い僕が無理をして高度な魔術を使用した報いのようだ。


「無理しちゃだめよ」

そう言い、イザールは水筒の水を口にふくむ。

口いっぱいにふくんだ水を口移しで僕に飲ませる。

イザールの体温で温められた水が口にはいり、喉を流れる。

乾いていた僕はそれをむさぼるように飲んだ。

「まだ飲みたい?」

イザールは訊く。

頷くこともできない僕はまばたきで答える。

そうするとまた口に水をふくみ、飲ませてくれた。

イザールの唇と舌は柔らかで甘くて心地よい。彼女に抱きしめられると安心できるな。


今までイザールは旅の仲間程度で正直、僕の中での順位はそれほど高くなかった。でも弱りきった僕を献身的に温めてくれる姿を見て、どこか特別な感情が芽生えはじめた。


イザールはちいさな赤い木の実を口にいれるとそれをモグモグと噛み砕く。

「これはね、チコの実といって体力回復に効果があるんだよ」

と言った。

旅芸人であるイザールはどうやらサバイバルの知識も豊富のようだ。


チコの実。

体力回復、滋養強壮に効果あり。食用に適しています。

オーディンの義眼に文字が浮かぶ。

称号「植物学者」をスキルとして自動発動したようだ。

便利な眼鏡だな。


チコの実を噛み砕いたイザールはそれを僕に飲ませる。

味は甘酸っぱくて、けっこう美味しい。

イザールの口で作られた特製のジュースだ。

どうやら、僕は新しい性癖に目覚めたかもしれない。

「もっと飲みたい?」

イザールは訊く。

僕はまた、まばたきで答える。

イザールは嫌な顔ひとつせずにチコの実を噛み砕いて飲ませてくれた。


ある程度、飲ませてもらったら、再び眠気がやってきたので、僕は眠りについた。

眠りについた僕をイザールは再び、自らの肌で温めてくれた。



しばらく、眠ると僕は起き上がれるぐらいには回復した。

イザールは僕を抱きしめながら、すやすやと眠っている。

かわいらしい寝顔だな。

麗華のように絶世の美少女とは言いがたいけど、こうやって横で眠るイザールの顔もまた癖になるかわいらしさだ。

がまんできない性欲がむくむくと膨れてきたので、僕は眠っているイザールに唇を重ねた。ゆっくり舌をねじいれる。

イザールの舌はそれはそれは柔らかくて気持ちいい。


「ふん、目がしゃめちゃの」

僕に舌を入れられているのでイザールの滑舌がおかしい。

でも、イザールは嫌な顔ひとつせずに僕の舌を受け入れている。

前にステンノーが言っていたけど、この世界の人物は基本的に僕に好意をもっているという。ルイザさんもそうだった。

イザールは自ら舌をからめだし、僕の唾液をのみこむ。

「チコの実がひいたのね。ひょっちもカチカチね」

舌をからめながらなので、やはり滑舌は悪い。

そっと手をのばし、僕の下半身の分身をつかむ。冷たい指の感触が心地よい。


イザールは口を僕から離す。

唾液が僕たちの間につたう。

それを指でからめとり、のみこんだ。

「こんなにガチガチになって、つらいでしょう。私が楽にしてあげるね」

そう言うとイザールは顔を下半身にずらす。

一息で僕の下半身の一物を飲み込むと口で吸いだした。

ああっ、これは素晴らしい感触だ。

イザールは舌と口で僕のものを強く吸う。さらに手で激しくしごく。

その気持ちいい刺激に耐えられなくなった僕はイザールのちいさな口に目一杯射精した。

どくどくと流れる白い快感の粘液をイザールはすべて飲み込んでくれた。

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