第20話ステンノーの助言
具体的な作戦などは明日決めるとして、この日はもう遅いので僕たちは休むことにした。
麗華とイザールはすぐに寝息をたてた。
強行軍で王都に戻り、なおかつショックすぎる情報のため肉体的にも精神的にも僕たちは疲労困ぱいだった。
アルファルドさんが用意してくれた野菜スープをいただき、僕たちは用意されたベッドで休む。できればあの小屋の一夜のように麗華と添い寝したかったが、今はそんなわがままを言っているときではない。
夜中にトイレに行きたくなった僕は一人起き上がり、用をたしにむかう。
トイレで用をすませて、手を洗う。
トイレを出ると僕は背後に人の気配を感じた。
振り向くとそこに亜麻色の毛をしたステンノーが立っていた。
「やあ、こんばんは。一人になるのを待っていたよ」
魔女ステンノーは言う。
「やあ、でなんの用なのさ」
僕は聞く。
こんな夜中になんなのだろうか。
「それにしてもかなり危機的状況だね」
手を後ろに組み、ステンノーは上目遣いで僕を見る。なかなかにかわいい仕草だが、感心している場合ではない。
「ああ、そうだよ。もう手詰まりさ」
僕はステンノーに正直に言った。
彼女にかっこつけても仕方がない。
「ふむふむ、正直でよろしい。では攻略の手引きをしようと思ってね」
うふふっとステンノーは微笑む。
攻略の手引きだって……。
それは魔王軍相手に勝利をおさめる方法があるというのか。
「そうだよ。魔王軍はね文字通り魔王に率いられている軍なのさ。七人の魔王がそれぞれ軍を率いて七つの都市を占領している。魔王軍は正式には魔王連合軍と言った方がいい。彼らはお互い自尊心が強いため、連携するということはない。だから一つの街を攻略しているときに別の魔王が援軍にくることはまずない。で、ここからが本題なんだけどいいかな?」
ううんっとステンノーは咳払いする。
僕は固唾を飲み、その次の言葉を待つ。
「魔王軍の兵士たちは魔王の魔力によって統率されている。すなわちその魔王一人を倒せば街を占領している魔族や妖魔たちは霧散していくというわけさ」
ステンノーはウインクする。
ステンノーの言葉を信じるならケイの街を占領している魔王軍を統率している魔王ただ一人を倒せば、やつらはどこぞへと消えていくというわけか。
なら、そこに勝機はあるのかもしれない。
僕たち四人で魔王軍全てを相手にしなくてもいいのだ。
その魔王とやらただ一人を倒せばいいのだ。
けどその魔王一人の強さ自体も未知数には違いない。
それでもほんのわずかだが、勝機が見えてきたことは喜ばしい。
あとはその魔王とやらを一人だけの状態にどのようにしてもちこむかだ。
これは朝になったら麗華たちに相談しよう。
「そうか、ありがとうステンノー。どうやら少しだけど希望が見えてきたよ」
僕はステンノーの手を取り、言う。
「いいってことさ。うちは君自身といってもいい存在なんだから。でもルート的にはかなり厳しいほうを君は選んでいるんだよ。
ステンノーは言った。
「えっそんなのがあったの」
僕は言う。
分岐ルートなんてまるでゲームみたいじゃないか。
「君が訓練場を去らずに彼らに協力していれば七人の星たちはあせってケイの攻略には向かわなかった」
ステンノーは言う。
でも、あの場では僕は本当に役ただずに思えた。彼らこそが国を救うにたる英雄だと思えた。彼らにはその実力も才覚もあると思えた。それに完璧な彼らの中に僕が入る余地などはまったくないように思えた。
「うんうん、それは違うよ。君はこの
一人そう言うとステンノーは僕の影に消えて行った。
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