第32話王都への帰還

ほら、もう朝よ。起きて。

誰だろう、女の人の声がするな。

ゆっくりとまぶたを開けるとそこに息を飲むほどの美少女の顔があった。

キラキラの青い瞳で僕を見ている。

その美少女はとても背が高く、驚くほどグラマラスだ。彼女はその豊かすぎる肉体を粗末な下着で包んでいる。

この世界で手に入れられる下着はこんなものだ。ただ彼女が着るとどんな服よりも豪華にみえるのも不思議だ。

僕の頬に軽くキスするとこれで目が覚めた?と訊く。

僕は頷いて答える。

僕は服を着て、皆が待つ大広間に向かう。

麗華も手際よく着替え、いつもの上半身だけの皮鎧を身につける。


すでに大広間には瑞白さん、アルファルドさん、イザール、アヴィオール、ミラが丸テーブルを囲み座っていた。

僕たちを見つけたアルファルドさんがおはようございますとあいさつする。


アルファルドさんが僕たちのためにトーストと牛乳たっぷりのコーヒーを入れてくれた。アルファルドさんが言うにはコーヒーは南の大陸から輸入しているのだという。

ケイの街が解放されたことにより物資は今までよりも容易に王都に届けられることができるだろう。少しではあるが息を吹き返すといったところでしょうと瑞白さんはかたる。


僕たちはアルファルドさんが用意した簡単な朝食を食べた。簡単ではあったがそのミルクコーヒーはかなりの美味だ。

麗華も甘くて美味しいわと気にいっている。


「さて、これからどうする?」

両手を頭の後ろで組み、イザールが言う。


「そうだね、一度王都キャメロンに戻ろうと思う。リオネル王女にケイの街の解放を報告しないとね」

僕は皆に言う。

街の郊外、あの坑道近くで停めていた馬車とオリオンはケイの街の人が僕たちが宿としたこの建物の近くまで移動させてくれていた。

「そうですな。街の復興はダイダロス殿たちにまかせて一度王宮に戻りましょう。次にどの都市を解放するか決めなくてはいけませんからな」

瑞白さんが顎を撫でながら言う。

この剣豪はもうすでに次の勝利についてかんがえている。まったくもって頼もしい限りだ。

「じゃあこいつを持って帰ろう」

イザールが取り出したのは漆黒の腕輪であった。魔女の腕輪といい、ローレライが身につけていたものだ。勝利の証として、これを持ち帰ることになった。


いまだ傷の癒えない真田雪はケイの街で療養をとることになった。出発間際に意識を取り戻した彼女は僕たちに助けてくれてありがとうと礼を言った。他の四人、すなわち結城涼、羽柴マリア、石川咲夜、渡辺蓮の行方はわからないとのことだった。

渡辺蓮なんかはいけすかないやつだけどさすがに死んで欲しくはない。できればどこかで無事でいるのをいのるばかりだ。



僕は麗華の駆るオリオンの背にのり、イザール、アヴィオール、ミラ、アルファルドさんは瑞白さんの操る馬車に乗った。

「私ならひとっ飛びなんだけどね。でもたまには馬車もいいね」

外の景色を眺めながら、アヴィオールが言う。

行きよりも帰りの方が仲間が増えた。アヴィオールはこらからの旅にも同行すると言った。アルタイルの頼れる仲間だ。


ヨークの村に立ち寄り、一泊する。

ケイの街を解放した僕たちを村の人々は宴を開いてもてなしてくれた。

イザールが得意のランピーをかき鳴らし、麗華が歌う。麗華はあずきちゃんが憑依してから歌が好きになったという。

アヴィオールが僕の手をとり、躍りだしたのでまた麗華がむっとする。僕の手をアヴィオールからとると僕の体をぶんぶんと振り回し、踊ったのですっかり疲れてしまった。


翌日、朝一で出発し、昼過ぎには王都に到着した。ここで一度ミラは別れる。弟たちに会って無事の帰還を伝えるのだという。ミラは幼い弟たちのために衛兵になったのだという。素直に偉いなと思う。


王都に着くとルイザさんとハンナさんが出迎えてくれた。

「英雄たちのご帰還だよ」

ルイザさんなんかは僕に抱きつき、その巨乳を僕の顔に押しつける。むにむにとして柔らかい。麗華のおっぱいとはまた違う。甲乙つけがたい。でも、すぐに麗華に引き離された。

あのノートをハンナさんに返そうとしたがこれからの旅に役立てて欲しいということで、そのノートを譲り受けた。


「博物学者」の称号を獲得しました。

視界に文字が並ぶ。



王宮に戻ると王女をはじめ、エウリュアレや文官、武官、使用人のみんなが僕たちを出迎えた。

皆、よくやったやありがとうなど声をかけてくれる。


僕たちは最初に王女と出会った部屋に案内された。

僕はそこで魔女王ローレライを倒し、交易の街ケイを奪還したことを報告する。

手に乗せた魔女の腕輪を見せる。

「ありがとうございます。あなた様こそ真の救国の騎士だったのですね」

そう言い、リオネルは涙をエウリュアレが差し出したハンカチでぬぐう。

一度は死を覚悟するまで絶望した王女に生きる希望を与えることができたかと想うと僕も嬉しい。


リオネル王女は儀礼用の剣を手に持つ。

僕は彼女の前に膝をつく。

リオネル王女はその剣を僕の右肩にあてる。次ぎに左肩にあてる。

「七柱の女神と星霊の御名においてそなたを星騎士スターナイトに任ずる」

と厳かにリオネル王女は言った。

視界にも「星騎士」の称号を得ましたとの文字が浮かぶ。


エウリュアレの説明では星騎士の称号は準王族に相当するとのことだった。

星騎士には麗華も任命された。

「謹んでお受け致します」

そう言う麗華の姿はまるで映画のワンシーンのようだ。

また僕は王都の一角に屋敷を与えられた。

こらからの活動拠点はその屋敷になるだろう。

アルファルドさんは王女リオネルの許しを得て、僕の屋敷でメイドとして働くことになった。


瑞白さんはリオネル王女の願いで王国軍の再建と再編の役を担うことになった。

アヴァロン王国元帥の地位に着いた。

「また別の都市を奪還する際は必ずやまた燐太郎殿らと馬首をならべとうござる」

快活な笑みを瑞白さんは浮かべた。


残る都市は職人の都市ガヴェイン、湖の都市ランスロット、歓楽の都市モードレッド、商人の都市パーシバル、妖精の都市トリスタン、竜の都市ガラハットの六つだ。




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