第15話 最後の魔女ステンノー

 暗闇の中でその女性はステンノーと名乗った。

 僕はオーディンの義眼をかけなおし、彼女を見る。


 魔女ステンノー

 レベル72

 B82、W52、H76。

 ステータスはあのエウリュアレとまったく同じだ。


「それはそうよ、うちとメドゥーサ、エウリュアレは三つ子だからね」

 そう言い、くるくると指で亜麻色の髪をまきつける。

 違うのは髪の毛の色ぐらいというわけか。


「な、なんのようなんだい」

 僕は訊く。

 こんな夜中にいったいなんのようなのだろうか。

 どうやら敵でないのはたしかだが。


「そうだね。うちの役目はまあ、旅のサポートかな。エウリュアレは王都キャメロンからうごきにくいからね」

 うふふっとステンノーは言う。


「旅のサポート?」

 僕は訊く。


「そう。君のこの世界での手助けがうちの仕事。でも直接戦闘なんかはできないけどね」

 とステンノーは語る。


「で、具体的には」

 僕はさらに尋ねた。

 サポートっていうぐらいだからきっと助けてくれるのはたしかだろう。


「まずはこの異世界での目標かな。まず一つは魔王軍に占領された七つの都市を解放すること。まあ、これはマストだわね。二つ目は称号を72個獲得すること。もういくつかついているわね。最後の三つ目は黄道十三星座のメダルをすべて集める。この三つの条件をクリアすれば君はもとの世界に戻れるのよ。まあ、戻るか戻らないかは君の自由だけどね」

 ステンノーは言い、僕の手のひらに金色のメダルを握らせる。

 そのメダルは五百円玉ぐらいの大きさで羊が描かれている。

「それは牡羊座アリエスのメダル。手始めにログインボーナスとしてこれをプレゼントするわ。あとの十二個はこの王国のどこかにあるから自分で集めてね」

 うふっとまた笑い、ウインクする。

 あらっその顔はちょっとかわいい。


 クリア条件か。

 なんだかゲームっぽいな。

 しかし、クリア条件厳しすぎないか。

 称号が七十二個もあるのか。これはかなりの仕事だな。

 今のところ「地図職人」「監視人」「ゴブリンスレイヤー」の三つか。残り69か……。まだまだ果てしないな。

 それにメダル集めか。こんなのどこに落ちているっていうのだろうか。手がかりもなく探すのは骨が折れるな。

 そして七つの都市の解放。

 これが一番の問題だ。

 現在、あの七人の星たちセブンスターズが交易の街ケイを攻略中であるがそれがうまくいってくれればいいのだが。


 ただやはり旅には目的が必要だとおもうのでなんかしらの指標にはなるだろう。


「それとこれが最大にして最高の目的なんだけど。君の横で眠っている鷹峰麗華の心を手にいれること。しかし、なんか変なんだよね。この世界せかいは君の世界ものがたりであるのでここの登場人物キャラクターは基本的には君に好意をもつようになっているんだ。君もすでにいくつか体験しているだろう」

 ステンノーはじっと僕の目を見ていう。

 そう言えば、あのそばかすの衛兵やルイザさんは優しかったな。

「そうそれは主人公補正で君には魅了の特技スキルがじつは備わっているんだ。で、鷹峰麗華にもその特技がきくはずだとおもったけどその魔力はかきけされたんだ。導きだされる答えは二つ。魔力を弾きかえすぐらい強靭な精神力で防いでいるかすでに君に好意をもっているか」

 ステンノーは難しい顔でいう。

 僕の目の前でピースをする。それはきっと二を意味しているんだろう。

 たしかに鷹峰麗華は強靭な精神力をそなえてそうだ。でも、もう一つの理由なら……。

 いや、でも鷹峰麗華がどうして僕にもとから好意をもっているというのだ。


「でもどうして……」

 僕はステンノーに訊いた。できれば後者の理由であってほしいけど確証をもつことはできない。


「それはわからないの。うちたちは君のリビドーの化身、すなわち君の知っている以上の鷹峰麗華にたいしての知識や情報は知り得ることはできない」

 首を左右にふり、ステンノーは言う。


 ステンノーにもわからないのか。知るよしもないということか。


「まあ、冒険の目的はきまったんでそれを目指してちょうだいな。私はこれから君の影に隠れて行動するからよろしくね」

 ステンノーはそう言い、闇の中に消えていった。


 冒険の目的か。僕にそれがはたせるだろうか。

 三つの難関な試練だ。

 ただ、目的ができたのでこれからの指標にはなりえるかな。

 そうこうしているうちにまた眠気がおそってきて、また僕は眠りについた。

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