第16話 ヨーク村の旅芸人

 なんだか息苦しいので僕は目をさました。

 あれっなんだかとんでもなく柔らかいものが僕の顔をふさいでいる。

 なんだろうこれは。

 僕は確かめるために手でさわってみる。 

 おおっこれはすごい。

 指がずぶずぶとしずんでいく。

 それになんだこの弾力は。柔らかいのに張りがありずっしりと重いものが僕の顔を包んでいる。

 僕がそのふわふわのものを揉んでいると小さな声がする。

「うんっあんっうふんっ……」

 それは女の子のあえぎ声だった。

 僕がその巨大マシュマロを夢中で揉んでいるリズムにあわせてその声が聞こえてくる。

 あれっ、この声聞き覚えがあるぞ。

「あんっちょっと駄目よ。気持ちいい……」

 それはあの麗華の声だった。


「はあっ!!」

 やばい。僕はねぼけて麗華の超巨乳Jカップをもみしだいていた。

「ご、ごめん」

 慌てて僕はあやまり、手を離す。

 僕の手のひらにはあの極上の肌触りがまだ残っている。


 麗華は目を擦りながら、起き上がる。

「ああ、おはよう。燐太郎……」

 麗華はみだれた服を整えながら、言った。

「なんだか、体がほてっちゃって気持ちいいんだけど。どうしてだろう」

 麗華は訊く。

「さ、さあ……」

 僕はとぼける。

 どうやら麗華も寝ぼけていて気づいていないようだ。

 ちょっとほっとした。

「まあ、いいわ。それじゃあまた旅の支度をしましょうか」

 と麗華は言った。



 また干し肉と黒パンという食事をし、僕たちは出発の準備をする。

 ランタンの火を消し、リュックにいれる。

 オリオンに股がり、僕たちは一路、ヨーク村を目指した。

 街道を南下し、太陽が真上に来る頃には目的地であるヨーク村に到着した。

 たまたま歩いていたおばさんに声をかける。

「僕たちはハンナさんの依頼でゴブリン討伐に来たものです」

 そう言い、あのボスゴブリンのネックレスを見せる。


「あらあら。あのハンナさんの依頼できなさったんですね」

 ハンナの名前を聞いて、そのおばさんは笑顔を浮かべた。

 どうやらハンナの使いというのが彼女の警戒心をといたようだ。

「しかももうゴブリンのグループを一つやっつけてくれたんですね。あいつらには本当に困っていたんですよね」

 おばさんは言う。

 彼女は村長のところまで案内してくれるという。

 僕たちはオリオンを降り、そのおばさんに案内され村長の家に向かう。


 その家はまわりのものよりも少しだけ大きな家だった。

 どうやら村長の家といっても特にほかとの差はないようだ。

 村長の使用人にオリオンをあずけ、僕たちは村長の部屋に入った。

 そこには白髪のおじいさんと若い女性がいた。

「イザールさんの言う通り、騎士さまがこられましたな」

 村長は言った。

「あなたがたがハンナさんの依頼でゴブリンを退治しにきてくださったのですな」

 村長が言う。

「はい、そうです。道すがらゴブリンの集団を一つ壊滅させました」

 僕は村長に言い、またあのゴブリンの首かざりを見せた。


「やっぱりね。この人たちのことだよ。前にこの村をとおったあいつらじゃないな、星見のばあさんが言ったのは」

 今度は若いほうの女性が言った。

 よく見るとかなりセクシーな姿をしている。

 白い布で胸と腰だけをかくしている。水着のビキニみたいに器用に大事なところだけかくしていた。

 なかなか形のいい胸と谷間をしているな。それに腰だけほそくて、おしりはぷりんとしている。どこかアスリートを連想させた。褐色の肌が健康的だ。


 よし、ちょっと見てみるか。


 踊り子イザール、レベル32。

 戦闘力は低いが魔力と素早さがけっこうある。

 B86、W52、H88。

 うふっけっこういい体をしているな。出るところはでていて引っ込むところは引っ込んでいる。麗華のようなロケットおっぱいもいいがイザールのようなバランスのとれた肢体もいいなあ。

 僕がイザールの素質ステータスを読みとって悦にひたっていると右耳に強烈な痛みを覚えた。

「いてててっ……」

 思わず悲鳴にちかい声がでる。

 麗華が氷のような冷たい顔で僕の耳たぶをひっぱっていた。

「なに鼻のしたのばしきっているのよ」

 その声も氷河のように冷たい。


「どうやら本妻のほうはなんだか機嫌が悪いみたいだね」

 イザールがそんな僕たちを見て、言った。


「やだ、本妻だなんて」

 両手で頬を押さえて麗華は急に照れだした。

 おかげで僕は解放された。まだ耳がじんじんするや。さわってみるとけっこう熱くなっていた。


「あらためて自己紹介させてもらうよ。私は旅芸人一座の一人でイザール。踊り子をしているよ。星見の婆さんの占いであんたらに会いにきたんだ。こいつを渡しにね」

 イザールが僕に手のひらを見せる。

 そこには金のメダルが置かれていた。

 そのデザインは牡牛座タウラスであった。

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