第30話魔法少女あずき

魔法少女マジカルプリンセスあずき。

それは僕が妄想の中で考えだしたオリジナルのキャラクターの一人。

趣味で描いていたあのあずきちゃんの衣装を麗華が着ていた。


僕の考えた設定では緒方あずきは夕暮れの音楽室でソング王国の歌姫音符と出会い、彼女の祖国がノイズ帝国の侵略にあい、危機に瀕している音符姫の祖国を救うべくあずきは魔法少女となって戦うのだ。

あずきちゃんはアイドルを夢見る小学五年生。音符姫の能力で魔法少女マジカルプリンセスに変身する。白いフリルのかわいいミニスカートに白いベレー帽を頭に乗せて、手には白い指揮棒を持っている。

目の前の麗華がまったく同じ衣装を着ている。


しかし、決定的な違いはそのスタイルだ。

小学五年生のあずきちゃんはまだまだ成長途中の未発達。あどけないかわいらしさが特徴だ。隣家の音大生初絆ショパンお兄さんにいつも子供扱いされているのが悩みだ。

ちなみにあずきちゃんの憧れのお兄さん初絆ショパンはあずきの姉の空とつきあっている。

あずきの衣装を無理矢理身長190センチメートルでJカップの麗華が着ているのだ。それはかなりの無理があった。

のびきった服はぴったりと麗華にはりついていてそのスタイルが丸わかりだ。うわっ、これが乳袋なのか。Jカップのロケットおっぱいの姿がはっきりくっきりとわかる。それどころか先端部分の形まで。

ミニスカートはその幅はギリギリでちょっと動いただけで白いパンツのボリュームたっぷりのお尻が見える。

ううっ総合するとものすごくエロい‼️

おっとそのエロさに感動している場合ではない。

僕は魔法少女となった麗華の素質ステータスを読みとる。


魔法少女マジカルプリンセスあずき。

レベル182。

なんということだ。麗華のすべての能力が大幅に上昇している。特筆すべきはほぼゼロに近かった魔力があのローレライすらも上回っている。

固有特技ユニークスキル、聖歌、魔法攻撃無効、身体能力向上、呪解、自動回復とある。


「なにこれ、ものすごく変な姿だけど力がみなぎるわ」

麗華が自分の姿を見ながら言う。

そう言う度に揺れるおっぱいに僕の視線を釘付けだ。


「麗華、歌って‼️今の君ならあのローレライの歌をかきけせるよ‼️」

僕は麗華に言った。

「わかったわ、燐太郎。君を信じる。それに私の中にこのの記憶が流れこんでくるの。この娘は君の大事な想いなのね」

麗華は微笑し、タクトを握る。

オーケストラの指揮者のように華麗に振るう。

オークの一匹が邪魔しようとするが瑞白さんが一刀両断した。


「面白そうじゃない。私も混ぜてもらうわよ」

イザールはランピーを手にそう言う。

「あなたの歌に適当に合わせるから、まかせてよ」

と付け足す。



麗華は歌う。その歌声は耳に心地よく、脳を揺さぶられる。麗華は歌もうまいのか。勉強や運動だけでなく歌の才能まであるなんて。

麗華がタクトを振るうたびに目を充血させていた魔物たちが目に見えてその狂暴さが顔をから消えていくのがわかる。


愛を忘れたかわいそうなノイズたち。

君たちに歌いましょう。

私たちはいつかきっと友だちになれる。

希望を捨てないで。

夢を諦めないで。

心に勇気を芽生えさせましょう。

何も生まない戦いはむなしく、悲しい。

だから歌おう。

生きてるみんなのために。


その歌詞は僕が考えたものだ。

あずきちゃんのテーマ曲だ。

麗華の歌声にイザールがぴったりのアレンジで即興の曲をあてていく。

麗華の歌声の力はすさまじく、魔物たちは完全に戦う気力を失い、麗華の歌に聞きいっている。

ローレライがそれに対抗すべく歌うが、すべて麗華の声にかき消される。

あずきちゃんとなった麗華の魔力が完全にローレライを上回り、彼女の能力を無効化しているのだ。そればかりでなくローレライの配下に対する影響力も消し去っている。


「そうだ、あの娘を人質にするのだ」

まだなおローレライは彼女の支配下にある数少ない部下の魔物に命ずる。

真田雪がはりつけられていた十字架を指差す。しかし、そこには誰もいない。

あれはどういうこだ。



「敵が次の手段を思いついたときにはすでにその対抗策をこうじておく。それが我ら星影というもの」

背後でささやく声がする。

それはどうやら僕だけに聞こえるようだ。

背後にはなんとアルファルドさんが傷だらけで意識を失っている雪をだきかかえて立っていた。

消えたと思っていたアルファルドさんは、敵の隙をつき、真田雪を救出してくれていたのだ。

「ミラ、この人に治癒魔法を」

僕はミラに言う。


「は、はいっ」

ミラは答えると真田雪に治癒の光をあてる。

「すごく傷ついている。でも命には別状ないわ」

ミラは言い、彼女の信仰する大地母神ベラに祈りを捧げる。

彼女の言葉では自分の力では応急措置で手一杯ということだった。

今はそれで十分だ。



ローレライの支配は無効化されました。一時的にローレライの魔力はゼロとなります。

視界に文字が浮かぶ。

確かにローレライのステータスを読むとすべての能力がゼロに近い。

彼女は麗華の歌で完全に力を失っている。

今ならローレライを葬ることは容易い。


「さあ、お帰りなさい。ここはあなたたちのいる場所ではないわ」

声高らかに麗華が言い、タクトを力強くふると魔物たちはそれぞれの武器を捨て、何処かに消えていく。


「待ちなさい‼️待って‼️戻って私を守りなさい‼️」

ローレライが叫ぶが誰も聞く耳を持たない。

魔物や怪物たちは振り向くことなく街を去っていく。

残されたのは魔女王ローレライただ一人。


僕は彼女に近づき、目の前に立つ。

「燐さん、これを使いなよ」

イザールが僕に愛用の短剣を持たせた。

僕はその短剣を振り上げ、ローレライの心臓めがけて振り下ろす。

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