第28話ローレライとの対決
十字架にはりつけられた真田雪は文字通り傷だらけの姿であった。
全身に火傷や切り傷、青アザがあり、それは恐らく激しい拷問を受けたあとだと思われる。しかも一糸まとわぬ姿にされ、木製の十字架にはりつけにされている。
胸のわずかな膨らみが微かに動いているのでまだギリギリではあるが、生きているものと思われる。
アヴィオールが言っていた儀式の生け贄が今夜は真田雪だったということか。
黒いローブの男はしわくちゃの手に短剣を持ち、その切っ先を真田雪の小さな乳房に突きつける。
オークの一匹が盃を持ち乳房の下に押しつける。
まさか……。
「この者の血をローレライ陛下に捧げます」
ローブの男がそう言うと短剣を一気に真横に引く。短剣によって傷つけられた乳房から鮮血が溢れる。
豚面のオークはその吹き上げる鮮血を盃で受ける。ドクドクと血が盃にたまる。
「キャアアアッ‼️」
ぐったりしていた真田雪が悲痛極まる声をあげる。
必死にもがき十字架から抜け出そうとするが両手足を釘でうちつけられているため、動く度に激痛が走るようだ。さらなる苦悶の悲鳴をあげる。
それを見ていた周囲の数百匹の魔物や怪物たちが歓声をあげる。明らかに彼らは真田雪の血を見て、興奮している。
その光景を見た僕は全身の血が沸騰するのを覚えた。もう抵抗できない彼女に対して彼らは自らの欲望のためだけに傷つけ、辱しめを与えようとしている。
まったくもって許すことはできない。
僕は産まれて初めて本当の怒りというのを覚えた。頭がくらくらするような熱が僕を支配する。
「やめろ‼️」
気がつけば僕は叫んでいた。そう言わざる終えなかった。
作戦のことを考えるとこんなことをしてはいけない。ローレライの隙をつき、彼女を抹殺することがもっとも効率的なやり方なはずだ。けど、僕は目の前で傷つけられている真田雪のことを放っておけなかった。
瑞白さんは将の将といってくれたけど実際はそんな器じゃない。僕は目の前でひどいことが行なわれていて、自分たちの目的のためにそれを見捨てることができない甘ちゃんなのだ。戦争には犠牲という死者が必要だというのに。
麗華はそんな僕の肩を抱きしめた。温かく、柔らかな乳房が僕の頬にあたる。
「よく言ったよ。やっぱり私の燐太郎だ」
そう言うと麗華は四階建ての建物の屋上から飛び降りてしまった。
「燐太郎どの、見事でござる。後は我らにお任せを」
ふっと僕に笑いかけると瑞白さんは麗華に続き、建物から飛び降りた。
「燐太郎さま、それでよいのですよ。わたくしはそのようなあなた様についていきたいと思います」
アルファルドさんもにこやかな笑みを浮かべると麗華と瑞白さんの後につづく。
ああっ、僕のあさはかな行動により皆を死地においこむ結果になろうとしている。
「皆さん、私にしっかりつかまって下さい」
アヴィオールが言うと彼女の背中に瞬時に
僕は彼女の体にしがみつく。あのトランジスタグラマーのおっぱいが顔にあたっている。でも今はそんなおっぱいの柔らかさを楽しんでいる暇はない。
ミラとイザールもアヴィオールにしがみつく。
アヴィオールは僕たちと共に建物から飛び降りる。何度か羽ばたき、僕たちはふわりと着地する。
すでに無数の悪鬼妖魔、悪魔や魔物が僕たちを包囲している。
血の盃を受け取ったローレライはそれを一気に飲み干すと広場に響き渡るほどの声で高笑いした。
「ハハハハッ‼️また犯され殺されるために来たか人間どもよ」
ローレライはその赤い唇をさらに血で深紅に染め、そう言う。
「こうなればやるまでだ‼️燐太郎、ここであの魔女を討とう」
麗華が言う。
そうだ。目的たる人物は目の前にいる。
こうなったらあの魔女を討ち、この交易の都市ケイを解放しよう。
僕たちは決意し、僕を中心に円陣を組んだ。
あのローレライを倒し、真田雪を助けだし、街を解放する。
多勢に無勢ではあるが僕には頼れる仲間たちがいる。やってやるまでだ。
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